東芝の田中久雄社長は「エネルギー」「ストレージ」「ヘルスケア」を3本の柱に位置づけているが、実際には、ストレージ事業を含む電子デバイス部門が営業利益の半分以上を稼ぎ出す計算だ。
では、テレビ事業や白物家電事業、PC事業を含むライフスタイル部門の業績はどうだったのか。
2013年度連結業績によると、ライフスタイル部門の売上高は前年比3%増の1兆3,138億円、営業損益は前年に比べて87億円悪化し、510億円の赤字(損失)となった。
久保代表執行役副社長は「ライフスタイル部門では上期から下期にかけて、各事業ともに大幅に損益が改善したが赤字からの脱却はならなかった。目標としていた下期の黒字化も達成できなかった」とする。
上期は367億円の赤字。下期も143億円の赤字が残った。また、第3四半期で黒字化したテレビ事業は通期では赤字。パソコン事業も通期で赤字になった。
テレビの売上高は前年比11.0%減の2,318億円。赤字幅については明らかにしていないが、赤字の要因は欧州全体のテレビ事業見直しのなかで、欧州での在庫処理費用が発生したこと。また、パソコン事業の売上高は4.1%増の7,339億円。赤字の要因として、構造改革の一環として進めている在庫処理費用の計上や、部材価格の高騰、円安などが影響したことを挙げた。だが、パソコンの単価値上げ、BtoCからBtoBへのシフトなどにも取り組んできた成果もあり、第4四半期には第3四半期の赤字をほぼ半減できたという。
一方で、家庭電器は19.4%増の2,534億円。第4四半期には第3四半期を上回る利益を計上し、下期の商品強化や、円安対策が黒字の継続につながったという。
ライフスタイル部門は構造改革の真っ直中にある。今回の決算では、その成果が表面化したとは言い難い。
同社では2013年度中に、テレビ事業およびパソコン事業に関わる社員の約20%にあたる約400人を、社会インフラ事業などに配置転換。2013年度に約100億円、2014年度は約200億円の固定費削減を図る一方で、テレビ事業では、アジアや中近東、アフリカなどの成長率が高い新興国市場への注力を図りながらも、不採算国での販売を休止。中国・大連にある生産拠点の終息、欧州・ポーランドにある製造拠点の閉鎖により、海外の製造拠点を3カ所から1カ所に集約した。また、グローバル生産委託比率を現在の40%台から70%に引き上げ、固定費削減と生産効率向上を図る方針を打ち出している。
同時に、テレビと白物家電事業を統合した東芝ライフスタイルを設立。分社化した体制のなかで、テレビと白物家電事業を一体運営。経営資源の共通化によるメリットや、コスト最適化などを背景にした競争力の強化、映像機器と家電製品とを連動した形で、注力する地域に対した戦略の一本化といった効果を目指している。
リスクが織り込まれていないライフスタイル部門の2014年度計画
だが、ライフスタイル部門の業績回復は、まだ予断を許さない。
2014年度の連結業績見通しでは、ライフスタイル部門は売上高が前年比0.3%減の1兆3,100億円、営業利益は540億円増の30億円と黒字転換を計画しており、構造改革の成果による利益の回復が見込まれている。また、ライフスタイルのうちテレビの売上高は12.2%増の2,600億円、パソコンは3.3%減の7,100億円、家庭電器は2.6%増の2,600億円としており、Windows XPサポート終了後の反動があるパソコン事業以外は増収の計画だ。
久保代表執行役副社長は次のように本音を漏らす。「電力・社会インフラの2014年度計画は、かなりのリスクを折り込んでいる。また、電子デバイスに関しても、韓国ウォンに対する為替リスク、電力料金の動向などを勘案し、メモリの営業利益率を前年度の26%から5%ほど落とすといった価格リスクを折り込んでいる。だが、ライフスタイルには、まったくリスクは折り込んでいない」
つまり、少しでもマイナスとなる外的要因があれば、ライフスタイル部門の黒字化は達成が難しいともいえるのだ。
「ライフスタイル部門の黒字化には時間が掛かっている。だが、着実に改善しているのも事実だ。2014年度には、なんとかライフスタイル部門を黒字化したい」と意気込む。
リスクを折り込まない黒字化計画を打ち出したことは、社内外に強い意思をもって黒字化に取り組む姿勢を示すことの表れともいえる。だが、その道筋は、もうしばらくは険しい道であることに間違いはない。2014年度のライフスタイル部門の舵取りは、荒波のなかでのコントロールを要求されることになる。
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