ASUSTeK Computerは28日、Intelの次期チップセット「Intel 9シリーズ」を搭載したマザーボードを先行公開した。汎用性に優れた「スタンダード」シリーズ11製品、ゲーミングブランド「R.O.G.(Republic of Gamers)」シリーズ3製品、高い耐久性を備えた「TUF」シリーズ2製品をラインナップする。発売時期や価格は未定だという。
スタンダードシリーズ
ASUS製マザーボードの定番であるスタンダードシリーズからは、Intel Z97搭載モデル6製品、Intel H97搭載モデル5製品を日本国内向けにラインナップする。公開されたモデルは以下の通り。
製品名 | チップセット | フォームファクタ |
---|---|---|
Z97-DELUXE(NFC & WLC) | Intel Z97 | ATX |
Z97-DELUXE | Intel Z97 | ATX |
Z97-PRO | Intel Z97 | ATX |
Z97-K | Intel Z97 | ATX |
Z97M-PLUS | Intel Z97 | マイクロATX |
Z97I-PLUS | Intel Z97 | Mini-ITX |
H97-PRO | Intel H97 | ATX |
H97-PLUS | Intel H97 | ATX |
H97M-PLUS | Intel H97 | マイクロATX |
H97M-E | Intel H97 | マイクロATX |
H97I-PLUS | Intel H97 | Mini-ITX |
Intel 8シリーズでは、型番の末尾に「A」「C」「E」「G」「K」が付いたエントリグレードの製品が幅広くラインナップされていたが、Intel 9シリーズでは「Z97-K」「H97M-E」の2製品と控えめになっている。もっともこれは国内向けのラインナップで、海外ではこれ以外のモデルも展開されるようだ。
スタンダードシリーズではデザインを変更。黒とゴールドを基調としたカラーは従来モデルと同様だが、よりゴールド部分の質感が上がったことに加えて、ヒートシンク周りのデザインも変更されている。
また、スタンダードシリーズ全モデルでインタフェースにM.2のほか、「PRO」以上の上位グレードにSATA Expressを搭載する。しかし、M.2もSATA Expressもポートがあっても対応製品が非常に限られている。そのため、ASUSではSATA Express対応のSSD/HDDケースの販売も検討している。
さて、スタンダードシリーズではハード面だけでなく、ソフト面でも大きく進化。UEFI BIOSのデザインを一新。特に簡易メニューのEzモードで表示項目の配置を変更してすることで画面が見やすくなったほか、搭載された機能へアクセスしやすくなっている。
機能面では「ファンコントロール」機能が強化。ASUSが提供するファン制御ユーティリティ「FanExpert」をUEFI BIOSに取り込んだ形となっている。マザーボードに接続されているファンの最大・最低回転数を検出し、自動で回転数を調節する。もちろんユーザー側で動作を指定することもできる。
「FanExpert」はWindows向けのユーティリティなので、Linuxなどでは使えなかったが、「ファンコントロール」機能はUEFI BIOS側の機能なのでWindowsに限らず利用できる。
ユーティリティの「FanExpert」も機能を強化し、「FanExpert3」として引き続き検討する。基本的な機能は「ファンコントロール」と同じだが、VRMやPCHなどマザーボード上に配置された温度センサーから、どの温度センサーの情報を参照するか選択できる。さらにCPUファンをより低回転で駆動させる「Extreme Quiet」モードが追加された。
Ezモード上でオーバークロックとRAIDの設定も可能となった。それぞれメニューの質問に答えることでオーバークロックとRAIDが設定できる。例えばオーバークロックの場合、用途やCPUファンの種類を選択するとそれに対応したオーバークロック設定が行える。
また、X.M.PとIntel Rapid Storage Technologyの設定変更もEzモードから行える。X.M.Pに関しては適応するとメモリに加えて、CPUも自動でオーバークロックされてしまっていたのだが、新UEFI BIOSからはCPUもオーバークロックするかどうかのダイアログが表示され、X.M.Pを適用してもCPUはオーバークロックされなくなった。
サウンド面ではゲーミングシリーズR.O.G.で採用されていたデジタルアナログの分離基板、左右チャンネルのレイヤー分離といった工夫がスタンダードシリーズにも投入された。
このほか、Ezモードでの日付変更に対応したほか、任意のアプリに対してオーバークロックやオーディオプロファイルの設定が可能な「Turbo App」、アプリケーションごとのLANの優先度を設定できる「Turbo LAN」といった機能を備える。
ゲーミングマザーボード「R.O.G.」シリーズ
「R.O.G.」シリーズからは「MAXIMUS VII HERO」「MAXIMUS VII RANGER」「MAXIMUS VII GENE」の3モデルを公開。このうち「RANGER」はIntel 9シリーズから投入される製品で、ゲーマー向け製品の下位モデルとなる。「R.O.G.」シリーズも全製品にM.2を搭載している。
製品名 | チップセット | フォームファクタ |
---|---|---|
MAXIMUS VII HERO | Intel Z97 | ATX |
MAXIMUS VII RANGER | Intel Z97 | ATX |
MAXIMUS VII GENE | Intel Z97 | マイクロATX |
ASUS製品に詳しいユーザーの中には、製品名に「EXTREME」が付いたオーバークロッカー向けモデルがないことに気が付いた人もいるかもしれない。Intelの2014年4月14日付けCPU価格表では、倍率アンロック版モデル(開発コード名:Devil's Canyon)が含まれていなかった。恐らく「EXTREME」は「Devil's Canyon」と同じタイミングで出てくるものと思われる。
「R.O.G.」シリーズも新製品は機能強化が中心となる。まず、普通のキーボードもゲーミングキーボードに変えてしまう「KeyBot」と呼ばれる機能を搭載する。オリジナルのチップを搭載し、Fキーにマクロを設定できたり、アプリケーションやフォルダへのショートカットを設定できたりするようになる。また、F11キーに「OCモードでPC起動」、F12キーに「X.M.Pを適用してPCを起動」、DELキーに「UEFI BIOS起動」を割り当てすることができる。
「KeyBot」は、専用のUSBポートにキーボードを接続する必要があることや、UEFI BIOSからのon/offも可能で、ユーザーが持っているゲーミングキーボードと干渉しないような工夫もされている。
また、USBポートに安定した5V電圧を供給する「TrueVolt USB」や静電気やノイズ対策を施した「LANGuard」を搭載する。ユーザーがPCを持ち寄ってゲームをする「LANパーティ」が盛んな海外では、ケーブルの抜き差しが多いため、静電気によるLANポートの故障もその分多い。「LANGuard」のような機能が有効に働くものと思われる。
ネットワーク周りでは、従来モデルから引き続きIntel LANを採用する。ゲーミングマザーボードではQualcomm AtherosのKiller NICの採用例が多いが、他社製品に比べてIntel LANではCPU使用率が低いことに加えて、pingも低いという。スタンダードシリーズに搭載されている「Turbo LAN」の元となった「GameFirstIII」を搭載。任意のゲームに対してLANの優先度を設定できる。
サウンド面では従来モデルと同様にノイズ対策を行うほか、150Ωのヘッドホンまで対応するSonic Senceアンプ、用途別にオーディオのプリセットを変更できるSonic Stageを新たに搭載した。音を「見える化」するSonic RaderもバージョンがIIとなり、引き続き搭載する。
TUFシリーズ
「ミリタリーグレード」を謳う高耐久性が特徴の「TUF」シリーズからは、「SABERTOOTH Z97 MARK1」と「GRYPHON Z97」の2モデルを公開。どちらの製品にもSATA Expressを搭載する。
製品名 | チップセット | フォームファクタ |
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SABERTOOTH Z97 MARK1 | Intel Z97 | ATX |
GRYPHON Z97 | Intel Z97 | マイクロATX |
TUFシリーズには新機能として温度監視とファン制御を行う独自プロセッサ「TUF ICe」を新たに搭載。TUFシリーズに搭載されている温度監視ユーティリティの」Thermal Rader2」では、12個の温度センサーと9個のファン端子、そして新たにグラフィックスカードのファンの制御も可能になった。これらの制御に対するCPU負荷が大きいことから、負荷を軽減するために独自プロセッサの採用となった。
バックパネルのI/Oポート周辺の排熱を行う「Thermal Armor」に搭載されたファンにも新たに機能が追加された。ファンを逆回転させてほこりを外部に飛ばす「Dust de-Fan」を搭載。設定により逆回転させる時間や長さを設定できる。
高耐久性が特徴の「TUF」シリーズらしく、採用する部材もさらに高耐久となった。チョークコイルは外側をヒートシンク状に加工することで放熱性能が向上。これまでのチョークコイルと比較して9.35度低い温度で駆動する。また、日本製のチタンコンデンサや米国国防総省のMilitary Standard規格をクリアしたMOSFETを引き続き採用する。