計測機器大手Agilent Technologiesの日本法人であるアジレント・テクノロジーは4月4日、スペクトロスコピー製品として次世代型ハンドヘルドFTIR(フーリエ変換赤外分光光度法)「Agilent 4300ハンドヘルドFTIR」を先端材料、芸術品、歴史的遺物、地質学、農業、複合材料、コーティング、ポリマーなどの現場測定に向け提供すると発表した。

FTIR分析は、赤外線を用いて、フーリエ変換を用いることで、物質の同定や構造解析、定量測定などを行う技術。工業製品の遺物分析や高分子などの品質管理、科学捜査における物質の同定、食品の品質管理、医薬品製造時の品質管理、新規材料の研究などで活用されている。

FTIRの適用例

同製品は、分析室に持ち込みにくいような大きな材料などを現場で手軽かつ高精度に測定することを目的に開発されたもので、従来製品に比べ、35%の軽量化となる2.2kg(バッテリー2個収容時)を実現したほか、エルゴノミクスデザインの採用による製品バランスの改善を実現し、きつい姿勢や長時間持っているといった状態でも疲労を抑えることができるようになっている。

分析室でしかできなかった分析作業をフィールド上にて実現するのが同社のハンドヘルドメジャメント製品群であり、ハンドヘルドFTIRもその1つとなる

また同製品は、感度の25%向上もしくは2倍のスキャンスピード向上を実現する2種類の異なる検出器を有するシステムとして提供される。1つは、DTGS(重水素化硫酸トリグリシン)検出器を搭載したもので、幅広い材料分析に向いているとする。もう1つはMCT(水銀カドミウムテルル)検出器を搭載したもので、感度や高速測定を必要とする分析に向いているとする。

従来製品を使ったユーザーの不満点などを改善したのが「Agilent 4300」となる

「Agilent 4300」の特徴各種

さらに、交換可能な5つのインタフェースより、目的別に最適なものを選択することで、幅広い分析に対応することが可能(インタフェースとしては「ダイヤモンドATR」「拡散反射」「外部反射」「グレージングアングル」「ゲルマニウムATR」)。各インタフェースにはRFIDチップが搭載されており、同社のソフトウェア「MicroLab Mobile」と連携を図ることで簡単に操作を行うことができるようになっている。

5つのインタフェースにより、最適な測定を実現することができる

加えて、GPSの搭載により、サンプリング地点の記録が可能なほか、2個のバッテリー搭載により、バッテリーの交換時などでも電源を切ることなく連続して使用することが可能となっている 。

同社がターゲットとする市場は、主に「材料分野」、「エネルギー」、「食品分野」としており、将来的には農薬や堆肥の検査、高級食材の真贋判定、果実の品質評価などの分野での活用を図っていければとしており、国内では主に複合材やポリマー材の分析ニーズなどを中心に展開していく方針としている。

「Agilent 4300」がターゲットとする分野と、同社のハンドヘルドFTIRにおける位置づけ

なお、金額は500万円からとしており、即日受注を開始、出荷は5月上旬ころからを予定しているという。

「Agilent 4300」の実機