現在、PC市場の一翼を担うほどの成長を見せている、カスタマイズ可能なBTOパソコン。このジャンルの市場を常に牽引してきたのが、マウスコンピューターだ。そんな同社が2011年に開始したのが、法人向けブランドとなる「MousePro」。成長著しいイメージがあるMouseProは今年の2月、発足から数えて丸3年が経過し、4年目をむかえることとなった。ひとつの節目を迎えた同ブランドの動向について、マウスコンピューター 代表取締役社長 小松永門氏(以降、小松氏)に話しを伺った。

マウスコンピューター 代表取締役社長 小松永門氏

3カ年計画で努力を続けた認知度向上への道

「マウスコンピューターとして法人ビジネスに力を入れていく為にはお客様に対して旗印となる製品が必要と考えました。法人ならではのビジネス上の課題点、製品上の課題点を解決していくことで、お客様に貢献していけるブランドにしたいと立ち上げたのが『MousePro』です」と語る小松氏。

2011年2月に発足したMouseProは、法人の中でも特に中小企業へのアプローチを意識したブランドだ。現在でこそ、広く認知され、導入企業数も伸びているが、発足当時から現在までの道のりは、平坦な道ではなかったのだという。「新ブランドを立ち上げたからといって、すぐに結果が出るとは思っていませんでした。当初から3年計画でまずは認知度を上げていくことを中心に活動を開始しました」と小松氏。一般的に法人ビジネスでは、少数製品を試験導入することから始まり、そこで一定の評価を受ける。評価が良ければ本格導入し、問題がなければ継続的な取引が開始されるという流れがある。すなわち、1年や2年では最初の評価が出ることも無いため、中長期的な視点が必要だったのだ。

MousePro立ち上げ時、最初のデスクトップ製品であった「MousePro-iS」シリーズと「MousePro-i」シリーズ

「コンシューマブランドとしてのマウスコンピューターは知っていても、法人向け製品があることは知らなかったという方が多かったですね」と小松氏。認知度向上を中心とした活動を続けていく中、「MouseProブランドの中から購入製品を選定したい」といった声が届くようになってきたのだという。「日本企業の99%を占めるといわれている中小企業を意識したブランドですので、市場の開拓余地はまだ十分にあると考えています」と小松氏。

発足1年目、2年目は地道に認知度向上のための活動を続けてきたMouseProだが、3年目に大きなチャンスが巡ってくる。WindowsXPのサポート切れ問題を受けて、リプレースにMouseProを選択する企業が一気に増えたのだ。「法人ビジネスとしては追い風になり、予想以上の反響がありました。しかし、これだけたくさんのお客様にご選択いただけたのも、地道にこの2年間努力してきた結果だと考えています」と小松氏は語る。実際に、スタートしたばかりの1年目にこのXPからの乗り換えの問題が起きていても、MouseProブランドを選択肢の一つとする企業は少なかったかも知れない。いずれにしても、地道な活動の先にあった大きなチャンスをしっかり掴んだことで、MouseProは一定の成果を得る形で花開くことができたのだ。

BTOメーカーとして蓄積されたノウハウを活かした製品群

MouseProはコンシューマブランドと比べて、長めの製品ライフサイクルを持つことがひとつの特長となっている。「法人のお客様は、製品の見積もりを取られてから発注するまでに一定の期間を要するケースが多いものです。せっかく発注しようとしたのに、製品が終息しているといったことが無いように、法人のお客様に合わせ製品のライフサイクルを計画し、販売を行っています」と小松氏。

先端技術を追い続けるコンシューマブランドとは違い、法人では安定供給、安定稼働を求める傾向が強い。慎重な購買サイクルもその現れだが、長期間の使用が前提となるのも法人ニーズのひとつの特長だ。「長く安心して使っていただけるよう、製品の品質には特にこだわっています。MouseProのこだわりの一つとして、熟練スタッフによるMousePro専用ラインでの製造と、コンシューマ製品に比べて長い時間をかける連続稼動負荷試験などの品質テストを行っています。他にも品質向上のためにできる新しい取り組みは随時、積極的に取り入れています」と小松氏。

その結果、MouseProの製品は圧倒的に低い初期不良率と故障率を実現している。「先ほど申し上げた製造工程もそうですが、同型の部品が複数あるばあいはより品質の高いものを選択、トラブルが発生し難い範囲にBTOメニューを絞るなど、あらゆる面で品質を優先するように考えています」と小松氏は言葉を続ける。24時間365日の充実したコールセンターサービスや最長5年の保守サポートなどと合わせ、MouseProへの思いを形にしていくことで顧客に大きな安心感を与えているのだ。

品質を重視したラインナップの中でも、安定した人気を誇るのはセパレートデスクトップ型のMousePro M、iS、Tシリーズといった主力製品群だが、中でも特に成長しているのがハイエンド系の製品だ。「ワークステーション向けのNVIDIA Quadroグラフィックス搭載マシンは価格性能比の高さもポイントで、クリエイターのみなさまに大変ご好評をいただいております」と小松氏。ハイエンドグラフィックスへのニーズの高まりを受けて投入した製品は、第一線で活躍するクリエイターにとっても十分受け入れられる品質だったのだ。

プロ向けグラフィックスやIntel Xeonプロセッサを搭載するハイエンド製品が好評という。写真は映像編集向けワークステーション「MousePro W」シリーズ

「また、VESAマウントに取り付けられる超小型デスクトップPCも人気です。こちらは法人向けの一般用途に留まらず、一部は組み込みに近い使われ方をされるなど、様々なシーンで活用していただいております」と小松氏。超小型PCの需要は大きいが、他メーカーでは一般的にエントリークラスのCPUを搭載するに留めているところが多い。だがMouseProではインテル Core i3シリーズを搭載し、よりハイスペックな用途に対応する製品も存在する。「省スペースなだけでなく、MouseProらしいBTOの幅広さが魅力の製品です。高いコストパフォーマンスと併せて、実際に導入いただいた際に満足感を感じていただけるはずです」と小松氏は語る。こうした、ユーザー目線を反映したパーツ構成は、さすがマウスコンピューターの真骨頂ともいえるだろう。

VESAマウントに取り付けられる超小型デスクトップPC「MousePro-M」シリーズ。液晶背面にマウントできるほど小型だが、中身はIntel Core搭載も可能な高性能を誇る