ポーラ化成工業は3月17日、角層とその下にある表皮生細胞層の水分量の違いに着目し、「両親媒性物質(水と油の両方に親和性のある物質)」の集合体の水分量に応じた状態変化を活用することで、表皮最深部の基底層に効果的に有用素材を輸送する製剤技術を開発したと発表した。同成果の詳細は、日本化粧品技術者会主催の「第73回SCCJ研究討論会」にて発表されたという。

製剤設計の考え方

ヒトの皮膚は、性質が異なる複数の層で構成されており、最外層である角層は皮膚にとってのバリア層としての機能を担っている。そのため、高機能な化粧品にはさまざまな有効素材が含まれているものの、それを角層が防いでしまい、なかなか皮膚の奥まで浸透できない、ということが課題になっており、その解決に向け、さまざまな研究が行われてきたものの、角層を浸透した後の、表皮生細胞層での挙動については、ほとんど検討されてこなかったという。

そこで今回研究チームでは、様々な両親媒性物質集合体について、角層と表皮生細胞層の2つの層における浸透性評価をそれぞれ行い、角層で最も浸透性の高い集合体が、表皮生細胞層でも浸透性が一番高いわけではないということを見出したとする。

角層と表皮生細胞層の浸透性評価

この結果について研究チームでは、角層と表皮生細胞層は、特に水分量について角層が少なく表皮生細胞層は多いため、両親媒性物質集合体の構造が層の移行に伴って変化することが影響していると考えられると説明する。

また、角層、表皮生細胞層のそれぞれで最も浸透性が高かった集合体について、表皮全層における浸透性評価を行ったところ、表皮生細胞層で最も浸透性が高かった集合体のほうが、表皮全層でも浸透性が高い結果が得られたとのことで、こちらについては、角層と表皮生細胞層のそれぞれの浸透性が総合的に反映されたためと考えられるとしている。

表皮全層の浸透性評価

なお、研究チームでは、今回の結果から、有用素材を皮膚内部に浸透させる製剤技術の開発では、角層だけでなく、表皮生細胞層での浸透性評価も同時に実施し、2つの層の評価結果をもとに、ターゲットに合わせた技術開発をする必要があることが示されたとしており、今後、ポーラ・オルビスグループから発売される商品の開発に今回の知見を活用していく予定だと説明している。