酷評が目立つメディア論調

一方で、米国のメディアはこのスピーチを受け、今後の展開を予測しつつ、スピーチに対する評価を淡々とまとめている。代表的なものの1つがReutersの「SoftBank CEO says Sprint could shake up U.S. 'oligopoly'(ソフトバンクCEOがSprintは米国の寡占状況を打破すると述べる)」という記事で、スピーチの内容をシンプルにまとめている。

その中で政府関係者の反応が冷たいという話と、AT&TのJim Cicconi氏の「孫氏が米国の携帯電話でよくない経験をしたというなら、それはSprintを使ったからでは?」というジョークが紹介されている。

このほか、AT&T関係者の「もし政府がSprintのT-Mobile買収を認めたなら驚きだというコメントのほか」、Verizon Wireless / AT&T / T-Mobileの3社が直近で値引き競争を繰り広げるなかSprintが静観している様子を指して「価格競争にSprintが不在?」という記事、さらに孫氏のアピール内容は関係者の疑念を払拭できていないという意見など、比較的冷淡な印象を受ける。実際、スピーチで聴衆の反応があったのもソフトバンク株が急上昇して「Bill Gates氏に並ぶ億万長者に?」と語った部分くらいで、あとは淡々としたものだった。

Bloombergの「Sprint's Fight Against Cable Is Just a Fantasy (SprintのCATV会社への挑戦はファンタジーに過ぎない)」という記事では、関係者の「有線と無線では少なくとも100倍の速度差がある」というコメントを紹介するなど、"無謀"といった表現も散見され、さすがに酷評されすぎという感もある。

もっとも、回線を選ぶ基準は速度だけではなく、利便性という点にあり、実際に日本では固定回線をアパートに引かない学生もいることなどを考えれば、無線が有線を侵食するという説もあながち間違いではない。関係者の反発を招く内容という以外は、至極真っ当なプレゼンテーション内容ではあったと思うが、本人の意図とは別の部分で誤解を招きつつ反論が行われているようにも思える。