米Bloombergによれば米TV局PBSのトークショウ番組「Charlie Rose」に出演したソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏がインタビューの中で、もし当局がSprintによるT-Mobile買収に許可を出すのならば、米国での価格戦争が始まるだろうと語ったという。同氏のコメントの意図や今後の行方について分析してみる。

2014年3月期第3四半期決算で説明を行うソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏

孫社長のコメントにつながる米国携帯業界の概況

以前にもレポートしたように、米携帯電話第3位のSprintが同第4位のT-Mobile買収を計画していることは確かなようだ。ソフトバンク関係者によれば、孫氏や同社幹部らは毎月シリコンバレーにあるSprintの新オフィスで会合を重ねており、米国外にいるときも含めて密に連携をとっているという。Sprintの行動はすなわち親会社であるソフトバンクの意志であり、この買収が米国での成長にとって不可欠だという認識なのだ。

現在、米国ではそれぞれが契約件数1億オーバーで米Verizon Wirelessと米AT&Tがそれぞれトップ2に君臨しており、他を圧倒的に引き離して寡占に近い状態にある。孫氏の2月12日に開催された決算会見での説明によれば、米国ではトップ2社の寡占状態によりユーザーは高い価格を支払わされており、十分に競争が機能していないという。

これはSprintの今後の見通しについて聞かれた際の回答だが、言葉の裏を表現すれば「価格競争がSprintの武器となるが、同時に大手2社に対抗できるだけの力も必要だ」というところだろう。こうした「米国は(日本に比べて)競争不足」「大手2社の寡占状態を崩すことが米国ユーザーにとってのメリット」といった表現は過去にも何度か同氏の口から出てきており、魅力的な価格プランを提示しつつ、大手2社に対抗できるだけの裏付けが必要だと考えていることがわかる。