ワコムは、2月13日~16日の期間にパシフィコ横浜で開催された、カメラと写真映像の情報発信イベント『CP+(シーピープラス) 2014』にて、4名の著名フォトグラファーを講師に招いたフォトレタッチのセミナーを開催。ここでは、吉田繁氏の「プリントから考える 色調補正のテクニック」と題したセッションの模様を紹介する。

吉田繁氏は、デジタルプリントにも精通するフォトグラファーで、広告・PR誌・雑誌などに向けた写真を撮影するかたわら、1990年頃から巨樹を中心に自然の写真を撮り続けている。近年は、海外のギャラリー向けにオリジナルプリントの販売を進めるなど、海外アート市場でも活躍している。

主題をはっきりさせるための加工を

吉田繁氏

実演を始める前に吉田氏は、「何を見せたいのか、何を言いたいのか、主題をはっきりさせるために加工を行います」と述べて、いくつかの作例を紹介。主題となった被写体を明るくしたり美しく補正するだけではなく、その周囲をわざとぼかす加工を行うことで、主題がはっきりと浮かび上がった作成を見せてくれた。

フォトレタッチの実演では、Mac版「PhotoshopCC」と液晶ペンタブレット「Cintiq」を組み合わせた環境を使用。題材となったのは、木の上で休んでいるチーターを逆光で写した写真で、これをPhotoshopCCのRawデータ現像機能「Camera Raw」を使った補正を披露してくれた。通常の補正ならば、露出(露光量)やコントラストを調節して写真を仕上げていくのだが、被写体(この場合はチーター)が逆光になってしまった写真では、露出を明るくしていくと空が白くなってしまい、写真として成立しなくなるという。

実演で補正が行われたチーターの写真。左が補正前、右が補正後

そんな場合にオススメなツールとして紹介されたのが「補正ブラシ」だ。Camera Rawでは、「自動マスク」をチェックしてから「補正ブラシ」を使ってなぞるだけで、複雑な形を選択することができる。その後は、選択した部分のみを明るくするなどの補正が行えるため、任意の被写体のみを明るくするといった補正が可能なのだ。

ペンタブレットの利点と写真のプリントに関して

セッションでは、「補正ブラシ」の他にも「修復ブラシ」ツールを使って邪魔な電線や被写体に被ってしまった草などを消す方法も紹介。いずれも、補正したい部分をブラシでなぞる作業であるため、マウスでは微妙な操作が行えない。しかし、液晶ペンタブレットを導入すれば、鉛筆で描くような感覚で画面を直接なぞれば良いだけなので、作業がとても簡単になるとのこと。また、海の写真に白波や水しぶきの描画をする実演では、「シェイプ」のコントロールを「筆圧」にすることで、明るい部分と暗い部分を無造作に織り交ぜることができると解説してくれた。これも、筆圧感知が可能なペンタブレットならではの利点だ。

「修復ブラシ」ツールを使って被写体に被ってしまった草を消す実演

「シェイプ」のコントロールを「筆圧」に設定

最後に、今回の主題である補正した写真のプリントに関して、ソフトフォーカスとストラクチャを同時に掛けて、ソフトフォーカスの効果を行いながら解像度を上げる手法や、黒いベタな部分や白い部分に紙の面質が現れる印刷用紙(アワガミ インクジェットペーパーの「楮 : コウゾ」)の解説を行ってセッションは終了となった。写真全体に補正を掛けるのではなく、主題をはっきりさせる為に部分的な補正を行うこと、そして印刷を前提に解像度や印刷用紙も考慮しながら補正を行うことの大切さを学べたセッションとなった。

印刷用紙や印刷の仕上がりに関する解説を行う吉田繁氏

液晶ペンタブレットの利点を実演