科学技術振興機構(JST)は2月20日、2014年3月21日から24日にかけて兵庫県立総合体育館において日本全国の高校生が学校対抗で科学の知識や技能を競い合う「第3回 科学の甲子園全国大会」の出場チーム47校すべてが出揃ったことを発表した。

同大会は各学校の生徒6~8名を1チームとして参加し、科学の知識や技能を複数の競技で競い合うもの。各都道府県で実施された代表選考会に参加した高校の数は590校(国立14校、公立490校、私立86校)、925チームで、参加生徒数は6704人(1年生2043人、2年生4661人)と、第2回に続き、前回を上回る規模となった(第2回大会は参加高校数556校、参加生徒数は6308人)。

全国大会で出される競技の種類は主に2つ。1つ目が「筆記競技」で、理科、数学、情報の中から知識を問う問題および知識の活用について問う問題が出され、教科や科目については、その枠を超えた複合的な問題も出題されることから、総合的な科学への造詣の深さが求められることとなる。

2つ目は「実技競技」で、理科、数学、情報に関わる実験、実習、考察ならびに科学技術を総合的に活用して、ものづくりの能力、コミュニケーション能力、プレゼンテーション能力などにより課題を解決する力を競うというものでいずれも第1回から変更はない。

ちなみに前回大会では筆記1競技、実技4競技という形で実施されたが、今回は運営の柔軟性の向上や、観覧者からのすべての競技を見たいといったニーズなどがあったことから、今回は筆記1競技、実技3競技という形へと変更されたという。

前回、前々回大会からの競技内容の変遷。今回はより時間に余裕を持たせ、観覧者にも観覧しやすいスケジュール構成を組むことを配慮したという

また、これまでも実技競技のうちの1競技「クリップモーターカー」については、事前公開競技として、参加チームにあらかじめ仕様が公開されていたが、今回も同様に事前公開競技として、「Mgホバーレース」がアナウンスされている。

この「Mgホバーレース」は、60分間でホバークラフトとMg電池を製作し、10mのコースを走らせ、その速さを競うというもの。レギュレーションとして、利用可能な材料が決められているほか、空気をためるスカート部分にはポリエチレン袋を用いること、市販の小型直流モーターを2個まで使用可能、Mg空気電池は食塩水で放電反応が起こる"燃料電池"なため、その電池を納めたビニール袋は2個まで搭載できる、といったものが定められている。

「Mgホバーレース」の概要

レースそのものは8レーンに分かれた10mの直線コースを各チームのホバークラフトが疾走する、というもので、2ラウンドある予選レースを勝ち残った上位8チームが決勝レースを行うといった形となっている。また、同競技には第1回 科学の甲子園Jr大会の優勝チームも特別参加チームとして参加する予定だという。

「Mgホバークラフト」のダミー機。本番は乾電池ではなくMg空気電池を使用するほか、プロペラも自作する必要があるため、これはあくまで参考用マシンといったところ

また、これまでは出題数が多かったこともあり、開催地である兵庫にちなんだご当地問題が出題されていたが、今回は実技は3つ、ということもあり、ご当地問題は出題されない、ということになるという。

なお、出場47チームのうち、初出場が21校、2回目が9校、そして3回連続が17校となっており、出場生徒総数は369名。男子が315名で女子が54名、1年生は49名で、2年生が320名という内訳だ。

各都道府県の出場高校は以下のとおり。

都道府県名 学校名 出場回数
北海道 北海道札幌西高等学校 (2年連続)2回目
青森県 青森県立青森高等学校 2回目
岩手県 岩手県立盛岡第一高等学校 (3年連続)3回目
宮城県 宮城県仙台青陵中等教育学校 初出場
秋田県 秋田県立横手高等学校 初出場
山形県 山形県立山形東高等学校 (3年連続)3回目
福島県 福島県立会津学鳳高等学校 初出場
茨城県 常総学院高等学校 初出場
栃木県 栃木県立宇都宮高等学校 (3年連続)3回目
群馬県 群馬県立中央中等教育学校 初出場
埼玉県 埼玉県立大宮高等学校 (2年連続)2回目
千葉県 渋谷教育学園幕張高等学校 初出場
東京都 開成高等学校 初出場
神奈川県 栄光学園高等学校 (3年連続)3回目
新潟県 新潟県立国際情報高等学校 初出場
富山県 富山県立富山中部高等学校 初出場
石川県 石川県立小松高等学校 初出場
福井県 福井県立藤島高等学校 (3年連続)3回目
山梨県 山梨県立甲府南高等学校 初出場
長野県 長野県松本深志高等学校 初出場
岐阜県 岐阜県立岐阜高等学校 (3年連続)3回目
静岡県 静岡県立清水東高等学校 初出場
愛知県 愛知県立一宮高等学校 初出場
三重県 三重県立伊勢高等学校 (3年連続)3回目
滋賀県 滋賀県立膳所高等学校 (3年連続)3回目
京都府 立命館高等学校 初出場
大阪府 大阪星光学院高等学校 初出場
兵庫県 灘高等学校 (2年連続)2回目
奈良県 西大和学園高等学校 (3年連続)3回目
和歌山県 智辯学園和歌山高等学校 初出場
鳥取県 鳥取県立鳥取西高等学校 (3年連続)3回目
島根県 島根県立益田高等学校 初出場
岡山県 岡山白陵高等学校 初出場
広島県 広島学院高等学校 (3年連続)3回目
山口県 山口県立宇部高等学校 (3年連続)3回目
徳島県 徳島市立高等学校 (3年連続)3回目
香川県 香川県立高松高等学校 (2年連続)2回目
愛媛県 愛媛県立松山東高等学校 2回目
高知県 高知学芸高等学校 (2年連続)2回目
福岡県 久留米大学附設高等学校 (2年連続)2回目
佐賀県 弘学館高等学校 初出場
長崎県 長崎県立長崎西高等学校 (3年連続)3回目
熊本県 真和高等学校 初出場
大分県 大分県立大分上野丘高等学校 (2年連続)2回目
宮崎県 宮崎県立宮崎西高等学校 (3年連続)3回目
鹿児島県 ラ・サール高等学校 (3年連続)3回目
沖縄県 昭和薬科大学附属高等学校 (3年連続)3回目

高校の内訳としては公立27校、私立が20校で国立校が0校という状態。さらに、今回は全員が女子だけ、というチームもない状態となっている。

また今大会は、初めての試みとして、選手宣誓を行うチームの抽選を同会見にて実施、その結果、初出場となる茨城県代表の「常総学院高等学校」が宣誓を行うこととなった。

出場47校の一覧。緑が初出場、青紫が2回目、オレンジが3回目の出場校となる

会場にて行われた、科学の甲子園推進委員会委員長の伊藤卓氏の手によるくじ引きにて、選手宣誓チームは「常総学院高等学校」に決定した

ちなみに同会見には、「群馬県立中央中等教育学校」より本宮俊樹さん、青野桃子さん、ならびに「静岡県立清水東高等学校」より竹森達也さん、横山真依子さんが出席し、それぞれ今大会に向けた抱負を語ってくれた。中央中等教育学校チームは、Mgホバーレースの開発を群馬大学工学部の支援を受けながら行っているとのことで、「2013年夏の全国高校野球選手権大会(夏の甲子園)は、群馬県代表の前橋育英高校が初出場・初優勝の快挙を成し遂げたので、自分たちも科学の甲子園で初出場・初優勝を狙いたい」と語ってくれた。一方の清水東高校チームは、「去年は予選落ちで悔しい思いをしたので、今年はそのリベンジを果たしたい。全力で楽しんで悔いの残らないようにしたい」と、全力で競技に当たることを誓った。

左から、JST 理数学習支援センター副センター長の植木勉氏、清水東高校の竹森達也さん、横山真依子さん、群馬県立中央中等教育学校の本宮俊樹さん、青野桃子さん、科学の甲子園推進委員会委員長の伊藤卓氏

なお、今大会の優勝チームは全米の中高生が科学能力を競う大会「サイエンス・オリンピアド 2014」への特別参加チームとして派遣される予定となっている。

3回目となる今大会は、従来以上に企業協働パートナーとの連携強化が図られる予定で、大会3日目の23日には、今後の理系教育と企業のニーズなどをどうマッチングさせていくかといった、交流プログラム「科学の甲子園特別企画交流会 ~グローバルに活躍する理系人材育成に向けて・産学の直接対話~」が開催される予定で、複数のテーマが各企業などにより話し合われる予定だという