イシュートラッキングシステム「JIRA」やコラボレーションツール「Confluence」で知られる豪アトラシアン(Atlassian)が日本での展開を強化している。昨年6月に開設した日本法人オフィスを今年1月21日までに横浜みなとみらい「マリノスタウン」に移転。国内著名企業でエバンジェリストの経験を持つスタッフらを加え、日本語でのドキュメント提供やサポートの拡充、マーケティング活動を拡大する予定だ。

本誌は、来日したAtlassianのプレジデント、Jay Simons(ジェイ・サイモンズ)氏に、製品と企業のビジョンや国内での動向を聞いた。

開発者の口コミで広がって、企業の正式ツールに

Atlassian プレジデントのJay Simons氏

「まずは開発者の間に口コミで広がって、それを企業が追認して正式採用に至るというパターンが多い。何万ドルもするソフトウェアではありえないことだ。このようなボトムアップでの採用モデルは、われわれのビジネスの根幹にもなっている」

Simons氏は、同社製品が企業に受け入れられていく様子をそう説明する。

製品の評判を聞いた少数のエンジニアがまず個人的に使い始め、それが社内に広がり、最終的に企業の正式ツールになるのだという。Confluenceを社内コラボレーションツールに採用したインターネットイニシアティブもそうしたケースだ。

同社の製品ユーザーは現在、世界3万3000社、国内300社を数える。新規ユーザーは毎月900社ペースで増えている状況だ。採用を決める理由の1つは、ツールとしての使いやすさや品質の高さがあるという。これは、最初の大手ユーザーとなったアメリカン航空のオーダーのエピソードからもわかる。

「当社は2002年にシドニーで設立されたが、まったくの無名企業だった。だが設立後ほどなくして、オフィスに突然FAX1枚の注文書が届いた。送り主はアメリカン航空。そのFAXが届くまで同社とは何のつながりもなかったそうだ」(Simons氏)

創業者のScott Farquhar(スコット・ファーカー)氏とMike Cannon-Brookes(マイク・キャノンブルックス)氏が会社を設立したのは21歳の頃。2人ともエンジニアで、セールスの経験もなかった。だが、セールス担当者がいなくても、よい製品を作れば市場に受け入れられるということを、このとき初めて実感したのだという。

製品の良さを広く伝えるために、インターネット上であらゆる情報をオープンにするというアプローチを採用した。製品の価格や特徴、ドキュメント、サポート情報などを公開する一方、セールス担当者は1人も雇わないという販促体制を敷いた。こうした体制は現在まで受け継がれており、今でもセールス担当者は1人もいない。12年にわたって、口コミだけで製品を売り続けてきた稀有な企業なのだ。