エヌビディアジャパン マーケティング本部 部長の林憲一氏

NVIDIAは2日、同社の開発する「Tegra 4」を搭載した7型Androidタブレット「Tegra Note 7」の日本国内で展開することを発表した。これに伴い報道関係者向けの説明会と体験会を開催し、「Tegra Note 7」の製品概要や特長を紹介した。

NVIDIAによると、「Tegra Note 7」は固有のタブレット製品を指す物ではなく、NVIDIAがリファレンス設計、ID、アクセサリを提供し、世界各国のパートナー企業が開発から販売までを行う「Tegra 4搭載タブレット」のプラットホームだという。

エヌビディアジャパン マーケティング本部 部長の林憲一氏は、「タブレット市場という厳しい競争の中で、さまざまな変化や課題が現れている。プラットホーム化することによって、メーカーは課題に迅速に対応でき、いち早く製品をマーケットに投入することができることに加えて、Tegra 4の機能を最大限に生かした製品を開発できる」と「Tegra Note 7」というプラットホームのメリットをアピールする。

プラットフォームとしての「Tegra Note 7」

各国で展開するパートナー。おなじみのグラフィックスカードベンダも目立つ

NVIDIAはTegra 3搭載タブレットでも「KAI」という名でプラットホーム化を目指していた。このKAIプラットホームに沿って開発された製品が「Nexus7(2013)」であった。「Tegra Note 7」は、KAIプラットホームを推し進める形で構想されたもので、KAIプラットホームではハードウェアのリファレンス設計のみだったが、「Tegra Note 7」ではハードウェアのリファレンス設計とソフトウェアの提供も行う点が大きな特長となっている。

「Tegra Note 7」プラットホームから日本国内第1弾として投入されるのが、ZOTACの「ZOTAC Tegra Note 7」。製品の詳細についてはこちらのニュース記事参照してほしい。林氏によると第1弾のZOTACだけでなく、ほかのパートナー企業からも「Tegra Note 7」が日本国内向けに企画中だという。

書道家も太鼓判を押す書き味「DirectStylus」

エヌビディアジャパン マーケティング本部 テクニカルエンジニア 矢戸知得氏

続いて「Tegra Note 7」に搭載された機能については、マーケティング本部テクニカルエンジニア 矢戸知得氏が紹介を行った。その中でも最も力を入れて取り上げていたのが、ペン入力の仕組みである「DirectStylus」だ。NVIDIAの調査によるとタブレットを購入する決め手として「スタイラス」を挙げるユーザーが多く、「Tegra Note 7」の中でも特徴的な機能に仕上がっているという。

矢戸氏は「DirectStylus」を「ペンタブなどで採用する電磁誘導式アクティブスタイラスの機能を、通常のタブレットと同じ静電容量式パッシブスタイラスのような低価格で実現したもの」と表現する。

「DirectStylus」の特徴

もっとも細い部分で2mmのペン先。反対側の端でディスプレイをこすると消しゴムのようにも使える

アクティブスタイラスでは、デジタイザとペンの応答によって、細いペン先の位置を高精度で検出したり、筆圧検知、手のひらの感知を実現したりしている。アクティブスタイラスのような機能を実現するには、それなりのコストがかかっていた。「Tegra Note 7」ではTegra 4の高いGPU性能によって低コストで実現できたという。

かなり細い線までかけそうだ

では、「DirectStylus」の使用感はどうなのか。説明会では書道家の涼風花氏が「Tegra Note 7」で書を書くというデモが行われた。涼風花氏は「ほかの製品では強弱を付けたときに文字が途切れてしまうことがあったので、書きにくいとおもっていたが、Tegra Note 7ではそういったことがなくなめらかに書くことができた」という。

書道家の涼風花氏

涼風花氏によるデモ。「夢」という字を滑らかな筆致で書いている。"イリ"や"ヌキ"もある程度判断できる

このほか、スタイラスを生かしたアプリを搭載する。

Tegra 4を生かしたカメラ機能とこだわりのオーディオ

続いて紹介があったのはカメラ機能だ。「Tegra Note 7」のリファレンス仕様では、リアカメラに500万画素、フロントカメラに30万画素のカメラを搭載。カメラアプリとして「Camera Awesome」をプリインストールする。

ここでもTegra 4の処理能力を生かし、写真の撮影時に常にHDRを有効にする「Always-On HDR」、動いている対象をタップするだけでフォーカスを合わせ続ける「Tap-to-Trac」、720pで120fpsのハイスピード撮影が行える「スローモーションビデオ撮影」といった機能を備える。

搭載するカメラ機能

特に「Always-On HDR」は興味深い機能で、これまでHDRを有効にして写真撮影を行う場合、露出を変えて撮影した2枚の画像を合成することで、幅広いダイナミックレンジを実現していた。しかし、2枚の写真を撮影しなければならないため、動いている被写体に対してはブレが発生するという課題を抱えており、ユーザー側で状況を判断して意識的にHDRを有効化するかどうかを選択していた。「Always-On HDR」ではTegra 4と対応するカメラモジュールを使うことにより、露出の違う写真を高速に撮影、合成することが可能になったという。

なお、「Always-On HDR」は購入時に利用ができず、後日OTA(Over the air)で利用可能になるとしている。

また「Tegra Note 7」では、フロントにバスレフ型のスピーカーを内蔵する。7型タブレットとしては大きめのスピーカーボックスを備えるほか、本体の短辺にパスレフポートを配置している。ただ片方は専用のバスレフポートであるが、もう片方はMicroUSB端子をバスレフポートとして使っているため、当然左右のバスレフポートの大きさや形状が違うので、出力も異なるのだが、ソフトウェア的に補正を行っている。

サウンドも続くゲーミング体験という意味では重要な要素だ

ゲームも当たり前にこなす

最後に紹介されたのは、「ゲーム」への対応について。「Tegra Note 7」では、Tegra搭載製品でプレイするゲームアプリの情報を集約する「Tegra Zone」経由でゲームアプリを探し、GooglePlayでダウンロードが可能。タブレット本体でゲームをすることももちろんできるが、本体に備えられたMicro HDMI端子でディスプレイやテレビと接続することで、大画面によるゲームプレイが行える。

NVIDIAとしては"ゲーム"ははずせないところだろう

このほか、イニスが開発するタワーオフェンス型ゲーム「Eden to Green」をプリインストール。Tegra 4向けに影などグラフィックスの表現を最適化するほか、ゲーム内にはTegra搭載デバイスのみプレイ可能なステージを用意。通常は決められた曜日にしか手に入らないようなアイテムでも、Tegraデバイス専用ステージであればいつでも入手することができるという。

Eden to Green。相手の陣地に攻め入って仲間を解放するといったゲーム。Tegra 4向けにグラフィックスの最適化が行われている

「Tegra Note 7」では、NVIDIA SHIELDで実装されているようなGeForceカード搭載PCからのリモートプレイには対応していない。矢戸氏は、利用の可否や今後の実装について明言を避けたが「OTAによる機能追加は可能で、今後さまざまな機能を提供していく予定」とした。

また、説明会では何度かOTAによる機能追加について言及があったが、OTAによるOSアップデートも予定する。「ZOTAC Tegra Note 7」では購入時のOSはAndroid 4.2(JellyBean)となっているが、矢戸氏によると「12月中にAndroid 4.3(JellyBean)へのアップデートを提供する予定のほか、Android 4.4(Kitkat)についても現在スケジュールを調整中」とのこと。少なくとも現在の最新版であるAndroid 4.4(KitKat)に向けた道筋はついているものと思われる。

2013年のタブレット市場は、既存の有力プレーヤーから新モデルが出てくるだけでなく、7型あるいは8型といった比較的ディスプレイサイズの小さなデバイスでは、低価格を武器にした製品が多数登場した。さらにWindows 8/8.1タブレットも数がそろってきたということでプレイヤーが出そろった感があったのだが、ここにきて「Tegra Note 7」も"7型""コストパフォーマンス"を売りに飛び込んできた格好となった。

ユーザーとしては選択肢が増える分歓迎したいところだが、タブレット市場の競争はますます激化しそうだ。特に「Tegra Note 7」はプラットホームということで、同じ「Tegra Note 7」をベースに製品を開発する場合、メーカーはどの部分で他社と差別化するのか注目したいところである。