シマンテックは、2013年9月に新たなセキュリティ対策製品となる。「ノートン セキュリティ with バックアップ」の販売を開始した。本稿では、その概要などを紹介しよう。

図1: ノートン セキュリティ

新しいライセンスモデルで柔軟な対応も

今回のノートン セキュリティ with バックアップでまずもって目をひくのが、新しいライセンスモデルである。1つのパッケージで、Windows PC、Mac、Androidのスマートフォンやタブレット、iPhone、iPadなど各種デバイスに対応し、3つのデバイスに自由にインストールできる。しかし、最近では、多数のデバイスを所有したり、家族全員を合わせると、4台以上のPCやスマートフォンがあることも決してめずらしくない。

図2: ノートン モバイル セキュリティ

すべてのデバイスを、家族全員の持つデバイスをすべて守る、そんなセキュリティ対策が求められている。シマンテックでは、2012年リリースのノートン360マルチデバイスでそれを実現したのであるが、今回、ノートン セキュリティでは、追加ライセンスが導入された。たとえば、4台以上のデバイスを持つユーザーにとって、追加ライセンスのみを購入すればよい。購入は、ノートンマネージメントから行う(ノートン セキュリティの[アカウント]→[追加PCの保護]からたどれる)。

図3: 追加ライセンスの購入

追加ライセンスは、すでに所有するライセンス期間まで有効となる。こうすることで、更新日をすべてのデバイスで同一にできる。料金は利用期間が異なるので日割り計算される(図のように、最大で2,280円となる)。パッケージを追加購入することなく、柔軟な対応が可能となる。

ノートン セキュリティ with バックアップの強化機能

ノートン セキュリティ with バックアップのWindows版で強化された機能をみていこう。

図4: ノートン セキュリティ with バックアップのメイン画面

セキュリティ対策ソフトとして、まず気になるのはパフォーマンス面である。シマンテックによれば、前バージョンと比較して起動時間を15%、インストール時間を10%も短縮し、スキャン中のメモリの使用を100MBまで抑えたとのことである。これは、実際に使用してみなければわからないと思うが、起動の速さは筆者の環境でも確実に体感できた。

図5: インストール画面、1分程度で完了する

次に注目したいのが、ノートンIDセーフである。IDとパスワードだけでなく、クレジットカード番号や住所など、オンライン取引の際に入力する情報をクラウド上に暗号化して保存する。入力が必要なボックスを自動で検知して、ユーザーの代わりに入力する。ノートン セキュリティ with バックアップでは、機能的には大きな変化はなかった。しかし、管理ツールなどが一新された。

図6: ノートンIDセーフ、ログイン情報

ツールバーから保存データの完全な検索などが可能になった。ノートンIDセーフは人気のある機能で、より使いやすく進化している。

図7: ノートンIDセーフ実行中

SONARエンジンも強化された。従来のシグネチャーベースでの防御では、新たなウイルスや亜種などには対応が難しい。そこで、ウイルスなどの挙動に注目する。ウイルス自体が物理的に変化しても、その挙動が変わらない。その挙動を検知することにより、正しいプロセスなのかどうかを判定する。もし、不正なものであればブロックし、PCを保護する。

図8: SONAR関連の設定項目

しかし、未知の脅威に対しては、いかなる防御も完全とはいえない。そこで、強化されたのが、高度な修正機能である。SONARではウイルスなどによる破壊活動を把握することで、変更されたシステムを元の状態に戻す。同様に、Global Intelligence Networkを使用すると、ウイルス被害に遭ったWindowsシステムファイルを短時間でで修復できる。最近のウイルス感染では、Windowsシステムの深部まで被害が及び、クリーンインストールという事態もある。そんな手間からも解放される。

バックアップがないパッケージも検討の価値あり

今回のリリースでは、「ノートン セキュリティ」というバックアップ機能のないパッケージも用意されている。もともとノートン360マルチデバイスは、名前にもあるようにノートン360をコア製品にしたものである。当然のことながら、システムチューニングやバックアップも機能として同梱されていた。それが、今回はないパッケージも提供された。

図9: ノートン オンラインバックアップ

たしかにオンラインストレージへのバックアップは、安心感も高い。一方、自分好みのバックアップもあるだろう。たとえば、HDD全体をイメージバックアップする、NASで冗長化した保存場所を使うといった方法もある。そんなユーザーにとって単純なファイルバックアップでは、機能不足の可能性もある。つまり余計な機能となってしまう。そんなユーザーの声を反映したのが、バックアップ機能を持たないパッケージといえるだろう。

シマンテックのオンラインストアでは、1年のダウンロード版で価格差は2,500円である。このような選択肢もあることは、非常にありがたいといえるのではないか。

図10: ファイルのさまざまな情報を調べるノートンインサイト

全体的な使用感であるが、高機能の割には負荷を感じさせることが少ない。スキャンなどもさまざまな評価機能により、2度目以降は非常に高速である(もちろん、状況に応じては完全スキャンも必要になる)。トータルにバランスのとれたセキュリティ対策ソフトという感想である。