「GoogleはAppleの独自地図サービス移行で(北米の) iOSにおけるGoogle Mapsユーザーの多くを失った」という英Guardianの記事が11月11日に公開されている。日本のユーザー的感覚でいえば、ビジネス検索やルート案内だけを見てもApple Mapsでは満足に行えない状況でこの結果は疑問なのだが、この記事が意味するところはどこにあるのだろうか?
Guardianの記事はcomScoreが11月5日(米国時間)に発表した米国におけるスマートフォンの利用状況をまとめた調査データを基にしている。comScoreはインターネットや各種エージェントの利用状況を集計してMobile Metrixという調査報告をまとめているが、販売データからの集計値を出している他の調査会社に比べ、実際の利用動向が反映されやすいとみられる。そのため、四半期ごとの販売データのシェアではAndroid OSが8割超のシェアを占め、iOSは残り2割弱の一角を占めるにすぎないものが、comScoreの集計では北米のケースでiOSのシェアが4割、Androidのシェアが5割となっている。これは同調査報告で紹介されている利用アプリのシェアにも反映されており、例えばスマートフォン全体におけるGoogle Mapsのシェアが43%なのに対し、iOSでしか利用できないApple Mapsのシェアが25.6%もある。つまり、それだけiOSユーザーの比率が高いことを意味する。
本題の地図アプリのシェアだが、Guardianがこのシェアを基に両アプリのユーザー数を算出したところ、北米で2013年9月時点でApple Mapsのユーザーは約3500万で、Google Mapsのユーザー数は約5,870万だったという。一方で、Appleが地図アプリを自社製サービスのものに切り替えたiOS 6が発表され、まだiOS 6向けGoogle Mapsが発表されていなかった2012年9月、Google Mapsのユーザー数は約8,110万だったと推察する。つまり、その差分の2,300万弱が1年間でGoogle Mapsが失ったユーザー数にあたるというのがGuardianの予測だ。また、2013年9月時点でiOS上でGoogle Mapsを利用するユーザーは600万、iOS 6にアップグレードしていない旧ユーザーが200万程度だという予測も行っており、つまりGoogleがiOS向けにリリースしたMapsアプリはほとんどユーザーの関心を集めていないというのがその趣旨だ。
理由がいくつか挙げられているが、その1つはGoogle Maps on iOSの機能不足で、例えばAndroid版の主力機能の1つである「Turn-by-Turn」のナビゲーション機能が搭載されていない。またあからさまに地図データや検索精度に不具合のあったiOS 6初期の地図に比べ、現在では少しずつ改善が進んできており、「最初から入っているアプリ/サービスを置き換えるほどではない」と感じるユーザーが非常に多いと考えられるからだ。実際の利用比率については推測の域を出ないが、「プラットフォーム差別化としての機能劣化」「プリインストールアプリの強力さ」という2点について、改めて考えてみたくなる話だといえるかもしれない。