BCNによると、2013年10月の国内PCおよびタブレットの販売実績は、販売台数では前年同月比11.2%減と2桁減になったものの、販売金額では単価上昇に支えられ、前年同期比4.4%増になったという。そのうち、ノートPCの販売金額は前年同月比4.0%増となり、ノートPCのプラス成長は2012年3月以来となった。

これは、同社が全国23社の大手家電量販店、2,397店舗のPOSデータを集計している「BCN ランキング」のデータをもとに分析したもの。BCNの森英二アナリストは、「ノートPCの販売金額が前年実績を上回ったのは、タッチ機能の搭載などにより、単価が上昇したため。ノートPCの平均単価は82,200円となり、3年前の価格水準にまで回復している。また、デスクトップPCに関しても回復の兆しがある」と分析した。

ノートPCの販売金額が久々の前年比プラスに

旧モデルの構成比率が高い

メーカー別シェアでは、ノートPC、デスクトップPCの両分野ともに、NEC、東芝、富士通が上位3位を占めているが、「共通しているのは、各モデルの販売台数のピークが右肩下がりになっている点。今年の場合、一世代前の2013年春モデルの高機能モデルの販売比率が高く、夏モデルの構成比も高い。主力となる秋冬モデルはこれから製品が出てくることもあり、まだ構成比は少ない。10月のデータだけをみると、2011年10月には一世代前となる夏モデルが75%程度であったのに対して、2013年10月には95%を占めている」とし、旧モデルを中心とした販売となっていることを示した。

トップ3はNEC、富士通、東芝

棒グラフ上部の数字が旧モデルの構成比率(%)

また、「今年の夏モデルは73モデルが投入されたが、前年の夏モデルが111機種であったことからも減っている。機種数の減少も需要動向に影響している」と述べた。Windows 8.1の影響については、「それほど効果がない。価格が安くなったWindows 8搭載モデルを購入して、無償でアップデートするといった購入者もある」(森アナリスト)などとした。

日本マイクロソフトのSurfaceについては、集計の対象外になっていることを示しながら、「iPadの9.7型モデルと同等規模の販売台数にはなっているのではないか。1桁台の後半のシェアは確保できていると見ている」(道越アナリスト)とした。

BCN 森英二アナリスト

BCN 道越一郎アナリスト

一方、タブレット端末の販売動向については、「市場の伸びに陰りが見え始めている」とし、それまで2倍以上の成長をみせていたものが、2013年10月には前年同月比18%増に鈍化したという。

タブレット端末のメーカー別シェアでは、2013年10月の実績で、ASUSが44.3%、アップルが32.8%となったが、「iPad Airの発売10日間の市場シェアを見ると、アップルが53.5%であるのに対して、ASUSは23.8%。昨日から発売となった新たなiPad miniの貢献もあり、11月はアップルがASUSを抜きかえすのでないか」(森アナリスト)と見ている。だが、「発売10日間の販売台数を比較しても、初代iPadの販売台数を後継機種が抜けない状況が続いている」とも指摘した。

タブレット市場には第3の勢力が待たれる(Surfaceは集計対象外)

抜きつ抜かれつのアップルとASUS

初代iPadを「1」としたタブレット発売後10日間の販売指数

「パソコン復活への処方箋」を提言

BCNの道越一郎アナリストは、「情報デバイスに対する個人の熱が冷めているのではないかとの指摘もあり、PCの売れ行きが鈍化している。だが、PCは引き続き重要なデバイスであり、PC市場はこれで終わるわけではない。PC市場復活のためにはいくつかの処方箋がある」などとした。

BCNでは、今年6月にマルチデバイスに関する利用実態調査を行っており、そこではPCの利用頻度が減っていても、PCが必要性と感じるユーザーは86.1%を占めており、「そうした需要に対して、ハードとソフトの環境を整えて、業界として提案していく必要がある」とした。

BCNが提言する「パソコン復活への処方箋」

黒物家電市場全体の販売金額を示すBCN指数では、2013年10月の集計値が2011年7月以来、2年4カ月ぶりにプラスに転じたという。そのなかで、PCの販売構成比は上昇してきており、薄型テレビを上回る販売金額構成比を持つ。「PCは20%以上の構成比となっており、販売店においては、重要な商材となっている」と位置づけた。

BCN指数の動向

2012年1月ごろを境にPCの販売金額が薄型TVを逆転

しかし、PCの販売台数は依然としてマイナス成長のままだ。「Windows XPや消費増税の影響で、来春に向けてはプラス材料があるが、弱含みであることには変わりがない。また、技術的な面でも光明ともいえる存在だったUltrabookは、徐々に勢いが鈍化しており、構成比は6.9%と10%を切った。柱にはなっていない」などとし、「メールやウェブなどの用途ではタブレットやスマートフォンが代替したこと、PCはOffice専用の使い方が中心となり、様々な使い方が楽しめるというPC本来の特徴が生かせていないこと、Windows 8発売後のタッチ操作への移行が遅れたことや、タッチ対応や円安の影響、タブレットとの差別化のために価格設定を高めに設定するといった戦略などにより、単価が20%上昇したことが、PC需要の落ち込みにつながっている」と述べた。

勢いに欠けるPC市場

PC需要落ち込みの理由

さらに、「スマートフォンやタブレットも爆発的に売れているわけではない。スマホやタブレットができない部分、それに対してPCができる部分という明確な提案を行うことで、競合するのではなく、共生することができる。PCはクリエイティブな活動を支援する分野での提案が遅れており、デジカメで撮影した画像の編集作業の増加や、3Dプリンタといった動きも、PCのクリエイティブ利用を加速することになる。DTM関連機器が売れはじめていることもプラス要素となる。また、個人が持つデータを管理するには、PCが必要であるといった点も訴求していく必要がある」と提言した。