―― 今、りゅうずの話が出ましたが、りゅうずもGW-A1000から大きく変わりましたね。
斉藤氏「GW-A1100のりゅうずは、クイックロックとコンポジット構造を採り入れました。これについても、GW-A1000でいろいろな人から意見を聞いて、良い点と悪い点を整理して改良を加えたんです。
結果、すごく使いやすくなったと自負しています。りゅうずを指の腹で押して回すことで、すばやく簡単にロックと解除ができるでしょう? りゅうずは普通、指でつまんで回すものと思いがちですが、実は指の腹で押した方が回しやすいことに気付いたんです。
樹脂と金属を組み合わせたコンポジット構造は、指がかりを良くするための工夫です。りゅうずの上下に位置するボタンにも、グリップパターンを採用しました。これらは、GW-A1000からの正常進化に、GW-A1100のコンセプトである"エマージェンシーの視点"を加えたものです。グローブを着けた手での操作も考えているので、方位計測と合わせてバイクツーリングなどでも使いやすいと思います。振動にも強いですしね」
―― りゅうずのロックを外すとき、何の予備知識がなくとも、自然に指の腹で回してロックを外したくなります。デザインが使い方を導いていますね。
斉藤氏「デザイナーは、レンズ交換式カメラのレンズ着脱指標とか、ああいった日常生活の中のインタフェースを良く研究しています。何となく、こう使うんだろうな、こうなりそう、ということが、特に意識せずに思い浮かぶデザインを普段から考えているんですね」
―― ラバーバンドも装着感が非常に向上していると感じたのですが、材質が変わったのですか?
斉藤氏「いえ、まったく変えていません。形状の工夫です。バンド側面の厚みを保ったまま、中心だけを薄くすることでしなやかさを出し、強度と装着感の向上を両立させています。
装着感というのはあくまで感覚で人によって違いますから、非常に難しい部分ですね。試作では中心部をもう少し薄くしたものも作ったのですが、それだとヘナヘナというか、頼りなく感じてしまって。最終的に、現在の厚さに落ち着きました。先に述べたケースデザインと同じで、バンドも実際の強度だけでなく、見た目が丈夫に見えることも重要と考えています。
価格設定に差はありますが、SKY COCKPITは、デジタルの『MAN』シリーズのような、こだわりのG-SHOCKを使っていただいているユーザーの方々に向けて作っています。汚れた手で時計に触っても、時計をちょっとぐらいぶつけても、気にせず使い倒す…、そんなユーザー像です。
例えば、MR-G(ミスタージー)やGIEZ(ジーズ)もそういう使い方ができますけど、実際にはあまり考えられませんよね。G-SHOCKでありつつ、メタルウオッチならではの高級感や、時計としての質感を求められているわけで。
SKY COCKPITでメタルバンドのテイストを希望される方には、フライトコンポジットバンドがおすすめですね。ケースの樹脂と一体感がありますし、使い込むと樹脂ならではのツヤが出てきて、いい雰囲気になるんですよ。しかも軽いうえに温度的にも安定しているので、着け心地がいい。冬でもひやりとせず、汗をかく夏でも熱くなりすぎない。ブラックIPのメタルバンドって、真夏の屋外では結構熱くなるんですよね」
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後編では、G-SHOCKに磁気(方位)センサーを搭載することの難しさや、新素材の採用、操作性への一工夫などを紹介する。