プロジェクタ事業戦略と販売戦略
エプソン販売 取締役 販売推進本部長の中野修義氏からは、国内プロジェクタ市場の概況と、エプソンのプロジェクタ事業の国内販売戦略を述べた。最初の話題はビジネスプロジェクタの市場概況で、「ここ数年は販売台数が横ばいだったが、2012年は約197,000台まで成長した。エプソンの製品が市場を牽引したと自負しており、18年連続でトップシェアを達成している」(中野氏)。
プロジェクタを導入するユーザー層のセグメントでは、特に教育現場(文教向け、電子黒板との連携を含む)と、ローエンドモデル領域の成長が大きいという。この2つのセグメントをエプソンが重視するのは当然として、さらに「高光束」と「ビジネスインタラクティブ」の分野にも注力する。
高光束とは、主にホールや大会議室といった大規模な室内へ導入する、輝度が1万ルーメンクラスの明るいプロジェクタを指す。この分野は他社の独占に近い状況だったが、エプソンの「Z」シリーズが大きな伸びを見せており、同ジャンルの下位クラス「G」シリーズと合わせて、2013年では20%のシェアを目指すとした。「エプソンにとって唯一の未開拓マーケットだったが、がんばって伸ばしていきたい」(中野氏)。
ビジネスインタラクティブとは、プロジェクタで投影している画面にデジタルペンなどで書き込むと、PC側のデータもその通りに更新されるような機能だ。また、プロジェクタで投影した「白画面」を、ホワイトボードとして使う機能もある。こうした機能を持つプロジェクタは、文教向けとしては多くあるものの、ビジネス向けという位置付けではエプソンだけとした。大学への導入が増えているとのことで、エプソンのビジネスプロジェクタは「文教向け」としても主戦力となる。
その文教向けだが、文科省の「教材整備指針」において、小学校/中学校/高校のすべての普通教室で電子黒板の整備が掲げられている。成長率としては150%を見込んでおり、期待できる市場を確実に伸ばしていくとした。
続いて話題はローエンドモデルとホームシアターモデルへ。「ローエンドとはいっても、新モデルの『EH-TW410』は明るさが2,800ルーメンあり、4~5年前のハイエンドモデルに相当する。そういうスペックを持った製品を安く提供できるようになった。このクラスのプロジェクタはビジネス用途だけでなく、家庭で映画を観たりゲームをしたりといった使い方もしていただいている」(中野氏)。
ホームシアターモデルの国内市場は、だいたい17,000台で推移。エプソンはシェアを落としてきたが、2012年は上昇に転じ、53%と過半数を取るにいたった。各メディアなどが手がけるアワードも多く受賞しており、製品としての価値をユーザーにアピールしていく考えだ。
また、今回の新モデルとともに、注力する市場をセグメント化。「4K」ハイエンド層、ホームシアターファン/ヘビーユーザー、ホームシアターファン/ミドルユーザー、コストコンシャス/ライトユーザーというものだ。このうち「4K」については、エプソンのプロジェクタはまだ投入されていないが、それ以外の層には幅広く製品を提供していく。「市場の開拓が最大のテーマ」(中野氏)として、上位モデルの拡充はもちろん、フルHD(1080p)対応で最安100,000円以下のモデルをそろえた。
今回の新モデルについての販売戦略は、エプソン販売 VPMD部長の柳田貴之氏から説明があった。家電量販店やWeb通販といった販売チャンネルのほか、ビジネスプロジェクタは販売パートナー経由、ホームシアタープロジェクタはAV専門店での販売に力を入れるという。AV専門店に関しては、ホームシアタープロジェクタの設置やセッティングまで含めた、トータルな導入サポートを提供できる点が強みとした。
今後1年間の販売台数として、ビジネスプロジェクタは50,000台、ホームシアタープロジェクタは7,000台を見込む。
セイコーエプソン ビジュアルプロダクツ事業部長の渡辺潤一氏は「プロジェクタのワールドワイド市場動向」をプレゼンテーション。渡辺氏は新しく事業部長に就任した人物で、「世界のプロジェクタ市場は、年間約800万台の規模で推移している。エプソンは年々シェアを伸ばし、2012年度は世界シェアが26%と、12年連続で世界シェアトップを達成できた。自分がプロジェクタ事業に携わった14年前は、エプソンの世界シェアは10%強だったので、この14年で大きくシェアを伸ばしている。
今後のプロジェクタ市場は、主要国での景気回復、新興国のさらなる需要の伸びによって、2016年には900万台以上の市場規模を見込んでいる。その中で、魅力的な製品を永続的に投入することで、多くのユーザーに使っていただけるように、プロジェクタ市場の拡大を目指す」と述べた。