東京工業大学(東工大)とオムロン、オムロンソーシアルソリューションズの3者は8月7日、社会インフラ(橋梁)の劣化進行の監視や地震などによる突発的な損傷を検出する新たなセンシング技術や、データ分析技術や情報提供技術をもとにしたモニタリング手法の共同研究を開始したことを発表した。

橋やトンネルといった社会インフラの多くが1960年代の高度成長期に整備され、耐用年数とされる50年を越え、国土交通省の試算では、建設後50年以上経過した社会インフラの割合は、2012年3月と、その10年後、20年後では、例えば道路橋では約16%→約40%→約65%と急速に進むことが見込まれている。

社会インフラの高齢化(建設後50年以上を経過)の割合推移(出典:国土交通省 平成25年3月21日「社会資本の維持管理・更新に関し当面講ずべき措置」)

こうした老朽化する社会インフラの維持管理を効率的に実行し、安全性の確保やLCC(ライフサイクルコスト)の適正化を図ることが必要だが、限られた予算や人員などの問題から、点検と点検の間の安全性の確保や現状の構造物の性能・挙動の確認、地震や台風などによる突発的な損傷の検出、原因究明や将来の損傷劣化予測などを円滑に行っていくための新技術の開発が求められている。

今回の共同研究は、2013年6月1日から2014年5月31日までの期間、橋梁の使用環境・動態・挙動を捕捉・分析し、劣化進行監視・限界状態防止を図ることを目的とした、新しいセンサリング手法、モニタリング手法を開発を目指し、東工大 大学院理工学研究科 土木工学専攻の佐々木栄一 准教授が共同研究院として共同研究講座「社会インフラのセンシング・ソリューション研究講座」を開講する形で行われる。

具体的な内容としては、さまざまな環境で構造モニタリングを可能とする、先端的なセンサおよび無線センサネットワークの開発、先鋭的なデータ分析技術の導入により、最適なセンシングの「組み合わせ」×「場所」×「情報提供」に基づく、実用的なモニタリングシステムを実現することを目指し、橋梁の使用環境に関する情報や挙動、設計値との比較などから現状の劣化進行状況を把握し、補修が必要なタイミングを知らせることで、安全性の確保とLCCの低減を支援する「監視(劣化進行状況)」と、地震、台風などの突発的な事象に対し、橋梁がどれだけ損傷を受けたかを把握し、迅速な復旧を支援する「検知(突発的な損傷)」に向けたセンサ技術、データ収集技術、データ分析技術、実証実験、情報提供技術などの研究が進められる予定。

最終的には、東工大が保有する「構造工学・地震工学・維持管理工学」に基づく「データ分析技術」とオムロングループが保有する「センシング技術」「無線ネットワーク技術」をかけ合わせ、オムロンソーシアルソリューションズが点検の効率化並びにLCCの最適化を目的とした社会インフラの老朽化関連事業として、フィールドでの実証実験を行い、2015年度中の実用化を目指すとしている。

今回の共同研究で得られる成果のイメージ