大阪市立大学は7月23日、光によってらせんを形成する、フォトクロミック化合物「ジアリールエテン」で構成される微小な有機結晶を発見したと発表した。

成果は、同大 大学院工学研究科 化学生物系専攻の小畠誠也 教授らの研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、独標準時間7月19日付けで独化学学術雑誌「Angewandte Chemie International Edition」に掲載された。

小畠教授らは2007年にジアリールエテン結晶の光照射による可逆的な結晶形状変形および屈曲を報告済みで、それ以降、さまざまなフォトクロミック化合物の結晶の、「フォトメカニカル効果」の研究を進めてきた。フォトメカニカル効果とは、今回のように光によって分子構造が変化して、その結果として結晶形状が変化するような、光によって駆動する現象のことをいう。

今回発見された、光を当てるとらせんを形成するある種のジアリールエテン誘導体結晶は、紫外光と可視光を交互に当てることによって、らせん形成および元の結晶へと可逆的に変化するというもので、30回以上の繰り返しが可能であることも確認されている(画像1)。

らせんの向きは左巻きと右巻きの両方が存在しており(画像2)、らせんの向きは光照射される結晶の面によって変わることが明らかだ。人間の左手と右手のようなキラリティ(対掌性)が結晶自身に存在しないにも関わらず、左巻きと右巻きというキラリティ(対掌性)を作り出すことに成功したのである。

画像1。ジアリールエテン1a結晶が紫外光(UV)と可視光(Vis.)によって可逆にねじれを形成する様子

画像2。ねじれの定義。実際の結晶では紫外光照射される結晶面によって左巻きらせんか右巻きらせんが決まる

フォトメカニカル材料は、電気配線・回路が不必要であり、非接触かつ遠隔操作できるため非常に注目を集めている。今回発見された有機結晶は髪の毛の1/10程度の大きさであり、毛細血管の中も動き回ることができる大きさだ。光可逆的らせん形成は、微小な機械の部品としてドリルやスクリューのような役割を果たす可能性が考えられ、小型医療機器などの新しい可能性が現れてきたとしている。