2013年8月末に控えるOEMパートナーに対するWindows 8.1 RTM(Release To Manufacturing version:製造工程版)版の提供を控え、鋭意開発中なのか同OSに関する話は漏れ聞こえてこないが、このような状況下でもMicrosoftに関する話題は尽きない。そこで今週はMicrosoft Researchが開催したイベント「Faculty Summit 2013」で講演を行ったBill Gates氏の話題を筆頭に、各種発表されたニュースを個別にピックアップし、ご紹介する。

Gates氏久々の登場 - Microsoft Researchで講演

最新のWindows OS(オペレーティングシステム)をかいま見ることができるWindows 8.1の新機能を連ねればわかるように、コンピューターは常に最新技術を投入することが重要である。特にデバイスのムーブメントがデスクトップ/ノート型からタブレットに移り変わり、ビッグデータによる大規模な情報処理分野が台頭しつつある現在、新たなインスピレーションによって生まれる新技術が必要なのは筆者が改めて述べるまでもない。

大手IT企業の大半は研究所を所有しているのは誰もが知るところだが、例えばIBMは世界に八カ所の基礎研究所を設置し、過去にはHDD(ハードディスクドライブ)や仮想マシンといった現在のコンピューターに欠かせない技術を開発してきた。Microsoftも同様にMicrosoft Researchという研究機関を所有しているが、先頃行われた「Faculty Summit 2013」のキーノートには、Microsoft会長兼ビル&メリンダ・ゲイツ財団共同会長であるBill Gates(ビル・ゲイツ)氏が登場。コンピューターサイエンスの重要性を語っている。

キーノートのタイトルは「Innovation & Opportunity - The Contribution of Computing to Improving Our World(革新と機会 - 世界を改善するためにできるコンピューターの貢献)」というものだが、その中で同氏は、「我々が今後5~10年間で作りあげる進歩は信じられないものになるだろう。現在は"コンピューターサイエンスの黄金時代"である」と研究機関の重要性を強くアピール。現状を踏まえつつも、参加者が皆研究関係者であることが大きいだろう。

また、Gates氏は「当初のMicrosoftは、無限のコンピューターリソースとストレージに対して、ソフトウェアの新たな可能性を夢見るところから始まった。そしてその夢は現実のものとなった」と述べつつ、「20億もの人々はコンピューターサイエンスとソフトウェアの進歩に依存している」とOfficeスイートなどで構成された現在のビジネスシーンと、コンピューターテクノロジーの現状を簡潔に語っている(図01)。

図01 Faculty Summit 2013の壇上で語るBill Gates氏(動画より)

その後Gates氏は、同研究所の統括責任者であるRichard Rashid(リチャード・ラシッド)氏と対談し、質疑応答に答えている。その中から興味深いものをいくつか取り上げよう。「ウェアラブル技術は教室でどのような役割を果たすのか?」という質問に対してGates氏は、数秒間ほど考えた後「あなたがカンニングするのに役立つはずだ」と冗談を交えつつ、「教育分野に関しては直接的な影響は少ない」ということを認めている。

「知的財産の問題はこれまで(ビル&メリンダ・ゲイツ)財団の仕事を妨げたか? また、ソフトウェアを販売するMicrosoftの様な企業は、オープンソースモデルと競合にあるのでは?」という質問には、「そんな恐ろしいもの」という更に冗談を挟みつつも、「フリーソフトウェアの利点は、すぐにアイディアを広範囲に広められる」と回答。財団については割愛するが、知的財産権について同氏は「複雑なシステムになってしまった。しかし、それを取り払うことが世界をより裕福にする」と述べている(図02)。

図02 Richard Rashid氏との対談も行われた(動画より)

今回のキーノートは、Microsoft ResearchのWebサイトに動画がアップロードされ、英文ながらもスピーチ内容をテキストで読むことが可能だ。また、Microsoftの公式ブログ「The Official Microsoft Blog」の記事や、「Inside Microsoft Research」の記事でも紹介されているので、興味を持たれた方は併読することをお勧めしたい。