独立行政法人 情報通信研究機構(NICT)は17日、自律飛行する「小型無人飛行機」とソーラーパネル・蓄電池一体型の持ち運び可能な「無線基地局」(ソーラー可搬基地局)を組み合わせた、長距離の無線中継通信実験に成功したと発表した。このシステムが実用化した場合、災害時に孤立した地域でも商用電源なしで一斉緊急通報や安否確認などの通信サービスが利用可能となる見込みだ。

同機構では、東日本大震災で通信が途絶した地域があったことを踏まえ、災害に強いネットワークの研究開発を行なってきた。その一環として、災害時の通信集中でネットワークの切断があっても、通信機能を最大限維持する「耐災害ワイヤレスメッシュネットワーク」の技術実証を行うテストベッド設備を整備。小型無人飛行機やソーラー可搬基地局がこの設備の一部として開発され、2013年3月末には公開デモンストレーションを行なっている

今回の通信実験では、災害時などで迅速な通信手段が必要な場合を想定し、小型無人飛行機と500g以下のソーラー可搬基地局を組み合わせ実験を行った。雨の日を含む最高高度500mまでの小型無人飛行機による無線中継実験を計30回実施し、中継用飛行機と最大約15km離れた地上局との間で通信が可能であり、災害による孤立地域内でも、発動発電機などによる無線中継システムとソーラー可搬基地局の組み合わせで、ソーラー可搬基地局周辺に無線LANの通信環境を提供できることを確認した。

長距離通信実験における無人飛行機と地上局の位置関係

ソーラー可搬基地局は「耐災害メッシュネットワーク」の機能を備えているため、災害時にインターネットへの接続が不可能な状況にあっても、孤立地域(無人飛行機経由)を含めた地域内での一斉緊急通報や相互の安否確認、メール交換、位置情報共有などのサービスが利用できる。

同機構によると、無線中継用無人飛行機の飛行法などにより、最大45km程度まで離れた地上局とも通信できる可能性があるという。今後、より実際の災害を想定した実証実験を積み重ね、実用化につなげる方針だ。

小型無人飛行機に搭載した無線中継装置と地上局