明らかになったWindows 8.1のハードウェア認定要件
Windows 8.1に関する話題として取り上げたいのが、ハードウェア認定要件だ。以前は「Windowsロゴプログラム」と称していた同要件は、Windows OSが正しく動作するハードウェアおよびデバイスドライバーの構成を定めるもので、OSの安定動作やハードウェアベンダーが発売するコンピューターの構成に欠かせない情報である。
エンドユーザーとしては、あまり意味がないかもしれない。だが、同要件には、Windows OSが動作するシステム要件やデバイス要件など、複数の要件で構成されているため、自作PCユーザーやコンピューターのリプレースを予定しているユーザーにも興味深い情報となるはずだ。
Microsoftが提供しているニュースレターの一つ「Windows Certification Newsletter」の6月4日版(現地時間)では、Windows 8.1のハードウェア認定要件が「Windows Next Hardware Certification Requirements」として公開されたことを報じている。これらの情報は5月30日(現地時間)の時点で確定され、テクニカルドキュメントライセンス契約に同意すれば、誰でもWeb上で閲覧可能。今回は同ドキュメントから気になるポイントのみ抜粋し、報告する(図14)。
基本的には「Windows 8のハードウェア認定要件」をベースにしており、変更点を「Windows Next System Update」として冒頭でまとめていた。まず筆頭にあげているのがバスコントローラー。低速なデバイスをマザーボードに接続するシリアルバスであるI2C(Inter-Integrated Circuit:アイ・スクエアド・シー)と、シリアル/パラレル信号を変換するUART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)が必要としている。このあたりは多くのマザーボードが実装しているため、あまり大きな問題とはならないだろう。
同ドキュメントでは、続いて指紋認証リーダーについて触れている。Windows 8.1では、指紋認証リーダーをあらかじめサポート。対応するデバイスを備えている場合はそのまま利用可能になると思われる。GPUはWDDM(Windows Display Driver Model)1.3に対応したGPUが必要。WDDM 1.3では電源管理とパフォーマンスが向上すると言われているが、現時点で詳細は不明だ。
ストレージに関しては、SATAハイブリッドHDDのサポートを明らかにしている。ハイブリッドHDDは、フラッシュメモリをキャッシュ領域として利用可能にしたストレージだが、Windows 8.1ではハイブリッドHDD(および類似ストレージ)を当初からサポートするという。NFC(Near Field Communication:近接場型無線通信)のサポートも新機能の一つ。既にWindows 8.1 Enterpriseの特徴として紹介されているが、NFCコントローラーおよびデバイスホストを標準化し、ネイティブ対応を明らかにしている。
精密タッチパッドのサポートも興味深い。マウスの代替デバイスとして利用されるようになったタッチパッドだが、より精度の高いタッチパッドをOSレベルでサポートするという。ただし、必要となるのはARMアーキテクチャのコンピューター向けOSであるWindows RTのみで、x86/x64アーキテクチャ向けWindows 8.1はオプション扱いだ。ハードウェア面では無線LANデバイスの要件として802.11acを追加している。
以上が、今回追加・変更されたハードウェア認定要件だ。もちろんこれらの要件をすべて満たしたコンピューターでなければWindows 8.1が動作しない、という訳ではない。例えば既にハイブリッドHDDを搭載したコンピューターや指紋認証システムを備えるデバイスを利用中の場合は、OSレベルでネイティブにサポートされるということだ。
同ドキュメントでは、2014年1月に加わる予定の要件も合わせて説明されている。ビデオチャットの利用環境を向上させるため、内蔵スピーカーやマイクに新しい通信忠実性(InAir)を要件に追加。その一方でConnected Standbyに関する機能に関するシステム要件も加わっている。同機能はIntelの新マイクロアーキテクチャであるHaswell(ハズウェル)からサポートされ、コンピューターがスリープモードの際も30秒に一回の通信が可能になる。つまり、ユーザーは省電力状態でも、すぐに最新の情報を取得できるというものだ。
「Connected Standby Power」と題したシステム要件では、ディスプレイのネイティブな解像度で少なくとも6時間のビデオ再生を可能にするシステムと、OSレベルでステータスの取得が可能な冷却ファンが必要としている。前述のとおり、これはWindows 8.1以降のOSで可能になるハードウェアシステムだが、少し先の未来を垣間(かいま)見たようだ。なお、この他にハードウェア認定要件として、BluetoothやWebカメラのサポート強化もリストアップ。2015年にはTPM(Trusted Platform Module)のサポート強化を予定しているという。
阿久津良和(Cactus)