富士キメラ総研は4月26日、2012年12月から2013年3月にかけて、ICT(情報通信技術)の発展によって成長期を迎え、2012年度は高成長を見せたクラウドコンピューティングサービスの市場動向と参入企業の戦略分析を行い、その5年後の市場を予測する調査を行い、その調査結果を「2013 クラウドコンピューティングサービスの現状と将来展望」発表した。

クラウドコンピューティングサービスの売上見込みと5年度の売上予測 資料:富士キメラ総研

調査は、クラウドコンピューティングサービスをパブリック(汎用型)、プライベート(専用型)、共同利用の3つに分けて、PaaS/IaaSの2タイプ、DaaS、SaaS、そしてプライベートクラウドの合計6分野の市場と、クラウド事業23社(コンピュータベンダー4社、SIベンダー8社、通信キャリア5社、インターネットシステム(以下、ISP)プロバイダー2社、外資クラウドベンダー4社)を対象に個別の分析を行ったもの。

本調査では、クラウドコンピューティングサービスの市場のうち、「PaaS/IaaS(オートセルフ型」「PaaS/IaaS(オーダーメイド型)」「DaaS(Desktop-as-a-Service)」「SaaS(Software as a Service)」「共同利用」のサービスを紹介している。

市場が急拡大しているPaaS/IaaSのサービス市場は、2012年度635億円から2017年度1,435億円まで成長が予測され、このサービスは、オーダーメイド型とオートセルフ型に分けられ、国内外合わせて60社程度のベンダーが国内市場に参入。

DaaSは、端末のデスクトップ環境をネットワーク経由でサーバに集約し必要に応じて端末に提供するサービスで、近年、在宅勤務の導入も一般化に近づき、全社的なセキュリティ対策として導入する企業も増加するなど市場は拡大。また、大震災を背景としてワークスタイルとして在宅勤務が増加するなど勤務形態の多様化が進み需要が拡大。2010年頃から市場が立ち上がり、2011年には大手通信事業者の大規模導入や製造業における導入が多くみられ、成長期へと移行しつつある。

SaaSは、特定および不特定ユーザーが必要とするアプリケーションソフトをネットワーク経由で提供するサービスで、PaaS/IaaSを行っているクラウドベンダーは、SaaSを同サービスの付加価値事業として位置付けているベンダーも多く、PaaS/IaaS上にアプリケーションを乗せてサービスを行うベンダーが増加している。SaaS基盤として、PaaS/IaaSを利用することで、「設備投資の抑制(運用効率の向上)」「サービス準備期間の短縮」などが図られるメリットがある。また、基盤を統一することで今後はアプリケーション間の連携を行うようなサービス市場も拡大していくと推測される。

東日本大震災以降、BCP/DRの観点からSaaSに対する評価が高まり、市場は拡大を続けている。2012年度のSaaS市場は2,226億円で、17年度には3,450億円まで拡大すると推測される。全体的な傾向としては、メール/グループウェアなど汎用性が特に高いサービスは「Office365」「Google Apps」などの一部サービスに集約されており、その他のSaaSベンダーは、業種に特化したニッチな領域でサービスを拡大している。

共同利用は、同じような業務システムを構築・利用している同士が、システムの共通化を図り、ひとつのシステムを複数の企業で利用するサービスで、利用者には、金融業および官公庁/自治体、医療機関、教育機関があげられ、この内、地方銀行を中心とする金融業向けが、全体の90%以上を占めている。