例えば固定電話から携帯電話への発信で使われる選択中継サービス(いわゆるマイラインのようなサービス)でPHSへの発信に非対応の場合、070-C番号からPHSと携帯電話を識別する必要がある。これにともない、PBXやACRへの対応も図る必要がある。また、0120などの着信課金サービス、0570の統一番号サービスなども、070番号の携帯電話からも利用できるように改修が必要な場合もある。

現状の課題としては、前述の通り、PHSへの発信かどうかを確認するよう、利用者への周知も含めた対策が必要だ。そのため、総務省では070番号開放へのシステム改修が間に合わない場合、090-0番号の開放も視野に入れている。この場合、番号が「0900」となり、着信課金サービスの「0800」と誤解を招きかねない点などが問題視されているほか、090-0開放でも1,000万番号しか追加されないため、番号枯渇を1年ほど延命する程度の効果しかないとみられている。そのため、基本は070番号の開放を目指す方針となっている。

もう1つの課題が、携帯電話とPHS間のMNPだ。携帯電話とPHSでは、音声、データの基本サービスが共通しており、ウィルコムを含む携帯各社ともMNP導入に賛同する方針を示している。MNPによって事業者間の競争が強化され、携帯電話とPHSで特に差がある通話料金の格差縮小を期待する声もあり、MNP導入には一定のメリットがあるとの認識だ。

これに対しては、やはり070番号開放と同じ課題が残されている。単純に070-Cでの見極めができなくなるため、呼び出し音などでの識別、事業者コードなどでの識別といった対応が必要となる。PBXやACRでの対応も同様だ。

さらに、携帯各社ではSMSの相互接続が可能になっているが、これにPHSは入っておらず、SMSの相互接続ができない。携帯電話・PHS間のMNP導入に際しては、SMSの相互接続が可能になることが求められている。

MNPに関してはまだ検討段階だが、2014年度中の導入を目指している。今後「070番号の携帯電話、090番号のPHS」が登場する可能性もある。

いずれにしても、今回の070番号の開放で、7,000万番号が利用可能になり、携帯電話番号の逼迫は当面回避されることになる。単純な携帯電話としての番号利用はそうそう増加しないだろうが、「携帯電話回線を組み込んだ機器」すべてに番号を割り当てている現状では、M2Mの拡大も含めて、番号利用は今後も拡大することが見込まれる。

国際的には、M2Mなど、発着信が不要な機器に対しては別の識別子を割り当てる検討もされており、総務省ではそうした方向性も視野に入れ、今後の番号政策を行っていく方針だ。