関係者によって温度差はあるが、もともと数年単位の計画だった工事進捗が、わずか2年という期間に短縮されたのは、この会談で都側の協力体制が強化されたため、と見る向きもある。ただ、会談の内容とエリア化はあまり関係ないというのが関係者の共通した見解だ。いずれにしても、JMCIAや地下鉄側が数年にわたって協議、検証した結果、2011年からトンネル内のエリア化が動き始めた。もちろん、費用は携帯事業者側が負担することも当初から決まっていたことだ。

基本的にエリア化の工事は、終電後から始発までの3時間程度で行うしかなく、地下鉄側の通常の保守工事などと調整をしながら進められた。東京メトロで最初に開通したのは、2012年3月30日の南北線本駒込駅~赤羽岩淵駅間で、その後順次開通していった。有楽町線は工事との調整の関係でエリア化が遅くなったが、特にエリア化の工事自体に問題はなく、順調に開通していったようだ。都営地下鉄についても、残る大江戸線落合南長崎駅~光が丘駅区間がエリア化すれば、全線開通となる。

トンネル内がエリア化したことで、災害時などの通信手段が確保できるようになった。通常時でもWebサイトやSNSなど、データ通信による携帯サービスが利用できるようになったことで、顧客サービスが向上する。地下鉄側には、設備設置による使用料収入も発生するメリットもある。

ちなみに、地下鉄トンネル内での通信方式は各社が決めており、例えばKDDIは全LTE化を進めたが、逆にイー・アクセスは3Gで、今後LTE化を検討する、といった具合に事業者によって方式は異なっている。今回、筆者がKDDIのAndroid端末でLTEのスピードテストをしたところ、下りで20Mbpsを超えており、地上と変わらない感覚で通信することができた。

スピードテストを試しているところ

結果は下り28Mbpsと快適な速度だった