日本AMDは12月8日、同社CPUのオーバークロックに挑戦するイベント「AMD OVERCLOCK CHALLENGE 2012」を東京・秋葉原で開催した。

「AMD OVERCLOCK CHALLENGE 2012」のイベント会場は東京・秋葉原の「アキバナビスペース」

イベントでは、プロのオーバークロッカーであり、AMDのテクニカルマーケティングも担当するSami Makinen氏が"Vishera"こと第2世代AMD FXシリーズ「AMD FX 8350」(定格:4GHz)のオーバークロックに挑戦し、液体窒素を使った冷却で8,367.4MHzを達成。

また、同じくAMDに所属するプロのオーバークロッカー、Roger Tolppola氏が、10月23日に発表したAMD AシリーズAPU「A10-5800K」(定格:3.8GHz)のオーバークロックに挑み、開始早々に7,875.55MHzのワールドレコードを記録し、会場を沸かせた。

なお、今回ワールドレコード挑戦のために使われた冷却方法は液体窒素。本イベント用に100リットルの液体窒素が用意されたという。

2011年に、AMD FXシリーズのオーバークロックで8.429GHzの世界記録を達成したSami Makinen氏(写真右)がオーバークロックに挑戦

開始時刻の13時頃には既に多くの人が来場し、立ち見も出る盛況ぶりだった

オーバークロックのワールドレコード挑戦と並行して、日本AMDによる「超初心者向けオーバークロック講座」や、マザーボードメーカー各社によるオーバークロックの実演といったセッションも進行。

各メーカー45分の持ち時間で、マザーボードの紹介やオーバークロックのメリットなどを解説したほか、自社のグッズやパーツを来場者に提供する「じゃんけん大会」も行われ、13時から18時30分まで、約5時間半にわたって行われたイベントは、盛況のうちに幕を閉じた。

各メーカーのセッションでは、恒例(?)のじゃんけん大会も行われ、オリジナルグッズやPCパーツがプレゼントされた

会場内には数台のモニタが設けられ、全体の様子がわかるようになっていた

■登壇スケジュール
13:30~14:00 超初心者向けオーバークロック講座(日本AMD)
14:00~14:45 ASRock(マスタードシード)
14:00~15:45 GIGABYTE(日本ギガバイト)
15:00~16:45 ASUS(ASUS JAPAN)
16:00~17:45 MSI(エムエスアイコンピュータージャパン)


「AMD FX 8350」および「A10-5800K」のオーバークロック、その結果は?

Sami Makinen氏が挑戦した「AMD FX 8350」のオーバークロックでは8,367MHzを記録した。

また、「CINEBENCH R11.5」で12.87を記録した。これはシングルコンシューマCPUでトップの可能性があるという。「3D Mark 11」では2837のスコアを達成し、これは同CPUで第2位の数字となる。

AMDのテクニカルマーケティングを担当するプロのオーバークロッカー、Sami Makinen氏。フィンランド在住し、今回イベントのために初来日した

CPUの冷却は液体窒素。約6時間程行われたイベントで、ほぼ-180度以上に保たれていた

オーバークロックしたAMD FX 8350の「CPU-Z」画面。8,367.4MHzを記録した

イベント終了後、液体窒素で冷やし続けたCPU周辺部は凍りついていた

一方、Roger Tolppola氏による「A10-5800K」のオーバークロックは、イベント開始後1時間足らずで7,875.55MHzを達成。「A10-5800K」CPUのワールドレコードを記録した。

そこから、CPUのヒートスプレッダ部分を外して中央のコア部分を直に冷やす方法(「殻割り」と呼ばれる)を試し、さらに上の数字を目指すという話もあったが、殻割りがうまくいかず、最終的には通常の状態で先に達成したワールドレコードを塗り替える7,905MHzという記録を打ち立てて終了した。

Roger Tolppola氏。Sami Makinen氏と同じチームという

結露防止のため、容器にキッチンペーパーを巻き、マザーボードには粘土を張り込んでいる

液体窒素をこまめに注入。沸点は約-196度で入れた瞬間から激しく沸騰する

結露と冷やし過ぎにより、一度マザーボードを温め、結露対策を最装備する場面も

殻割りの図。右側が通常売られているままのCPU。左側がヒートスプレッダを剥いだ状態(殻割りした状態)のもの


超初心者向けオーバークロック講座(日本AMD)

日本AMD マーケティング本部 コンシューママーケティング部 マーケティングスペシャリスト井戸川淳氏

日本AMDによる「超初心者向けオーバークロック講座」では、日本AMD マーケティング本部 コンシューママーケティング部 マーケティングスペシャリストの井戸川淳氏がプレゼンテーションした。"超初心者向け"と銘打たれたプレゼンテーションでは、オーバークロックの概念や基本的なクロックアップ方法が実演を交えて紹介された。

井戸川氏はオーバークロックについて「CPUの周波数を意図的に定格以上に上げるもの。人間でいえば基礎体力がないのに無理やり運動させている状態で、パーツに電気的な負荷を無理にかけている状態」と説明。オーバークロックは、CPUのベースクロックと倍率、そしてOCに必要な電圧を調整しながら周波数を上げていく。

するとCPUが高い熱を持つので、より効率的な冷却が必要となる。上級者になると液体窒素、ドライアイス、エタノールなどを使い"極冷"するが、初心者では空冷もしくは水冷で行うのが良いという。

オーバークロックの方法はBIOSから数字を設定する方法と、OS上のソフトウェア上で設定する方法の2通りがあるが、BIOSからハードウェアの数字を設定してしまうと、うまくいかずに再起動した場合でも異常値が残ってしまう。このため、データが完全にリセットされるソフトウェアの方がエラーが起こりにくいので、これからオーバークロックを志すユーザーは、ソフトウェアでの制御を推奨すると、井戸川氏は語った。

なお、"CPUの周波数を意図的に定格以上に上げる"性質上、オーバークロックするとパーツの保証対象外となるため注意が必要だという。

日本AMDのセッションの様子。オーバークロックとは、「一般の車をレーシングカーへ改造するようなイメージ」とし、PCの挙動を見ながら各数字を調整する、井戸川氏は「非常に地味、忍耐力を要求される作業」と笑いを誘った

ASRock(マスタードシード)

ASRockではマスタードシード マーケティング部の高橋裕次氏が登壇。同社マザーボードの製品紹介に加え、高フレームレートでのゲーム配信などでメリットがあると説明した。

セッションでは実際にPCゲーム「ファンタシースターオンライン2」ベンチマークでのオーバークロックデモなどを行い、オーバークロックによりフレームレートが上がる様子を実演した。

マスタードシード マーケティング部の高橋裕次氏。手にするのはじゃんけん大会の景品となった同社ATXマザーボード「FM2A75 Pro4」

ASRockマザーボードのハイエンド機は、マルチフェーズやマルチGPUなどが特徴

マスタードシードのセッションの様子。同社マザーボードハイエンド機の特徴に加え、AMD FXシリーズを選ぶメリットとして、コストパフォーマンスやチップセットによる拡張、古いパーツの流用などを挙げた

GIGABYTE(日本ギガバイト)

日本ギガバイトの営業部課長の岩政裕之氏(左)と、台湾GIGA-BYTE TECHNOLOGY Product Planning Division Product Managerの中村廣志氏(右)

日本ギガバイトは、オーバークロックのメリットや、同社マザーボード付属のBIOS設定ソフトウェア「EasyTune6」のデモを紹介。同社営業部課長の岩政裕之氏と、台湾のGIGA-BYTE TECHNOLOGY Product Planning Division Product Managerの中村廣志氏がプレゼンテーションした。

岩政氏は、同社のマザーボードの特徴は「高品質設計」とし、通常は「自己責任」とされているオーバークロックでのマザーボード破損の修理に対応する「OC修理保証」や、「EasyTune6」で数字ゲージを調整するだけでオーバークロックできる様子などを紹介した。

日本ギガバイトのセッションの様子。海抜3,650mにあるRMAセンターを、文字通りの意味で「世界最高」と紹介するなど、小ネタを多く取り入れたセッションとなった。じゃんけん大会では同社オリジナルバッグやロゴ入りフリースをプレゼント

ASUS(ASUS JAPAN)

ASUS日本市場担当広報の岩崎晋也氏

ASUSでは、日本市場担当広報の岩崎晋也氏が同社AMDマザーボードのラインナップをオーバークロック用途の特徴とともに紹介。

自動で各パーツの電力管理を行う専用チップ「EPU」や、CPUクロック設定の処理を行う「TPU」で、手軽にオーバークロックできる同社BIOS設定ソフトウェア「EZ Mode」などを紹介した。

丁度良いケースが無く、「家の台所から発掘した」自作ケースも注目を集めた。「パーツを好きな位置に取り付けられ、脚付きで折りたためるのも特徴」という

ASUSのセッションの様子。マザーボードのラインナップと、それぞれの特徴を説明し、同社BIOS設定ソフトウェア「EZ Mode」を使ったデモを行ったが、"PCを運ぶ最中にOSが起動しなくなった"とのことで、OSを使用したオーバークロックは断念。最後に「ASUSの読み方」についてもコメント。9月28日に告知を出した"エイスース"の読みは、世界市場を視野に入れたものという

MSI(エムエスアイコンピュータージャパン)

各メーカーによるセッションの最後を飾ったMSIは、プロの日本人オーバークロッカー、Gyrock氏によるCPU・GPUのオーバークロックを実演。

同社営業部コンポーネント営業1課 課長の三好正行氏とともに、「3D Mark 11」のハイスコアを狙うデモンストレーションを行い、実際に液体窒素をセットする様子や、実際のオーバークロックのトライ&エラーの様子を紹介した。結果、登壇時間や規定のPCスペックをオーバーしつつも、「AMD FX-8350」を使った「3D Mark 11」スコアで14312を達成した。

MSI営業部コンポーネント営業1課 課長の三好正行氏

日本人オーバークロッカーとして著名なGyrock氏を招いての本格的なオーバークロックを実演した

エムエスアイコンピュータージャパンのセッションの様子。Gyrock氏によるオーバークロックの実演がメインとなり、オーバークロックを行うイベントでもあまり見る機会のない液体窒素をセットする様子も見ることができた。なお、本セッションの最後に、主催である日本AMDから、じゃんけん大会の賞品として「A10-5800K」および「AMD FX 8350」が各1名にプレゼントされた