ソニーでは、写真共有サービスが利用できるスマートフォン向けアプリケーション「Post shot (ポストショット)」を11月中旬からGoogle Playにて提供開始している。同アプリでは、家族、恋人、親しい友達と写真で「今」を共有することができる。バージョン2.3.3 以上のAndroid端末で利用可能だ。本稿では基本的な使い方を紹介するとともに、開発者にインタビュー取材を行った模様をお伝えしていく。

今回話をうかがった、ソニー UX・商品戦略本部の橋本弘和氏

Post shotの利用方法はいたって簡単。事前にメールアドレスやパスワードなどを登録する必要は一切ない。お互いの端末にアプリをインストールしたら、「せーの!」で同時に友達登録ボタンをタップするだけで利用できる。

家族、恋人、親しい友だちと写真で「今」を共有するコミュニケーションアプリ、Post shot。Google Playから無料でダウンロード可能だ

ただし登録時、両端末が同じ場所に存在すること(2人が同じ場所にいること)が必須条件となる。つまり本当に身近な人との深いコミュニケーションで利用してもらうことを前提としている。共有アルバムは最大20まで作成可能だ。同じ相手と20のアルバムを作成することも、20人の友人とアルバムを作成することもできる。写真には、お互いが最大100文字までのコメントをつけられる。

利用イメージ。写真は直接撮影するか、ギャラリーから選択する。コメントをつけたり、ハートマークをタップして「賛同」の気持ちを表現したりできる

TwitterやFacebookなど、一般的なSNSサービスでは写真がクラウド上に保存されてしまう。しかし、Post shotの共有アルバムで使用した写真は、お互いの端末にのみ保存される仕組み。つまり、他のだれかに見られるということはなく、家族のプライベートな写真なども安心して共有することができる。メールともチャットとも一般的なSNSとも違う、新しいコミュニケーションツールといった趣きとなっている。

Post shotで大切な人とのコミュニケーションを活性化

今回、Post shotの開発を担当したソニー UX・商品戦略本部UX開発部門 A Studioプロデューサーの橋本弘和氏に話をうかがった。

11月14日にリリースを開始した本アプリ。開発の背景には、昨今のSNSの流行が関係しているという。しかし、と橋本氏は続ける。「人と感動を共有するSNSサービスは現在、Facebookに代表されるたくさんの人とつながるオープンなものが多く使われています。しかしあまりたくさんの人に伝えたくないこともあるでしょう。また、本当に大切な、身近にいる人とのコミュニケーションを活性化させるツールとなると、支持されているものはまだそれほど多くないというのが現状ではないでしょうか」。

身近な人ほど、会う時間が少ないということはままある。「うちは妻と共働きなんですが、平日は職場の同僚と会っている時間の方が長いんじゃないでしょうか。そこで、本来深いコミュニケーションをとるべき"身近な人とより密な関係を築けるようなツール"があれば良いのでは、と思ったのが開発のきっかけになりました」と橋本氏は話す。

「写真には、とてもたくさんの情報が含まれています。その人が今何をしているのか、どこにいるのか、何を食べているのかはもちろんのこと、言葉ではうまく伝えられないような想いなんかも伝えてくれるかもしれません。そこで本サービスを開始するにあたり、まずは写真の共有というところにフォーカスし、アプリケーションを構築してくことにしました」。 "機能をどこまで盛り込むか"については社内でも議論を重ねたという。機能を盛り込めば盛り込むほどUIも複雑になり、"このアプリで何をして欲しいか"という意図も伝わりづらくなってしまう。「最終的に、スマートフォンに詳しくない方でも簡単に使えて、身近な人たちと想いを共有できるアプリに仕上げました」と橋本氏は説明する。確かにPost shotは戸惑うことなく直感的に操作できる。

ソニー謹製アプリとあって、デザインがとても洗練されている。直感的に使えるUIも使い勝手が良い。無料アプリでありながら、広告が一切入らないのも嬉しいところ

想定しているユーザー層には2パターンあるという。ひとつは、子どものある夫婦(20~30代くらい)を中心とした世帯。子どもをキーに、コミュニケーションのやりとりをしてもらおうというものだ。「例えば、奥さんが家庭でお子さんの面倒を見ている。お父さんは会社で夜遅くまで働いている。そういった家庭で利用してもらえればと思います。だれかに見られてしまう心配なく安全にお子さんの写真を共有できますし、いつも遅く帰るから寝顔しか見れなかったお子さんの様子をリアルタイムで見られるのでお父さんの仕事のやる気も倍増するかも知れません。あるいはお子さんの顔を見たさに帰りが早くなる、なんてこともあるかも知れませんね」と橋本氏。Post shotなら夫婦のご両親にも、お孫さんの日々の成長記録を簡単に共有することができる。

想定しているユーザー層のもうひとつは、若いカップル。既述の通り、本アプリではお互いが写真を共有したらサーバーからはその写真が削除される仕様になっている。この仕様により、プライベートな写真が世の中に流出してしまうという危険も一切ない。「普段の会話で盛り上がれなかったところを、補うような使い方をしてもらえれば」とのことだ。

アプリ内には、ユーザーが要望を出すことのできる「ご意見箱」機能も用意されている。これまで開発部に寄せられた要望で多かったのは、「複数人のグループで利用したい」「なかなか会えない人と共有アルバムを作成したい」などだそうだ。

あえて機能とユーザエクスペリエンスを絞ってリリースしたPost shotだが、これらのユーザーの声を聞き、「基本コンセプトを大切にしつつもコミュニケーションサービスに相応しい広がりがあり、安心して毎日使いたくなる楽しい世界を丁寧に提案していく予定」だという。Post shotのこれからの展開にも注目していきたい。