東北大学は10月3日、東日本大震災前後の宮城県被災地での消化性潰瘍の発生状況を、宮城県内7つの主要病院のデータを基に集計。その結果、一般的に消化性潰瘍の原因と考えられているピロリ菌感染、薬剤性傷害などの危険要因を持たない、純粋なストレス性潰瘍と考えられる症例が前年度の13%から24%に増加し、人において心因性ストレス単独でも消化性潰瘍が発症し得ることが示されたと発表した。

成果は、東北大学病院消化器内科の飯島克則講師、菅野武医師らの研究グループによるもの。研究の詳細な内容は、近日中に学術誌「Journal of Gastroenterology」に掲載される予定だ。

胃・十二指腸潰瘍などの消化性潰瘍は、古くから不安や恐怖などの心因性ストレスとの関連が考えられてきた。しかし近年になって、消化性潰瘍の大部分は、ピロリ菌の感染、または薬剤性傷害によって生じることが明らかにされ、ストレス単独での潰瘍発症に関しては否定的な見解が多くなっていた。

ストレス単独での潰瘍発症に関しての研究が難しいのは、日常生活では人それぞれに心因性ストレスの期間、程度が異なるため、消化性潰瘍との関連を調査することが困難だからだ。

一方で大きな自然災害は地域住民に同時に広く心因性ストレスを加えるため、災害前後での消化性潰瘍の成因を調べることは、人における心因性ストレスと消化性潰瘍の関連を調べやすい貴重な機会といえる。

研究グループは、石巻赤十字病院など宮城県被災地域内の主要7病院での東日本震災後3カ月間に起きた消化性潰瘍を集計し、前年度同期間のものと比較。その結果、消化性潰瘍は前年に比べ、1.5倍に増加し、特に、ピロリ菌感染や薬剤服用などのない、純粋なストレス性潰瘍と考えられるものの割合が、前年の13%に比べ、震災後は24%に増加していることが確認された。

また、純粋なストレス性の潰瘍は、高齢者で多く見られた。この結果は、心因性ストレス単独でも消化性潰瘍を発症するということを示しており、特に高齢者では、心因性ストレスのかかる状況では、潰瘍予防への対策が必要となると考えられると、研究グループはコメントしている。