既報の通りソフトバンクは、イー・アクセスを株式交換で買収する。ソフトバンクの孫正義社長は、イー・アクセス買収の背景には「テザリングがあった」と語り、iPhone 5の登場で注目を集めたテザリング機能を実現するために、「テザリングというキーワードが経営統合を早めた」と話す。孫社長が強調したのは、iPhone 5、LTE、テザリング、そしてそれを実現する1.7GHz帯の周波数だ。
経営統合の経緯
ソフトバンクとイー・アクセスは、2000年にともにADSL事業をスタート。05年には1.7GHz帯の周波数帯新規割り当てにともなった新規参入として、両社が同時に携帯電話事業の認可を受けた。その後ソフトバンクはボーダフォンジャパンを買収し、ソフトバンクモバイルとして携帯電話事業に参入、イー・アクセスはイー・モバイルとして一から携帯電話事業を構築してきた。「インターネットが固定回線から、いずれ近い将来、モバイルの世界に移る」とみて新規参入したと孫社長。
その後07年、新たに割り当てられる2.5GHz帯の取得に向けて両社は提携。「同じようなタイミングで、同じように生まれ、激しく市場で競争しながら、あわせて強調もしてきた」のが両社だと孫社長は話す。「志を共有し、情報革命に携わってきた」(同)。
イー・アクセスは、定額制のデータ通信を実現、ポータブル無線LANルーターのPocket WiFiで人気を博すなど、特にデータ通信に注力してきた。ソフトバンクは周波数帯域の逼迫にともない、データ通信のために09年にイー・アクセスと協業。MVNOとして回線を借り受けてデータ通信サービスを提供してきた。「競争するけど協調する、というのを繰り返してきた」と孫社長は振り返る。
ただし、あくまで競合ということで常に競争し合っているため、「やや疑心暗鬼な協調関係だった」(同)ことから、提携ではなく、「根っこから協力し合おう」(同)という流れになったという。1日午後、取締役会で経営統合が承認され、両社社長が調印した。「最高のモバイルブロードバンドを提供したい。世界でも最高レベルのものを届けたいという意気込みで(固定)ブロードバンドをやってきたが、これをモバイルでも届ける」(同)というのが目標だ。……続きを読む
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