経営統合の背景にiPhone 5

「なぜ今なのか」孫社長はこのタイミングでの経営統合なのかを説明する。それがiPhone 5だ。iPhoneとして初めて通信方式としてLTEに対応。日本で使われている周波数帯では、2.1GHz帯のみのため、iPhone 5を販売するKDDIとソフトバンクは、2.1GHz帯でのLTEサービスを開始。現在両社がエリア拡大競争を続けている。

同じiPhone 5を販売するKDDIとのLTE現状比較

これに対して、イー・アクセスがLTEサービスを展開する1.7GHz帯は、国際的には1.8GHz帯として使われている周波数帯(バンド3)で、この「1.7GHz帯が鍵」(同)だ。これまで、この帯域を3Gとして使っているのはイー・アクセスぐらいだったが、「LTE以前と以降の1.7GHz帯では全然価値が違う」と孫社長。この帯域は、グローバルではLTE用として最も使われている周波数帯であり、孫社長は「世界の標準バンド(帯域)に入っている1.7GHz帯は、ものすごく意味合いが違う」ようになったと強調する。

そこにイー・アクセスの1.7GHz帯のLTEが加わる

すでにiPhone 5では米国モデルの「A1428」をのぞけばこの帯域に対応済みで、つまりiPhone 5は、ハードウェアの改変をしなくても、ネットワーク側の対応やテストなどを行った上でイー・アクセスのLTEを利用できる状況なのだ。

13年3月の時点で、ソフトバンクは2.1GHz帯のLTE対応基地局を2万局、イー・アクセスは1.7GHz帯のLTE対応基地局を1万局まで拡大する計画で、この両者を組み合わせれば、その時点で3万局の基地局が設置できていることになる。「競合している他社に比べてもはるかに数がおおいし、電波が良くなる」と孫社長は自信を見せる。

両社の基地局を併せ、年度内に3万局を目指す

逆にイー・アクセスユーザーにとっては、ソフトバンクの900MHz帯や2.1GHz帯の電波を利用できるようになり、対応端末を出せば音声を含めたよりエリアの広いサービスが実現できるため、「Win-Winの業務提携になる」(同)。

ソフトバンクはLTE網が拡大、イー・モバイルユーザーは音声のネットワークも利用できるように

対応周波数が増えることで、より有利になる