―― 「3センサースケーリングハンマーアクション鍵盤II」の表現力の部分について具体的に教えてください。

岩瀬氏「最初にこだわったのが、ピアノプレイヤーが演奏するときの感覚を大きく左右する、グランドピアノ独特の発音タイミングです。ピアノはその仕組み上、鍵盤を弾く強さや、鍵盤領域ごとのハンマーの大きさの違いにより、ほんのわずかですが発音のタイミングも異なります。

打鍵から発音までのタイミングを、鍵盤領域ごとに正確にシミュレーションすることで、グランドピアノにより近い感覚でプレイできるようになりました。新搭載された鍵盤の機構自体は、従来モデルで採用した『3センサースケーリングハンマーアクション鍵盤』の精度を向上させた、ブラッシュアップ版と考えていただいて良いと思います」

3センサースケーリングハンマーアクション鍵盤II

新野氏「プレイヤーの立場から、もう1つ重要な表現力のカギとなる新機能が、『キーオフシミュレーター』です。これにより、鍵盤から指を離す速さによって余韻を変化させることできます。クラシック楽曲などを演奏する際に、よりエモーショナルな表現を行えるとても強力な機能です。

象牙調・黒檀調を採用した鍵盤自体も、滑りにくく演奏しやすいだけでなく、汚れにくいように微細な表面加工を施してあります。鍵盤の発音タイミングを調整する作業は、丁寧に1つ1つの鍵盤に対して幾度となく、バランスを取り直しましたので、個人的にも特に思い入れのある機能の1つですね!(笑)」

ちなみに新野氏は音楽大学の出身。グランドピアノの演奏経験が豊富な新野氏から見ても、新モデルはグランドピアノに迫る音と鍵盤タッチを実感できるという。新モデルの開発においては、ジャンルの違う曲を毎日何時間も弾きながら、細かく調整していったというお話が印象的だった。

象牙調・黒檀調を採用した鍵盤。実際に触ってみたが、打鍵の重みや負荷のかかり具合、戻り具合など、グランドピアノの鍵盤に近づけるためのこだわりを実感できる

―― Priviaシリーズはスマートでスタイリッシュなルックスが人気ですが、デザインはどのように決定するのでしょうか?

岩瀬氏「Priviaシリーズは、奥行きを短くすることに強いこだわりを持っておりまして、PX-850は奥行き30cm以下に収めています。部屋の中に置いても邪魔にならないスリムさと、木目調の素材感を活かしたシンプルなデザインとなっています。

また、カラーバリエーションについても、発売されるモデルごとに毎回協議を重ねていますが、微妙な流行の違いなどに苦労させられることも多いんです。今回、PX-850はブラックウッド調仕上げのみですが、CELVIANO AP-450は、ブラックウッド調とオークウッド調の2色から選んでいただけます」

CELVIANO AP-450BK
(ブラックウッド調)

CELVIANO AP-450BN
(オークウッド調)

新野氏「実は、電子ピアノ本体の上部にある天板は、開閉できるようになっているんです。電子ピアノに内蔵されたスピーカーからの音が、ピアノ上部からも抜けて聞こえてきますので、また違ったピアノの響きを味わえます。前述した『リッドシミュレーター』と合わせれば、さらにリッチなサウンドを楽しめるのでオススメです」

Privia PX-850の奥行きは30cm以下!

天板を開閉すると音の響きが変わる

―― 新モデルでは、オーディオレコーディング機能など、電子ピアノならではの機能が強化されている点も面白いですね。

岩瀬氏「従来のモデルでは、MIDIデータとして演奏を本体に記録する録音機能が搭載されていましたが、新たに『オーディオレコーディング機能』が加わりました。自分の演奏をそのまま、44.1kHz/16bitのWAVフォーマットでUSBメモリにダイレクト録音することが可能です。

また、録音したデータをUSBメモリからPCにコピーすれば、素早くオーディオCDを作って、友人や知人などと手軽に演奏の共有を行えます。

インターネットとの接続など、とかく多機能になりがちな現代の電子ピアノですが、シンプルでマニュアルいらず、誰でも簡単に使えるのも、電子ピアノの大きな魅力ではないでしょうか。これからもお客様のご意見・ご要望を第一に、楽器としての本分を忘れることなく、着実な進化を目指していきたいと考えています」

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グランドピアノに迫るサウンドとフィーリング、さらに電子ピアノならではの多彩な便利機能を同時に楽しめる新モデル「Privia PX-850」と「CELVIANO AP-450」。ピアノや楽器の心得がある人はもちろん、自宅での反復練習や確認などを行いたいピアニストの方、そしてこれからピアノを始めたいと思っている初心者にもオススメだ。

楽器の音や演奏の感覚については、文章ではなかなかお伝えできないところなので、ぜひ楽器店を訪れて皆さんの目と耳で直接お確かめいただきたい!