今度のiOS 6は200種以上の新機能を搭載、スマートフォンの分野における先駆的存在ということもあり、大いに注目を集めている。ついに一般公開されたそのiOS 6、前編に続き、主要なアプリおよびその関連機能について、さまざまな角度から検証してみよう。

残念、というしかない今度の「マップ」

iOSに標準装備のアプリのなかで、もっとも変化の幅が大きかったのは「マップ」だろう。iPhoneデビュー以来続いてきたGoogleとの協力関係にピリオドを打ち、アプリは自社主導の開発に変更、地図データも蘭TOMTOM社のものに切り替えられた。

残念ながら、ここ日本に関していうかぎり、地図としての情報量の差は明らかだ。断然、Googleのデータを使用するiOS 5版のほうが情報が濃い。試しにiOS 5版とiOS 6版とで東京駅付近を表示してみたが、地名・駅名はもちろん、商業施設や大型ビルの名はiOS 6版のほうが少ない。検索した「東京駅」は確かにヒットしてピンは立つが、周囲の情報量は乏しくまるで開発予定地のように見える。それに、交通情報を表示する設定にしているにもかかわらず、主要幹線道路の色に変化なしということは、ここ日本では渋滞情報サービスが未提供だと推測できる。

そのまま東京駅から銀座方面へ表示位置を変え、縮尺を変更(拡大)すると、地図としてのコンセプトの違いも浮かび上がってくる。Googleのデータに基づくiOS 5版は、建物名や交差点名など、印刷物の地図と同じレベルで"情報の詰め込み感"があるが、iOS 6版はそうではない。街路や建物の区分はiOS 5版同様に書き込まれているが、建物名や交差点名は表示されず、商業施設、特に飲食店の名前がまばらに目に入る程度だ。

iOS 5版(右)とiOS 6版(左)の「マップ」で、東京駅付近を表示したところ。一見して情報量の差は歴然だ

地名で検索をすると、iOS 5版とiOS 6版の違いがはっきりわかる。iOS 5版で「横浜 南幸」(南幸は町名、駅名とは無関係)と検索すると、横浜市西区南幸にピンが立つが、iOS 6版では横浜市西区南幸にある飲食店や駐車場のピンが立つ。これはおそらく、地名やランドマークとマップデータの関連付けが足りないことが原因で、「横浜市 中区」で検索するとiOS 5版では区役所がヒットするのに対し、iOS 6版ではなぜか区役所から数キロ離れた公園の一角が示されることでもわかる。

このように、iOS 5版のクオリティをiOS 6版に求めると、かなり残念な結果となる。Apple独自の「マップ」は誕生したばかり、今後ブラッシュアップが重ねられるのは確実だろうが、ここ日本で現時点においていうかぎり、Webアプリ版Google Mapを利用することが現実的な選択と思える。

ところで、iOS 6版「マップ」にもナビゲーション機能が搭載されており、その仕様もiOS 5版とは大きく変化している。同機能の検証作業はボリュームを伴うため、後日改めて報告させていただきたい。……続きを読む

iOS 5版(左)とiOS 6版(右)の『マップ』で、「横浜 南幸」を条件に検索したところ。iOS 5版では地名に、iOS 6版では飲食店にピンが立っている

iOS 6でも、SafaraiでGoogleマップを利用できる。アプリと操作感は異なるが、当面これで凌ぐことが現実的かもしれない

iOS 6版にも、経路検索(ナビゲーション)機能は搭載されている。こちらの検証については後日に期したい