ドイツ・ベルリンで開催されたIFA 2012の会場で、シャープはアイキューブド研究所と共同で開発した「ICC-4K」テレビのデモンストレーションを行った。これまでとは異なるアプローチによる高画質化を目指しており、特に目で見たままの解像感と空気感を重視し、自然の光の再現にこだわったテレビだ。
ICC技術は、アイキューブド研究所が開発した画像処理技術で、シャープの液晶へ最適化することで、映像の高画質化を行う。ターゲットは60型サイズで、まずはこのサイズでの商品化を目指す計画。
ICC技術の要は、前述の通り「自然の光の再現」。人間の目は、光の反射でものの形を読み取り、陰影を把握する。焦点が当たったところはクッキリと、外れたところはボケるが、カメラの大口径レンズのように、極端にボケることはない。光を再現し、人間の目と同じように表示することで、映像がリアルに表示される。
一般的な高画質化技術だと、「超解像」のようなシャープネスなどの処理が行われるが、ICCでは「あくまで光の再現」。光を再現することで表示した映像は、実際に目で見るのと同様にシャープで解像感があり、パンフォーカスに近い表現ながら、遠近感が感じられるようになる、という。
実際、フルHDで撮影した風景の映像を、そのまま従来の4Kテレビに表示したもの、4Kにアップコンバートしたもの、さらにそれをICCオンにしたもので見比べると、効果は一見して分かる。遠景の森の木の葉、近景の猿の毛並みといった細かい描写から、風の流れ、空気感、そういった映像全体から受ける印象まで、大きく変化する。高原の水の流れを見ると、その人の育った環境などによって「冷たそう」「まだ冷たくなさそう」といった違いが現れるのも、「光の再現」から得られる効果だという。
逆に「自然の光の再現」であり、アニメやCGのような映像には向いていないため、そういう映像ではICC技術を使わない方向だ。
ICC-4Kテレビは今後も開発を続け、シャープが2013年度第2四半期の製品化を目指す。グローバルでの発売時期だが、国内向けには、10月に開催されるCEATEC JAPANで発表がある見込みだ。