資生堂は9月5日、真皮と表皮の間にある「基底膜」の構成成分の1つである糖鎖「ヘパラン硫酸」が、シミのある部位では減少していること、これによって肌の奥の真皮で産生される「シミ増殖因子」が表皮へ流入する量を適切にコントロールできなくなっていることを突き止めたこと、ならびに、ヘパラン硫酸の減少抑制効果が「マドンナリリー根エキス」(画像1)に、産生促進効果が「グルコサミン」(画像2)にあることを見出したと発表した。また、この両成分を同時に配合すると、減少抑制と産生促進の効果が高まるシナジー効果があることも判明したとしている。
同成果の一部は、2012年11月3日からインド・ニューデリーで開催される「第5回アジア色素細胞学会(5th Asian Society for Pigment Cell Research)」にて発表される予定だ。
皮膚は紫外線をあびると、表皮に存在する色素形成細胞「メラノサイト」で、黒褐色になるメラニン色素の生成が増加し、メラノサイト周囲の基底細胞「ケラチノサイト」にメラニン色素を渡す。そして、メラニン色素を過剰に蓄えた基底細胞は「黒化基底細胞」となり、その部分が黒褐色のシミとなる(画像3)。
資生堂は、これまで一般的にシミの肌状態としていわれている、メラノサイトによるメラニン色素の過剰産生だけでなく、メラニンを渡されたケラチノサイトも含めた肌の上部の表皮全体が「負のスパイラル」と呼ぶ異常な状態に陥っていることを明らかにしてきた。そして、このシミ部位の肌状態に対応する医薬部外品美白有効成分として、「m-トラネキサム酸」や「4MSK」などを独自に開発してきており、同社ではシミの原因究明のためには、メラニン色素やメラノサイトだけでなく、肌全体で起こっている現象をとらえることが重要としている。
しかし、これまでの研究ではメラニン色素やメラノサイトが存在する、表皮を研究対象としていたこともあり、今回の研究ではシミの研究の深化を図るべく、表皮だけではなく、その奥の真皮や基底膜も含めた「シミの肌全体」に着目して、研究を進めることにしたのである。
その結果、(1)シミ部位の肌では基底膜の成分の1つであるヘパラン硫酸が減少していることが判明(画像4)。(2)この「ヘパラン硫酸」には、真皮に存在している「線維芽細胞」が産生するシミ増殖因子を、表皮に流入する量をコントロールする機能があることがわかった。
このことにより、メラノサイトやケラチノサイトの存在する表皮だけでなく、「真皮にもシミを増殖させる要因があり、基底膜に存在しているヘパラン硫酸は、このシミ増殖因子が肌の上部の表皮に流入する量をコントロールしている」ということが明らかになったのである(画像5)。
この新たな発見に基づき、ヘパラン硫酸の減少を防ぐ成分を、2万を超える候補成分より探索した結果、「マドンナリリー根エキス」に高い効果があることが見出された。また、生体内でヘパラン硫酸を産生する時に、材料として使われる「グルコサミン」に、ヘパラン硫酸の産生を高める効果があることも確認されたのである(画像6)。
さらに、この2つの成分を同時に配合することによって、ヘパラン硫酸の「分解を抑え」「産生を促す」という2つの対応ができるだけでなく、それぞれの効果を高めあうシナジー効果を発揮することも判明した。この発見によって、肌の奥から発生するシミ増殖因子が表皮に流入する量をコントロールする、防御機能を高めることが可能となった次第だ。
加えて今回の成果を活用することで、従来の表皮だけではなく、肌の奥を加えた肌全体でのシミ美白対応を確立することにも成功している(画像7)。同社では、今後はこうした知見をもとにさらに進化した美白スキンケア化粧品の開発を進めていくとしている。