Windows 8のフルバックアップ機能

オンラインストレージに代表されるクラウドの台頭が、我々を取り巻くコンピューター環境に大きな変化を与えているのは、誰の目にも明らかである。だが、その一方で某レンタルサーバーにおけるデータ消失事件を踏まえると、システムを含む重要なデータをオンラインストレージに預けるのは、必ずしも得策とは言えない。

もちろん、アクセスするデバイスを選ばないオンラインストレージの優位性は大きい。一定レベルのセキュリティ対策を講じた上で、ローカルストレージの延長として使うのであれば、便利なのは確かである。それでも自身が管理すればコスト面もセキュリティ面も万全なローカルバックアップに勝るものはないだろう。

必要に応じてユーザーが作成した個人用ファイルのバックアップや、OS全体のフルバックアップも自由自在。何らかの理由でコンピューターが起動しなくなったときは、バックアップイメージから復元できるため、OSを再インストールするまでもない。

このようにローカルメディアへのバックアップは、依然として有益な作業の一つである。その一方で気になるのが、2012年秋にリリース予定のWindows 8だ。同OSは「ファイルの履歴」という個人用ファイルに焦点を当てたバックアップ機能を備えている。もちろん同機能は有益といえる機能だが、問題はディスクボリューム全体を対象にしたバックアップ機能だ(図01)。

図01 個人用ファイルのバックアップに焦点をあてた「ファイル履歴」機能

同機能は「Windows 7のファイルの復元」に改称されたものの、基本的なバックアップ機能はWinodws 7以前と同じ。そもそもWindows 8にはバックアップイメージからの復元を前提としておらず、設定などを初期化する「PCをリフレッシュする」や出荷状態に戻す「すべてを削除してWindows 8を初期化する」という機能を用意し、OSの再インストールを不要のものとした(図02)。

図02 Windows 8にはコンピューターを初期化する機能が用意されている

もちろん、それ自体は問題ない。いや、新しい試みとして評価すべきだろう。だが、筆者は機能名に首を傾げてしまう。「Windows 7のファイルの復元」という名称は復元作業だけを重視し、ともすればWindows 8以降のWindows OSは、フルバックアップ機能をサポートしないのではないか、といぶかしんでしまう方も少なくないだろう。

Windows 8に対する評価はまた機会を改めて述べるが、前述した問題がなければ、「ファイルの履歴」「Winodws 7のファイルの復元」両者を場面に応じて使い分ければ済む話である。その問題とはフルバックアップのスケジュール設定を行うと、「ファイルの履歴」が動作しないのだ。技術的な背景はわからないが、確かなことは「Windows 8はフルバックアップ機能をサポートしている」「フルバックアップのスケジュールを作成すると『ファイルの履歴』は使用できない」ということである(図03)。

図03 バックアップスケジュールを組むと「ファイル履歴」は使用できない

解決策は「ファイルの履歴」の使用をあきらめて「Winodws 7のファイルの復元」を使用するということだが、改称内容を踏まえると同社の取り組みには不安を覚えてしまう。そのため今後を踏まえると、フルバックアップ機能を備えたバックアップツールに慣れておくべきだろう。今回は、「HD革命/BackUp Ver.12」を例にしてインストールしてみる。

詳しくは過去のレビュー記事をご覧いただくとして、今回はWindows 8 Enterprise評価版に「HD革命/BackUp Ver.12」をインストールし、OSのフルバックアップを実行した結果を報告する。2012年秋以降、Windows 8へアップグレードする予定の方はご覧いただきたい。