グーグルは6月7日、オンライン地図サービスの「Googleマップ」と「Google Earth」における新サービスを解説する説明会を開催した。米国で行われた新サービス発表会を受けてのもので、Android版GoogleマップアプリやiOS/Android版Google Earthアプリで利用可能な新サービスもあり、今後国内でも新サービスの一部を提供していく。
Googleマップは、2005年2月に米国とイギリスの地図からスタートしたオンライン地図サービス。スタート当時、ドラッグ&ドロップで地図移動したり、自由に拡大縮小したりといった操作性が話題となり、順次進化を遂げてきた。地図だけでなく衛星写真、斜め方向からの鳥観図など、画像データも追加し、Googleサーバーへのトラフィックの半分がGoogleマップ関連になっているそうだ。
自動車にカメラを設置して撮影した画像をつなぎ合わせて提供するストリートビューでは、39カ国でサービスを提供。撮影する車の走行距離は800万kmにも達し、地球を200周できる距離を走行してきたという。すでに南極大陸を含む世界7大陸は制覇したが、それでも地球上の全地域を撮影しきれていない。こうしたデータは、すでに20ペタバイト(2,000万GB)になり、「750GBの(3.5インチ)HDDを積み上げると、東京スカイツリー(634m)を超える高さになる」(グーグルシニアエンジニアリングマネージャー 後藤正徳氏)という。ほかにも、例えばルート検索では、世界中のユーザーが自動車ルートの検索だけで200億km分の距離を検索してきたそうだ。
2006年には世界の人口比で37%のエリアをGoogleマップでカバーしており、現在は75%まで拡大しているが、それでも「世界には未知の場所が大量に残っている」(同)ため、今後もエリアの拡大を続けていきたい考えだ。
アマゾン川の撮影シーン|
過去と現在を比較でき、未来へと風景を伝えるという目的の1つとして東日本大震災で被災した地域の過去の写真と震災後の写真を掲載した「東日本大震災デジタルアーカイブプロジェクト」。写真左が震災前、右が震災後の同じ場所の写真 |
こうしたGoogleマップの新機能としては、新たにAndroid端末用のGoogleマップアプリに「オフライン機能」を提供する。これは従来、実験的な機能である「Labs」に用意されていた「キャッシュ」機能の拡張版で、キャッシュとしてではなく、データを指定してダウンロードする形になる。マップで場所を指定して、そこから16km四方の地図データや道路名などの情報をローカルにダウンロードしておくことで、携帯や無線LANの電波がないオフラインの状態でもマップを利用できる。
オフライン機能は、グーグルが権利を持つ地図が提供されているエリアだけで利用でき、例えば日本のように他社からのライセンスを受けて地図データを提供しているエリアでは、この機能は利用できない。米国のニューヨークを始め、シドニー、ロンドン、パリ、ベルリンなど、「海外の主要都市はオフラインに対応している」(同社)という。
6月下旬からサービスをスタートして、当面世界100都市をサポートしていくという。日本の地図をオフラインとしてダウンロードはできないが、日本のユーザーが海外の対応エリアの地図をダウンロード刷ることは可能だ。今後、オフラインでの経路検索などの機能も追加していきたい考えだ。
もう1つの新機能が、Google Earthにおける3Dマップの拡張だ。Google Earthはこれまで、ビルのような建造物を中心に3Dデータを提供。地図に重ねて表示することで、立体的な地図を見ることができた。
2005年の3Dデータ提供開始当初は、建造物の高さデータを使って建物を3Dオブジェクト化していたが、単にグレーのボックスが建物の形をしていただけだった。これでも「当時3D化した地図は話題になり、地図の高度化に貢献していたと自負している」(同社)。2008年には、衛星写真で撮影された画像をオブジェクトに貼り付けて立体化。さらにソフトウェアでモデリングデータを作成して、よりキレイなオブジェクトを作成したり、自動的に立体的に表示するような技術を組み込んだりして、3Dマップを強化してきた。
しかし、すべての建造物が3D化したわけではなく、「不十分だった」として、新たな3D化の機能を追加した。これは、カメラを搭載した飛行機で複数方向から地上を撮影し、その画像から立体的な画像を生成し、ポリゴン化した建造物などに張り付けることで3D化を実現する。当初は「ビルにフォーカスしていた」(同)が、地形そのものやビル以外の建造物も3D化できることになり、よりリアルな3Dマップが実現できる。
当初は今年末までに米国の3Dマップを提供。日本を含めた世界のエリアも、今後3D化することを目指し、人口比で3億人をカバーできるエリアを3D化する計画だ。利用できるのはAndroid、iOS用のGoogle Earthアプリで、PCでも利用できるようにしていきたい考えだ。
最後にストリートビューの提供エリア拡大のための施策について説明があった。グーグルではこれまで、ストリートビューは、通常利用の「ストリートビューカー」、雪道やスキー場で利用する「ストリートビュースノーモービル」、車が入れないエリアでの「ストリートビュートライク」(三輪車)、屋内用の「ストリートビュートロリー」を使ってきたが、新たに「ストリートビュートレッカー」を開発した。
これは、バックパックに必要な機材を詰め込み、そこから360度撮影できるカメラが突きだした形になっており、人がこれを背負って移動することで、ストリートビュー用の写真を撮影していくというもの。車はもちろん、車輪があると移動できないような道のない場所でも撮影できるになる。当初、米国のグランドキャニオンなどで撮影をして提供していく計画で、ストリートビューの提供エリアを拡大する。
すでに提供開始から7年を超えたグーグルの地図サービスだが、継続的な進化を遂げており、今後もGoogleの重要なサービスの一環として、機能強化を図っていきたい考えを示している。