東京ビッグサイトで開催された「ワイヤレスジャパン2012」では、さまざまな新製品や新技術が紹介された。NTTドコモは、新技術として「透過型両面タッチディスプレイ」「ペリフェラルディスプレイ連携」「3Dライブコミュニケーションシステム」を参考展示していた。

透過型ディスプレイに両面タッチで「つまむ」インタフェース

透過型両面タッチディスプレイは、通常のディスプレイではなく、向こう側が透けて見える透明ディスプレイと、2つのタッチパネルを組み合わせ、新しいユーザーインタフェースを実現しようとしたもの。

透過型両面タッチディスプレイ。向こう側が透けているのが分かる

ディスプレイは半透明の有機ELディスプレイで、画面が点灯している状態でも向こう側が透けて見える。表面と裏面の両側にタッチパネルを配したことで、正面だけでなく、裏面にタッチしても操作できる、というのが特徴だ。片手で端末を持ち、表面は親指で、裏面は人さし指で操作する、といった操作法が提案されている。

両面タッチパネルを使い、アイコンの移動をしているところ。表面で移動状態にして、裏面で画面を切り替えて移動する

端末を手に持った状態で画面にタッチして操作する場合、親指は横に動きやすいが上下には動きづらく、人さし指は上下に動きやすいが、横には動きにくい。例えばAndroid端末で画面の上から通知領域を下にスライドさせて表示する場合、親指は少し下に下げるだけで表示されるが、裏面は表面よりも下に動かさないと表示されない。また、ホーム画面を左右にフリックして切り替える場合、裏面は少しの動きで切り替わり、表面は大きく動かさないと切り替わらない、といった具合に、表裏で反応を買えているという。

表面での通知領域をスライド表示する(左)。逆に裏面から表示することもできる

さらに、ホーム画面のアイコンを長押ししてショートカットを別のホーム画面に移動する場合、表面のアイコンを親指で長押し、裏面の人さし指で画面を切り替えて移動させる、といったこともできる。

ルービックキューブを使ったデモでは、表面をなぞるとキューブが回転して好きな面を表示し、裏面からタッチしたうえで、親指を使い表面をなぞると、キューブの一部が回転して色をそろえることができる。両面タッチパネルによって、人さし指と親指で「つまむ」動作ができるようになったわけだ。タッチする、フリックする、といったUIに、「つまむ」が加わったことで、新しい操作方法ができる、とドコモでは見ている。

ルービックキューブのデモ。表面でキューブを回転、後ろから押さえた状態で表面に触れると、ブロックの回転ができる

PS Vitaのように、裏面のパッドがタッチ操作に対応しているが、ドコモでは「どこに触れているか分からない」という声があり、透過型のディスプレイの必要性を指摘。裏面が見えることで、どこに触れているか分かりやすくなっている。

ドコモでは、今後さらに透過型ディスプレイを使った新しいインタフェースの研究を続けていきたい考えを示している。

「ペリフェラルディスプレイ連携」は、スマートフォンの音声やメールの着信などの情報を、身近にあるディスプレイに表示。さらにディスプレイに最適な表示の仕方を自動で選択してくれる、というもの。

具体的には、例えばパーソナルなPCの画面には「Aさんからメール」、家族と見ているテレビの画面には「未読メール」といった具合に、表示する内容を切り替えてくれる。さらに、ショッピングモールにあるデジタルサイネージに近づくと、スマートフォン内のクーポン情報を表示して、お得に購入できる店舗があることをデジタルサイネージ上に表示して知らせてくれる。この場合、不特定多数に見られるため、着信情報などの個人的な情報は表示しない。

近距離のPCでは着信メールの送信者の名前が表示されるが(左)、テレビでは名前は出ない

ドコモでは「気づきを促す」という表現を使ってアピール。スマートフォンに触れなくても、今見ているディスプレイに情報を表示することで、その情報にすぐ気づける。最近は、PC、テレビ、カーナビ、店頭のデジタルサイネージなど、さまざまなディスプレイを目にするが、そこに情報が表示されるため、スマートフォンの画面が「拡張」されたような感覚だ。

デジタルサイネージでは、端末の情報からクーポンを表示する

Bluetoothを使ってスマートフォンとディスプレイの距離を測定し、一定以上の近さであればPC、少し離れたらテレビ、といった判別を行い、家庭内LANであればその無線LAN経由でアプリがスマートフォンの情報を選別して表示する。

PCやテレビ、デジタルサイネージなど、ディスプレイ側にBluetooth、無線LANなどの通信機能、そして表示するためのソフトウェアが必要で、例えばドコモでは、Google TVやAndroid内蔵セットトップボックスのようなものが出てくれば、アプリで拡張できるとして、ペリフェラルディスプレイの実現性に期待を寄せている。

「3Dライブコミュニケーションシステム」は、タブレットを使い、テレビ電話とバーチャルリアリティを組み合わせたようなシステム。カメラで写した自分の映像は、3D映像として相手側に送られ、タブレットの画面内に相手が写し出される。

3Dライブコミニュケーションシステムをデモしているところ

デモでは、2画面カメラを使っているが、実用化した場合はタブレットのインカメラを使うという

会話内の言葉を音声認識し、あらかじめ登録されたキーワードに一致すると、そのキーワードを画面内に表示する。例えば「月面旅行に行きたい」といった会話をすると、画面内に「月面旅行」というバブルが表示され、それをタッチすると、タブレット内の背景が月面の3D映像に切り替わる。

アウトカメラが写した状況がタブレットの画面に表示され、ARのように相手が表れる。会話内の言葉を認識し、バブルが表示される

バブルにタッチすると、そのアイテムと相手の姿が切り替わる、というデモ

特定のシーンを表す言葉が出てきて、そのバブルをタッチすると、シーンが切り替わる

これは横浜・みなとみらいの夜景のシーン。相手の姿が画面内に現れ、一緒にその場にいるような感覚で会話ができる

このようにタブレットを上に持ち上げれば、タブレット内の映像も動く

火星(左)や月面も。説明文が用意されていて、そこにタッチすると説明文をお互いで見られる

お互いに話をしながら、タブレットで同じ景色の中にいるような背景で会話ができるのが特徴で、タブレットを上に向けたり、左右に振ったりすると、それにあわせて景色が変わるなど、離れた場所にいても同じ景色を見ながら会話をできる、といったことが特徴だ。

横須賀のYRPにあるグリーン基地局。太陽光発電を使い、直流(DC)の統合制御「グリーン電力コントローラ」を搭載したことが新しく、リチウムイオン電池とあわせて、より効率よく電力を蓄積できるようにした。3月から試験中で、今後全国に10カ所まで拡大する。将来的には各基地局をつないで、余っている基地局から電力を送るスマートグリッドの利用も検討しているという

(記事提供: AndroWire編集部)