米Intelが現地時間の4月23日に、米サンフランシスコでアナリストや報道関係者を集めたイベントを開催し、第3世代Coreプロセッサ・ファミリー (開発コード名: Ivy Bridge)を発表した。

プレゼンテーションを担当したのは、PCクライアントグループ担当のバイスプレジデント兼GMのKirk Skaugen氏。製品を紹介する前に、同氏はまずIvy Bridgeが"3次元トライゲート・トランジスタ技術を用いて22nmプロセスで製造された初のチップ"であること、そして"グラフィックス・サブシステムを構築し直したTick+の製品"であることを強調した。これらは同社がIvy Bridgeを「2012年以降の成長に向けた堅固な基盤」と見なす理由であり、そして同社とライバルとの違いを示すものだ。

Intelは製造プロセスの微細化 (Tick)と新アーキテクチャの投入 (Tock)を交互に行うTick-Tock (チック・タック)モデルに沿って毎年新製品を投入している。Ivy Bridgeは製造プロセスが進むTickの年の製品だ。ただし、ここ数年の微細化よりもずっと大きなインパクトを備えたTickである。トライゲートとは、シリコン"フィン"を用いた3次元構造のゲート電極技術で、従来の2次元構造よりも効果的に電流を制御できる。これまでよりも微細化に伴うリーク電流を抑えられ、より効果的な省電力と性能の向上を期待できる。トランジスタ技術という点で、新たな扉を開けた製造プロセスの微細化であり、それを採用した製品をIntelはライバルに先駆けて実現した。

シニアフェローのMark Bohr氏(左)は、14nmプロセス、さらにその先の実現性に言及。右はIAデベロッパーグループのプログラムマネージャーBrad Heaney氏

Skaugen氏によると、22nmトライゲート技術で製造されたトランジスタは性能が最大37%向上し、または同じ性能ならば50%の省電力を実現する。データセンター向けプロセッサのような性能が問われる製品、そしてタブレットやスマートフォンなど省電力性能が問われるデバイス向けの製品まで、幅広い製品カテゴリーに対して必要に応じたパフォーマンスを提供できると述べた。

さらにIvy Bridgeでは22nmプロセス製品への移行を果たした上で、グラフィックス・サブシステムも刷新した。だから、単なるTickではなく、Tick+(プラス)である。Intelはプロセッサ開発の行程において、新しいチップに組み込む機能を柔軟かつ素早く最適化できる。Tickのタイミングにおけるグラフィックス強化は、その好例であり、チップ製造を委託して効率化を図るプロセッサ開発が主流になる中、チップの設計から製造まで手がける同社の強みを"+"で示した形だ。

米国イベントで発表されたのは、デスクトップPC、オールインワン(AIO)PC、ノートPCをターゲットにした13製品。内訳はモバイル用Intel Core i7プロセッサExtreme Editionが1つ、Intel Core i7プロセッサが6つ、Intel Core i5プロセッサが6つで、いずれもクアッドコアだ。今回の製品発表に続き、数カ月中にビジネス向けのvPro用の製品、軽量薄型ノートUltrabook向けの製品が登場するという。

第2世代Coreプロセッサ (Sandy Bridge)に比べると、第3世代Coreプロセッサは複数のスレッドを処理するアプリケーションのパフォーマンスが最大20%向上し、また平均消費電力が最大20%減少する。DirectX 11、OpenGL 3.1、OpenCL 1.1をサポートするIntel HD Graphics 2500/4000が統合されており、内蔵グラフィックスの3D性能は最大2倍に向上した。またIntel Quick Sync Video 2.0により、メディア処理性能も最大2倍になった。

ほかにもSkaugen氏は、USB 3.0やThunderboltを標準でサポートする「接続性」、Intel Secure KeyやIntel OS Guardが提供する「安心感」、Intel Rapid StartやIntel Smart Connectなどによる「反応の良さ」など、ユーザーの利用体験を軸に第3世代Coreプロセッサが提供するパフォーマンスを紹介した。

積極的な投資、立ち上がりが勝負

22nmトライゲート・トランジスタ技術への移行は革新的な前進だが、それはIntelによる製造施設への積極的な投資がなければ実現しなかった。言い換えると、22nm製造プロセス製品で先行してシェアを奪えなければ、同社の大きな投資の効果が薄れてしまう。そのためには量産出荷を迅速に軌道に乗せなければならない。プレゼンテーション後のQ&Aでは、歩留まりやUltrabook向け製品が数カ月後になる理由など、製品提供の安定性に関する質問が目立った。

歩留まりについてSkaugen氏は「良好である」と述べたのみで具体的な数字は示さなかった。しかし、Ivy Bridgeの立ち上がりは順調だという。段階的に製品を発表するのは、供給の問題ではなく、強い需要への対応であるとした。すでに65以上のオールインワンPC、205以上のデスクトップ、300以上のノートブック製品の開発が進んでいる。その上でUltrabookの爆発的な成長が予想されることから、慎重に調整しながら進めざるを得ない状況だという。

Intelが18日に発表した2012年第1四半期において、同社CEOのPaul Otellini氏は、第3世代Coreプロセッサが今年第2四半期中に同社のマイクロプロセッサ出荷全体の1/4になり、秋には過半数になる見通しを示している。

左は「Lenovo A720」、右は「HP Bodie」。薄型オールインワンPCは、Ivy BridgeでIntelが成長を期待している製品カテゴリーの1つ