定番メディアプレーヤー「PowerDVD」に新バージョンが登場

今やコンピューターでDVDビデオを視聴するのは当たり前の話だが、その昔はDVDビデオの動画形式であるMPEG-2を再生させるためのスペックを求められるため、より高スペックのコンピューターを用意するか、再生支援を行うMPEG-2カードを購入しなければならなかった。

より高品質なBlu-ray DiscではMPEG-2だけでなく、H.264/MPEG-4 AVC High ProfileやVC-1 Advanced Profile(MicrosoftのWindows Media Video 9を規格化したもの)が用いられているが、CPUパワーが格段に向上した現在はソフトウェアレベルで処理するのが一般的である。

このようにコンピューターでDVDビデオやBlu-ray Discを楽しむ文化は、以前から培われてきたものだが、長い月日を経て現在も第一線のメディアプレーヤーとしてリリースされ続けているのが「PowerDVD」シリーズだ。台湾のソフトウェア会社であるサイバーリンクが開発販売を行っている同シリーズは、1997年のバージョン1登場以来、数多くの機能を搭載し、現在に至っている。

最新版となる「PowerDVD 12」では、バージョン10から搭載されたTrueTheater 3D機能を強化し、DVDビデオだけでなく2DのBlu-ray Discビデオ映像をリアルタイムで3D映像に変換再生する機能が備わった。

このほかにも、再生動画の映像を最大4倍まで拡大表示する再生機能の拡充や、動画シーク時にスライダー位置の映像を表示する機能を強化し、スピードアップやBlu-ray Discへの対応強化が行われている。まずはコンピューターでDVDビデオやBlu-ray Discを楽しむユーザーには定番となるであろうPowerDVD 12の新機能から確認していこう。なお、PowerDVD 12には3つのエディションが存在し、Blu-ray Disc再生も含み機能が分かれる。本稿では、Ultra版を中心に見ていくがエディションの機能比較は同社Webサイトで確認してほしい。

「PowerDVD 12」

最新版ではBlu-ray Discの再生環境を強化

TrueTheater 3Dを搭載したバージョン10の頃は、DVDビデオの3D映像変換機能しか備わっていなかった。これは映像業界が取り組んでいるBlu-ray 3Dの規格策定が2009年末ということもあり、リリース直後のPowerDVD 10は間に合わなかった。

その後の無償アップデートで対応したように記憶しているが、もちろん最新版となるPowerDVD 12では、DVDビデオや動画ファイル、Blue-ray Discの映像をリアルタイムで3Dに変換することが可能になった。もちろんBlu-ray 3Dの再生はもちろん、Blue-ray Disc再生時の高速シークも行える(図01~03)。

図01 TrueTheater 3Dに関する設定。スライダーで感覚的な調整が行える

図02 3Dディスプレイの設定。通常は一般的な赤青メガネをかけるアナグリフ赤青モードだが、対応する環境があれば自動もしくは手動選択も行える

図03 Blu-ray Disc再生中に3Dモードを有効にすると、バッファリングが必要なためか、再生のやり直しを求められる

図04 対応するデバイスが備わっていない場合は、高品質の再生を可能にするTrueTheaterサラウンドを有効にすることで再生環境が向上する

もちろんハードウェア要件は向上し、Blue-ray 3D再生を可能にするには、Intel Pentium D 950 3.0GHzもしくはAMD Athlon 64 X2 4600+2.4GHz以上のCPU。搭載メモリーは2GB以上。GPUはIntel Graphic Media Accelerator HD、NVIDIA Geforce GTX 400シリーズ、Geforce GT 240/320/330/340クラス。デジタル出力用HDCP対応のディスプレイおよび3Dメガネが必要となる。ハードウェア要件はますます高まっているが、映画館で体感できる臨場感を自宅で楽したい方にとっては、さほど難しい投資レベルではないはずだ。

ハードウェア面の向上では、サポートするDTS-HDマスターオーディオの拡充もチェックポイントだ。Blue-ray Discへの対応と連動して、新たに7.1チャンネルをサポート。多くの映像コンテンツは5.1チャンネルが多く、Blue-ray Discとしてもオプション扱いにとどまっている。もっともオーディオチャンネルの増加が、臨場感や迫力の向上につながることは周知の事実なのでコンテンツ側も今後は7.1チャンネルが増えていくだろう(図04)。

また、動画再生時は最大4倍まで画像を拡大表示できるようになり、拡大中はウィンドウ内の画面をドラッグすることで表示位置を変更できる。ただし、Blu-ray Disc再生時は同機能を呼び出すためのボタンが現れなかった。動画ファイルやDVDビデオでは現れることを踏まえると、現バージョンでは未対応だったのだろう(図05)。

図05 DVDビデオや動画ファイル再生時に最大4倍のデジタルズームが可能。スライダーによる拡大後は、ウィンドウ内の画面をドラッグすることで表示位置を選択できる

近年のPowerDVDに見られる変化のひとつが、メディアサーバーとしての機能。前バージョンでは、PowerDVD Remoteを用いたスマートフォンからの遠隔操作や、DLNAメディアサーバー機能を搭載。YouTube再生機能などを備えてきたが、本バージョンでもメディアライブラリーに音楽ファイルや動画ファイルなどを管理する機能を強化し、全般的な操作性の向上が目新しい。

また、スマートフォンやスレートPCとの連動も前バージョンから搭載されたものだが、専用ソフト(PowerDVD Mobile)を各端末にインストールすることで、メディアライブラリー内のコンテンツをiPhoneやAndroidデバイスへストリーミング再生可能。このようにPowerDVDを中心とした家庭内再生環境をさまざまな角度から構築できるのだ(図06)。

図06 メディアライブラリーの共有はDLNAクライアントを許可し、コンテンツを再生する仕組みだ

PowerDVD 12の新機能だけを取り上げていくと、目新しい部分は少なく見えるかも知れない。だが、前述したBlu-ray Discの再生環境強化や、OGG/FLACといった音声形式、3D動画形式であるMK3Dの再生をサポートするなど、日々使用するアプリケーションとしての機能向上は目を見張るものがある。これまでPowerDVDシリーズを使用してきたユーザーには満足のいくバージョンアップとなるはずだ。

阿久津良和(Cactus