2011年2月には制度面を含めた改正が終了した。制度面では対象部門を全部門としたことに加え、より手軽にテレワークが活用できる仕組みづくりが行われた。週2日までテレワークを利用可能で、事前に適用する曜日を申請しなければならないというルールは以前のままだが、それを利用できる条件となる勤続期間は1年以上から3カ月以上へと短縮され、申請の更新は3カ月ごとから6カ月ごとへと引き延ばされた。承認者も部門担当役員から直属上司になったことで、テレワークはかなり身近なものになった。

「ボランティア参加のための休暇中に少しだけ仕事が発生した時には、現地で対応するなども可能です。突然の怪我や家族の病気、出張など事前申請をできないようなケースには部門ごとに柔軟に対応しています」と鈴木氏。週に2日という規定も現段階での許容の問題であり、今後は拡大される可能性は十分にあるという。

こうした取り組みは、本社移転を機にトップダウンで進められるとともに、社内から有志を募って結成されたワーキンググループによる現場目線も取り入れられた。

「ワーキンググループは導入時の牽引役ともなりました。自分たちで決めたことだけに、受入れもスムーズでした」と牧野氏は語る。

また、導入直後に東日本大震災が発生したために2週間の自宅勤務が全員に命じられたことも大きい。安否確認などがスムーズに行えたことはもちろん、否応なしに全員がテレワークを体験したことで、想像以上に使いやすいものであることも実感された。

「顔が見えないとやりづらいというような話がありますが、実際にはそんなことはありませんでした。低画質なビデオチャットでも問題ありませんし、実際にはプレゼンス表示で見える顔写真アイコンでも十分だと感じられました。2週間の間もお客様は動いているわけですが、テレワークを利用して全員が通常業務をこなすことができましたし、サポートチームも動いていました。おそらく、お客様はマイクロソフトの社員が家から対応しているとは思っていなかったでしょう」と牧野氏は語る。

プレゼンスで離席や入力がなくなっている様子は把握できるため、勤怠管理という問題もないという。また、フリーアドレス化にあたって問題視される資料等の荷物についても、限られたロッカーに収まるように整理が進められきちんと収まっているという。持ち運べるPCと荷物を減らしたいという思惑が合わさり、会議時に紙資料が持ち寄られることもなくなったようだ。