約3年ぶりにモデルチェンジを果たした、ワコムのプロシューマ向けペンタブレット「Intuos5」。高い基本性能はそのままに、マルチタッチ機能やワイヤレス接続などに対応し、魅力的な新機能が搭載された。前編に引き続き、新機能の使い心地を紹介していこう。

ファンクションキーとエクスプレスビュー

従来のファンクションキーは制作時に使用するショートカットなどを割り付けておける便利な機能だが、目的のキーを探すには画面から本体へ視線を移さなくてはならない点が不便だった。

本体のファンクションキー部分。ベゼル部分と一体化し、すこしくぼみと、マーキングのでっぱりがあるのがわかる

しかし、今回のファンクションキー部分は本体と一体化し、すこしくぼみがある。このキーは二段階操作になっており、まず指で触れた時点で、画面上に「エクスプレスビュー」と呼ばれる案内表示が出るので、画面から視線を移動させずに済む。さらに押し込むと内部のメカニカルスイッチが動作し、その機能が実行される仕組み。ホイール部分のセンタースイッチも含め、表面は一体化しており、ホコリなどが入り込む心配がなく、清掃も楽だ。

タッチ時の画面表示には若干のタイムラグが設定されており、一瞬さわったくらいでは、エクスプレスビューは表示されない。どうしても指や手のひらが触れてしまう場所なので、この配慮は嬉しい。

また、本体のボタン表面にも「ー」、「・」のエンボス加工が施され、指先でどのボタンに触れているのかがわかる工夫がなされている。Intuos4と比べて、くぼみとでっぱりが明確なので、指先だけでもすみやかにキーを探ることができる。エクスプレスビューはコントロールパネルでオフにもできるので、慣れてくればエクスプレスビューをオフにしてもいいだろう。

ファンクションキーに指を触れると、画面上にその機能が表示される「エクスプレスビュー」。現在触れているキーがオレンジで表示されている。タッチホイールもセンタークリックの度に画面上にモードが表示される

残念なのは、「タッチ機能のオン/オフ」などのひとつのボタンで切替を行う場合、現在どちらのモードに入っているのかを確認できない点だ。また、ボタンのクリックは少し力が必要。誤操作防止的にはよいが、キーボードのキーと比べるとかなり固く感じてしまった。

ペンを含む、すべてのファンクションを表示してくれるヘルプもファンクションキーから呼び出せる。この画面からコントロールパネルにアクセスできるのがうれしい

ワイヤレスキット

従来は有線モデルとワイヤレスモデルは別製品だったが、Intuos5では全モデルがオプションのワイヤレスキットを内蔵することで、あとからでも手軽に無線化することができるようになった。ワイヤレスキットの価格は3,675円。最初からキットが同梱されているワイヤレスモデルもラインナップされている。

ワイヤレス化の手順は非常に簡単。Intuos本体裏側にバッテリーとワイヤレスモジュールを収納し、パソコンのUSBにレシーバーを挿入するだけ。パソコン側でなんら設定することなく、ワイヤレス化が完了する。

バッテリー、ワイヤレスモジュール、レシーバーの3点からなる、ワイヤレスキット。先行して搭載されていた同社「BAMBOO」のものと同じだ

本体裏側のフタを開け、バッテリーと無線モジュールをセットする。いずれもカチッとはめ込むだけ

Intuos4ワイヤレスはBluetooth方式だったが、こちらは2.4GHz RF方式。特にペアリングなどの設定は不要で、パソコンのUSBにレシーバーを差し込むだけで、すぐに使える。また、バッテリーの充電はUSB接続時に自動的に行われる。充電時間は6時間。ワイヤレスで使えるのは連続15時間だ(ミディアムモデルの場合)。もし電池が切れてもUSBケーブルを接続すれば、充電しながらUSB接続として使えるので、バッテリーの管理に気を遣うことはないだろう。電池残量は、メニューバー、タスクバーからも確認できる。

メニューバー、タスクバーに常駐するタブレットメニューからは無線接続の状況、充電の状況、コントロールパネルへのアクセスが可能

Bluetooth方式と違って今回のワイヤレスキットでは、パソコン側に付属のレシーバー接続が必須となる。パソコンのUSB端子をひとつ占領してしまうのと、外出時にレシーバーを忘れることが心配だが、複数のマシンで共有する場合など、Bluetoothのようなペアリング作業が不要なのは手軽だ。レシーバーは非常に小さく、Intuos5本体に収納できるようになっているのもありがたい。

本体側面のワイヤレスモジュール部分。左から充電パイロットランプ、電源スイッチ、USBレシーバー収納部。レシーバーは完全に本体内に納まり、フタを開けると取り出しやすいようにせり出してくる

実際に無線で使ってみたところ、特に遅延や途切れなどは感じられず、非常に快適だった。Intuos4から、ケーブルがminiUSB端子となり、不要な時に片付けるのが楽になったが、無線化すればさらに自由度が高い。膝の上で使う、プレゼン時には手に持って使う、といった無線ならではの使い方も広がる。

膝の上で使う様子。パソコンを大型テレビにつなぎ、ソファにもたれかかって描く、という一昔前なら夢のようなスタイルも可能になった

ただ、スリープ機能に関しては不便を感じた。コントロールパネルで設定された時間(標準で2分)操作がないと、Intuos本体はローパワーモードに移行、さらにしばらくすると本体電源が完全にオフになる。こうなるとペン操作やジェスチャーだけでは復帰せず、本体横にある電源ボタンか、タッチホイールのセンターボタンを押す必要がある。また、この時本体が起動するのに約1秒かかる。前回紹介したように、マウスを廃し、Intuosとキーボードのみにした場合、ワイヤレスだと時折本体のスイッチをオンにするという操作が必要となり、非常に煩わしい。ドライバやファームウェアの改良で改善されることを望みたい。

付属のUSBケーブル

本体と接続するUSBコネクタが、従来のストレートタイプからL字型に変更された。ただ、このL字コネクタが大きく、横へのでっぱりが大きい。

L字型USBコネクタ。ケーブルの取り回しは以前より楽になったが、約2cmとでっぱり幅が大きい

右利きの場合はコードフォルダ部分をカッターで切除してしまうことで若干、でっぱりを減らすことができるが、左利きの場合はこのコードフォルダ部分にコードを入れて、向きを逆にする必要があり、でっぱりは解消されない。より小型なL字コネクタや、スゥイング式、またケーブルもテンションの低いフラットケーブル化など、改良の余地がありそうだ。

以上、前後編にわたってIntuos5の新しい魅力をお伝えしてきた。今回の最新モデルでは、タッチジェスチャーやワイヤレスといった新機能の魅力はもちろんだが、プロの使用に応えるべく、ディテールまで徹底的に作り込まれたプロダクトとしての魅力が感じられた。