CEOの交代、タブレット向けのOS「BlackBerry PlayBook 2.0」のリリースと、このところ立て続けに大きな発表を行っている加Research In Motion(RIM)だが、日本市場での目下の注目は、NTTドコモから発売予定の「BlackBerry Bold 9900」だ。
3月1日までスペイン・バルセロナで開催された「Mobile World Congress 2012」で、同社東アジア地域マネージングディレクター兼上級副社長のGregory Wade氏に日本市場について話を聞いたので紹介しよう。
―― 2006年に日本市場での製品展開を開始しました。これまでの成果をどのように見ていますか?
日本はビジネスの点から見てとてもユニークな市場だ。協業、コラボレーションを重視する市場で、われわれはNTTドコモとよい関係を構築してきた。今後もこれを継続する。
日本市場参入にあたって当初の目標は、日本に拠点を持つ多国籍企業のユーザーにBlackBerryメールを提供することだった。すぐにこの目標は達成し、大企業を中心に日本の企業にも受け入れられるようになった。その背景には、日本企業がRIMの伝統である常時接続、プッシュEメールにメリットを感じていることが挙げられる。日本はセキュリティを重視する傾向があり、スマートフォンでも同じだ。顧客企業はインフラの一部として「BlackBerry Enterprise Server」をファイアウォール内に実装し、付加価値として暗号化などを加えることができる。BlackBerryの安全性は世界的に認知されており、これも後押しとなっている。
固有の特徴としては、安全性のほかに、マネージドサービスへのニーズも高い。われわれは企業向けにインフラサポート、日本語での技術サポートを提供しており、顧客数は数千単位に達している。製品の管理という視点では、パッケージの一部としてフロントエンドのツールを用意しており、実装されたデバイスやセキュリティ要件、アップデートなどを遠隔から管理できる。
―― 日本でも海外製のスマートフォンが増えてきました。多くがタッチ画面を搭載し、Android端末が増えています。そんな中、BlackBerryはどのような戦略で展開していく考えですか?
日本は競争が激しい市場だが、BlackBerryはユニークで突出している。
まず先に述べた安全性、製品管理については、ほかのスマートフォンプラットフォームと比較して大きな差別化になっている。次に端末の差別化だ。日本で携帯電話のショップに行くとわかるが、同じような端末が多く差別化が難しい。たとえばNTTドコモが昨年の秋に発表した約27機種の新モデルの中で、物理キーがあるのはわれわれの「BlackBerry Bold 9900」だけだ。Bold 9900は、タッチ操作とBlackBerryが強みとするQWERTYキーを組み合わせたハイブリッドだが、これは日本で展開するほかのメーカーとの大きな”違い”になる。Bold 9900なら、タッチを使いつつ、メッセージはQWERTYキーですばやく入力、といったことが可能だ。
(全体的な)戦略としては、ニッチ分野で築いている差別化とRIMの強みをさらに強化すること。確立している既存顧客企業との関係を維持しつつ、ユーザーから評価の高いQWERTYキーを活用していく。これをプラットフォーム戦略に結び付けていきたい。
―― 日本のコンシューマーユーザーにどのように製品を訴求していく方針ですか?
現在提供されているスマートフォンは似たり寄ったりだが、調査などからもコンシューマーが周囲の人と違う端末を持ちたいというニーズは明らかだ。また、物理キーボードへのニーズも高い。日本は、着信音に始まりカスタマイズでは世界でも先をいっている。
それらの日本のコンシューマーユーザーにリーチするにあたって、まずは手にとって触ってもらうことが重要だと考えている。われわれはNTTドコモとよい関係を構築しており、約1万店のドコモの店舗にBlackBerryを置いてもらっている。今後も気軽に試してもらえるようにし、認知を高めていく。
―― タブレット端末を日本で提供する予定はありますか?
きちんとしたことは現時点ではいえない。現在のフォーカスは、Bold 9900のローンチを成功させること。それと、「BlackBerry OS 7」を日本市場で提供することに注力している。BlackBerry OS 7を搭載したBold 9900の日本語化もきちんと行っている。
―― BlackBerry Messenger(BBM)で音楽配信サービスを開始しました。日本での展開予定は?
現時点では検討中だ。グローバルではBBMのコミュニティができており、アプリストア「BlackBerry App World」からダウンロードしたアプリをシェアできるBBM Connected Appsも好評だ。メッセージ、写真だけでなく、ゲームもよく共有されている。
―― 今年後半にいよいよBlackBerry OS 10が登場します。これを含め、日本市場での今後の展開について教えてください
戦略としては、前述の通りセキュリティ、マネージドサービス、管理などニッチで確立しているRIMの強みを強化すること。このほか、PlayBook、そしてBlackBerry OS 10の土台であるQNX事業(RIMの子会社)でも大きなチャンスがあるとみている。
QNXはリッチかつ堅牢なOSで、自動車業界に適した技術だ。現在、220機種の自動車で土台に採用されている。自動車メーカー向けのQNX提供も積極的に進める考えだ。開発者向けの取り組みも進め、サポート、トレーニングはもちろん、認知改善も図っていく。