NASAはこのほど、宇宙探査機ルナー・リコネサンス・オービターが撮影した新たな画像を公開した。これにより、月の外殻が引っ張られてできた、ごく小さなくぼみが月面に複数存在することが明らかになった。

最近発見された月の裏面の地溝

この現象を引き起こした地質活動は過去5000万年以内に起こったと科学者は見ており、月の年齢(45億年)からすると最近の出来事といえる。

これらの線状のくぼみは地溝と呼ばれ、月の外殻が引っ張られて裂け、二つの断層の間に落ちてできるものである。断崖の大きさから、月面と中心部が収縮した距離はおよそ90メートルと見積もられており、月面ではこのような地溝が複数発見されている。

今回発見された中で最も大きい地溝の幅は500メートルほど。ルナー・リコネサンス・オービターのカメラの立体画像から作成された地形では、地溝の深さが約20メートルであることを示唆している。

「月の地溝とそれらが明らかにする月の発達過程をトーマス・ワターズ博士が説明」(出典: NASA's Goddard Space Flight Center, Dan Gallagher)


今回の発表内容では、「月は、高温の内部が冷却することによって生じる一般的な大規模収縮を起こしていると考えられる。地溝が明らかにするのは、ところどころで月を収縮させる力よりも引っ張る力が勝っていたということである。収縮力の方が強ければ地溝は形成されなかったと考えられ、しかるに、収縮力は強力ではなかったはずである」という専門家による見解が示されている。

月の収縮が弱かったということは、地球型惑星の場合とは異なり、月が発達の初期過程で完全に溶解しなかったことを示している。むしろ、月面が溶けて溶岩の海を形成したという別の見方が観測から裏付けられているとのことだ。

2010年8月に、科学者のチームはルナー・リコネサンス・オービターのカメラ画像を使って「突状断崖」と呼ばれる丸みを帯びた急斜面を確認し、月面における収縮の物理的な象徴を確認した。突状断崖は、地質学的にごく最近、月が大域的に収縮したことの証拠とされる。また、今でも収縮し続けている可能性を表す証拠にもなる。断崖は月全体に及んでおり、月の内部が緩やかに冷却するにつれ月が収縮すると結論付けられた。

地溝は、月の外殻が引っ張られ分離してできたくぼ地。引っ張られることによって表面に近い物質が二つの断層に沿って裂けて落ち、くぼ地を形成する(Credit: Arizona State University/Smithsonian Institution)

今回の地溝発見は、収縮しながらも外殻が引っ張られて分離するという矛盾した証拠を示すものであり、NASAは「予想外の発見」と位置づけている。また、月がまだ活動していることを示すものとされ、今後探査範囲が広がることで、月の地質構造的特徴に関するより詳細な全体像が把握できるようになるという。