IBMからPC事業を継承したLenovo社も、このところ毎年CESに参加している。ただし、展示スペースにブースはなく、ホテルのレストランを借り切って、プライベート展示スペースを持つ。今回、短い時間ながら、同社のプロダクトグループの上級副社長であるPeter D. Hortensius氏に話を聞くことができた。同氏の話とプライベートブースを見た印象からLenovoの方向性などを見ていくことにする。

Hortensius氏によれば、ThinkPadは同社の「コアビジネス」であるという。同社の中でのThinkPadのポジションは「Lenovoの3つのコアセグメントをカバーする製品だ。エンタープライズ、スモールビジネスとコンシューマーをカバーするのが、ThinkPadだ」(Hortensius氏。以下カギ括弧内は同氏の発言)という。また、「妥協のない」というこれまでの設計方針などにも変更はないという。

しかし、「その位置づけはこれまでと変わらない」が、PCを取り巻く、「企業の中でのコンピュータ全般の動向が変化していきている」ため、Lenovo全体の方向性は、それに対応しなければならないという。

どう変わってきたのかというと「スマートフォンやタブレットの普及」である。「我々は、必要なものを作る。たとえばビジネス向けのタブレットだ」。Lenovo社は、タブレットやスマートフォンが「オフィスで普通に使われる」ようになると想定している。しかし、これらは、PCと違い、メールやWebの閲覧には十分でも、長文のレポート作成など向いていない分野がある。「PCとスマートフォン、タブレットは使い方が違い、共存することになるだろう」と同氏はいう。

これまで、メールやWeb閲覧といった作業もPCを使って行われていた。しかし、スマートフォンやタブレットの性能が上がり、こうした用途に利用できるようになってきた。企業の中でPCは、開発やレポート作成といった、何かを作る作業が中心になり、メールやWebは、スマートフォン、タブレットなどの手軽な機器へと分離していくことになる。しかし、ビジネス分野をコアとするLenovo社としては、この分野にも進出する必要があると考えている。

取材に対応してくれたPeter D. Hortensius氏。Lenovo社プロダクトグループ上級副社長

実際、CESのLenovo社のブース(CES会場とは別のところにあり、一般には公開されていない)には、今年発表予定の製品が展示されていた。

これまでLenovoといえば、PCが中心といえ、昨年あたりからタブレットを日本市場でも投入、それ以外に地元中国で、スマートフォンビジネスを行っているという感じだったが、今回は、多数のスマートフォンも展示されており、中には、中国外でも販売が開始される製品もある。

分離可能なキーボードを持つタブレット(IdeaTab S2110)や、インテルのAtomを搭載するスマートフォン(Smart Phone K800)やタブレット(IdeaTab K2110。中国のみ)、そしてPCとAndroidのハイブリッド機(X1 Hybrid)など、今回のCESでは、スマートフォンやタブレットのラインナップも強化されている。

分離可能なキーボードを持つIdeaTab S2110

インテルのプロセッサ(Atom)を搭載するスマートフォンK800。ただし、Android 2.3搭載

インテルAtom Z2460を採用するIdeaTab K2110は、Android 4.0タブレットだが、中国でのみ販売される予定

WindowsとAndroidを切り替えて利用でき、それぞれのメリットを享受できるThinkPad X1 Hybrid

IdeaTab K2010。Tegra 3を搭載するAndroidタブレット。中国で最初に発売されたのち、他の地域でも販売される予定

具体的には、スマートフォンやタブレットといったビジネスを拡大していくことが必要で、今後ひろがるであろう、ビジネス向けのタブレットやスマートフォンには「ThinkPadで培った技術が利用できる」という。

タブレット、スマートフォンは、コンスーマー発祥の製品だが、ビジネス向けのタブレット、スマートフォンはどこが違うのか? 「まずは、セキュリティ機能だ。企業で使うためには、情報漏洩の可能性を減らすことが重要であり、そのためにはセキュリティ機能が重要になる」、また、「管理性も企業内で利用する製品には必要になる。ハードウェアを誰が持っているか、その人の部署はどこかといった管理が行える必要がある」という。

また、「標準搭載のアプリケーションにも違いがある。たとえば、コンスーマー向けの製品では、メディア関連のアプリケーションが付属することが多いが、ビジネス向けにはあまり必要ない」のだという。

では、インテルが導入を進めるウルトラブックはどうだろうか? ウルトラブックは、コンスーマー向けの製品が多い印象があるが、「ビジネス分野でもウルトラブックは利用できる」しかし、「ビジネス向けのウルトラブックは、やはりセキュリティ機能などが必要だ。たとえば、セキュリティチップは、ビジネス向けには必須といえるが、コンスーマー向けには必ずしも必要ない。また、同様にメディアアプリケーションは、コンスーマー向けには必須だろうが、ビジネス向けには必ずしも必須ではない」とのことだが、価格的なメリットもあり、「価格に敏感なユーザー向けにビジネス分野にも普及するだろう」という。実際、他社のことだが、ビジネス向けにネットブックを展開しようとしたところもある。スクリーンサイズや処理性能などで、必ずしもいい結果を生まなかったが、ビジネス分野でも、世界的な景気動向のため、価格低下への圧力は強い。この分野に、ウルトラブックが適合する可能性はあるだろう。