米Appleは1月4日(現地時間)、中国でのiPhone 4S販売を1月13日より開始すると発表した。中国での取り扱いキャリアは従来どおりChina Unicomで、同日より中国を含む27の地域で新たに取り扱いを開始する。だが最近の中国におけるApple関連のホットトピックは、China Unicom以外の2大キャリア――China TelecomおよびChina Mobile――によるiPhone取り扱い開始の可能性だ。特に世界最大のメガキャリアであるChina Mobileが次期製品のタイミングでiPhoneの取り扱いを開始するのではないかという点に注目が集まっている。
iPhone 4Sの世界展開はこれまでで最速のペース
Appleの発表によれば、1月13日の時点でiPhone 4Sの取り扱い地域は世界90カ国以上となり、これは同社にとって最速ペースでの世界展開にあたるという。今回、中国でiPhone 4Sの独占提供キャリアになっているChina Unicom (中国総通)はGSM/WCDMAでネットワークサービスを提供する事業者であり、世界で主流のGSMベースの端末を簡単に利用できる点で特徴がある。同社がiPhoneの販売を開始したのは2009年夏で、中国内の制限によりWi-Fi機能を削除してのデビューとなった。
中国市場は金額規模でいえば人口に対してまだ少ないが、その成長率は高く、Appleも最近の発表会や決算報告でたびたび中国におけるビジネスに言及している。2011年9月時点での同社の中国語圏(中国、香港、台湾)の合計売上は、全体の16%を占めているという。中国でのiPhone 4Sの販売認可が下りたことは2011年12月中旬ごろに報告されており、2012年の売上拡大要因の1つになることが期待されている。
注目は世界最大の携帯キャリアChina Mobileの動向
だが、China UnicomがiPhoneの取り扱いを開始することは想定の範囲内。現在の関心はむしろそれ以外の2大キャリア、具体的にはChina TelecomとChina MobileがいつiPhoneの取り扱いを開始するのかという点にある。China Telecom (中国電信)はCDMAをベースにしたネットワークを構築しているキャリアであり、実質的にChina Unicomに続く中国第3位の携帯キャリア。もう1つのChina Mobile (中国移動通信)は6億以上の契約ユーザーを抱える世界最大の携帯キャリアであり、China Unicomの約2億ユーザーという数字と比較してもその大きさが想像できるだろう。
ここでポイントとなるのは、China Mobileは2GにGSM方式を採用しているものの、3GにはTD-SCDMAを採用し、続く4GではTD-LTEの導入を進めているなど、世界方式とは若干異なったネットワーク展開を行っている点。China TelecomはCDMA方式を採用しているため、契約さえ結べればiPhoneの取り扱い開始は時間の問題とみられる。そしてChina Mobileも、3G方式は異なるものの、潜在的なユーザー数を考えれば独自仕様のiPhoneをAppleが用意する可能性は少なくないというのが筆者の予想だ。
こうした背景を受け、「2012年の中国におけるモバイルトピック」のポイントがiPhoneの取り扱い開始にあると各方面で予想されている。例えば、ForbesのCIO Networkが中国を拠点としたオンラインゲーム企業であるThe9のバイスプレジデントChris Shen氏へのインタビューをまとめた「5 Predictions For The Chinese Mobile Market For 2012」という記事の中で、Shen氏は中国のスマートフォンユーザーが1億人を突破し、ゲーム内課金がブームになるという予想に加え、「中国の3大キャリアすべてでiOSデバイスの取り扱いが開始される」との予測を出している。同氏は中国でAndroidデバイスだけでなく、iOSをターゲットとしたアプリ開発も盛り上がることになるという。
またComputerworldでは、Ticonderoga SecuritiesのアナリストBrian White氏の「China Telecomは今年中、China Mobileも最終的にiOSの取り扱いを開始するだろう」とのコメントを引用し、China Mobileでの取り扱いもまた時間の問題であるとの見方を示している。以前のレポート記事でも触れたが、China Mobileと歩調を合わせたサービス展開を視野にいれているキャリアが日本にもおり、これらの動きは決して日本と無縁ではないと考えられる。