JNCは、海水を含むセシウム汚染水を対象とした、ラボスケールにおけるセシウム(安定同位体)の除去・回収の技術開発に成功したことを発表した。同技術は、東日本大震災により発生した放射能汚染水に含有される放射性セシウムの除去・回収にも利用可能だという。

今回同社が開発した技術は、セシウム汚染水に水溶性のフェロシアン化物を加えセシウム結合体とした後、セシウム結合体に磁性体原料となる塩化鉄を加えて反応させ、アルカリ水溶液を用いて磁性を持つセシウム結合体とし、磁石を用いてセシウム結合体を磁気分離することで、汚染水からセシウムを除去・回収するというもの。

ゼオライトなどの固形吸着剤を使用する場合と比較して、短い処理時間で高いセシウムの除去率が得られ、廃棄物量の低減が期待できるという。また、磁気分離法を用いるため、迅速な分離操作の実現と密閉環境や遠隔操作による処理が可能だとするほか、使用するものも、工業的に入手が容易で安価な材料のみであり、セシウム除去費用の削減も期待できるという。

実際に海水を混合したセシウム濃度10ppm程度の水溶液を用いたラボスケールの試験では、磁性を持つセシウム結合体を生成させる反応時間と磁気分離時間を合わせた処理操作は10分以内で完了し、1回の操作で99.5%のセシウムを除去できたという。

なお、同技術は幅広く応用が可能であり、放射能汚染された土壌の洗浄水からセシウムを除去する方法として用いることも考えられることから、同社では現在、大量の汚染水処理を目的とした工業的なセシウム除去プロセスの確立を目指し、ベンチスケールの技術開発を進めているとのことで、早期に技術を完成させたいとしている。

今回開発されたセシウム(安定同位体)除去・回収技術の概要