今回の撮影で向かったのは千葉、小湊鐵道。牧歌的な山間の風景を走る1両編成のディーゼルカーの姿をDEV-3で追いつつ、映像に収めた。

撮影してみて感じたのは、DEV-3の録画機能が作品撮影より映像記録向けであること。どうしてもその先鋭的なスタイルと「3DフルHDムービー録画」というキャッチーな言葉に過剰に目を惹かれてしまうが、やはり本機はカメラではなく、肩書き通りあくまで双眼鏡なのだ。底部に設けられた三脚穴の存在意義も“作品を撮るために三脚を固定する穴”ではなく、“DEV-3を長時間、手で持ち続けなくてもいいように三脚に固定する穴”なのである。

フルタイムAFと手ブレ補正という武器が、DEV-3に絶大なフットワークを与えてくれる。定点観測でもなければ、三脚に固定する必要はない

実際に三脚に固定し、ファインダーを覗きながらカメラをパンしたりズームしたりしながら撮影してみたが、ホームビデオのように思い通りの操作はできなかった。外部モニターでも接続して、それを見ながら撮ればやりやすくもなるだろうが、それではDEV-3の存在意義がなくなってしまう。

それより、三脚を使わずに両手でしっかりとホールド、被写体を純粋に追いかけつつ録画ボタンも押しておく……くらいの気持ちで撮影した方が使っていてずっと楽しい。その差は、撮影したムービーを見てもおわかりいただけると思う。

DEV-3を三脚に固定して撮影。双眼鏡のファインダーを覗きながらパンやズームをしようとしても、低速の汽動車ですら上手く捕えるのは難しい。この方法で思うように撮るには、少々慣れが必要なようだ

手持ちでも激しい手ブレを起こすことなく、最小限の揺れが臨場感を盛り上げる。撮り手の気持ちも、よりシーンに入り込む感覚が味わえるだろう。なお、ここでは2Dでしかお見せできないのが残念だが、3D映像ではウンカが画面から浮き上がって、目の前をチラチラと飛び回る。思わず手で払いのけたくなるほどだ

こちらも三脚を使用。10倍ズームのテレ端とワイド端を意識して撮ってみた。 薄暮の中でも被写体がよく見えるのは、EVFの恩恵だ(※00:38から踏切の音が鳴りますので、音量にご注意ください)

本機に限らず、ビデオカメラの写真モードは所詮おまけ機能、そんなふうに思われがち。ところが、今回の撮影に付き合ってくれた鉄道カメラマン、広田泉氏が撮ればこのクオリティ。まさに、「弘法筆を選ばず」

余談だが撮影中、DEV-3が多くの人々の注目を集めていたことを最後に付け加えておく。犬の散歩で通りがかったおじさんも、「こりゃすごいカメラだなぁ! えっ、カメラじゃなくて双眼鏡!?」と大興奮。性能ももちろん大事だけれど、やはり趣味のアイテムはそれだけじゃ面白くないことをあらためて感じさせられた。そして、そういう物作りが上手いのがやはりソニーなんだなぁ……とも。