今回は多くのジャンルでの見え方を体験するため、特別にお借りした3D映像のサンプルディスクを視聴してみた。感想を先に書いてしまうと、3D視聴における最適な環境はHMDだと確信するに至った。クリアな画質、大画面で迫り来る映像とヘッドホンならではの音の迫力、そして、映像空間を独占できる比類なき没入感。どれをとっても、テレビはもちろん、映画館すら敵わない。

ちなみにHMZ-T1は、大きな映画館の特等席からスクリーンを見た状態に近いとのことだが、実際にはもっとスクリーンに近いイメージだ。これは、映画館とは異なりスクリーン以外の風景がまったく視野に入らないことも関係しているのだろう。また、視聴していて視点の動きが少なくて済むことに気付いた。眼球の移動距離が少なくて済むため、シーンのディテールや画面端の人物にしっかりと目が届くのだ。見慣れた映画でも、HMZ-T1で観ると新たな発見がある。

圧倒的なアドバンテージを持つ没入感を存分に発揮できるのは、ゲーム。中でも、空間の広がりを感じられるレーシングゲームやフライトシミュレーターは、もはや「酔える」レベル(これをメリットと感じるかどうかは人それぞれかもしれないが)。何しろ、映画館のスクリーンを独占してプレイしているようなものなのだ。その臨場感は容易に想像できるだろう。コントラストが強く文字が読みやすいので、RPGやSLGにも向いている。

レースゲームは、HMZ-T1の醍醐味をもっとも味わえるジャンルのひとつ。自車がジャンプするシーンでは足下がくすぐったくなるほどの臨場感!

ブルーレイディスクやDVDのメニュー画面の文字も非常に見やすい

映像再生中にメニューボタンを押すことで、各種設定を変更することができる

もちろん、諸手を挙げて絶賛できることばかりではなく、音質的には物足りないヘッドホンや、ダンスシーンなど動きが激しい場所では非常にごくわずかながら残像(遅延)が気になるなど、厳しい目で見れば指摘すべき箇所もあるにはある。だが、1,280×720ドットというHD解像度の有機ELパネルを2枚も搭載し、3D映像視聴が行えるHMDを実売6万円前後の価格で手に入ることを考えれば、野暮というもの。それに、HMZ-T1の映像が「従来のコンシューマー向けHMDとは次元を隔てた」と形容してもオーバーではないほどのハイクオリティであることは厳然たる事実なのだ。

このように優秀なHMZ-T1だが、ただひとつ、どうしても気になるのは、約420gという重量。これは決して軽いとはいえず、装着していると次第にうつむき加減になってくる。そこで、映画などの長丁場のプレイでは、横になって枕で首を支えたり、ソファの背にもたれたりしてできるだけ首への負担を軽くするのがオススメだ。頭の位置や角度に左右されないHMZ-T1だからこそ、ラクな姿勢で楽しんでほしい。

……と、原稿を書き上げたところで、私はビールでも飲みながら映画をもう一本楽しむことにしようか。プシュ!(缶ビールを開ける音)ゴキュゴキュ……。

そしてHMZ-T1を装着、再生スタート。おぉ、やっぱり迫力あるよなぁ。

……ああっ!!ビールはどこだ(視界が遮られ、ビールを置いた場所がまったく見えないことに初めて気付いた)。

ビデオカメラと接続しても楽しい。自分の撮った作品をまるで映画作品のように味わうことができる

ハンディカムのHDMI端子と接続するには、片側にCタイプのHDMI端子を持つケーブルか、このような変換プラグが必要