「イメージングスクエア」のリニューアルに合わせて登場した新機能、「DP(ダイナミックフォト)アニメーション」。今回は、目玉とも言うべきDPアニメーションの開発経緯や将来的な構想について、カシオ計算機 DI事業部 01プロジェクトリーダー、坂牧勝也氏にお話を伺った。

写真の一歩進んだ利用価値を提案する「DPアニメーション」

カシオ計算機 DI事業部 01プロジェクトリーダー 坂牧勝也氏

「DPアニメーション」は、一枚の写真から切り抜いた人や物に動作を付け、自動的にアニメーションを作成するツールだ。切り抜きを行うDP(ダイナミックフォト)はアートツールとしてすでに提供されていたが、加工後の作品の利用価値をさらに広げるものといえる。

「基本となるダイナミックフォトは、2008年に開発された機能です。EXILIMに搭載されている機能ですので、ご存じの方も多いかと思います。DPアニメーションの元となるアイディアは当時流行していたセカンドライフのアバターをダイナミックフォトの技術を活用して写真から簡単に作れないだろうか、という考えから生まれました。ひとコマずつ人を切り抜いて動きを作っているこの技術をさらに発展させて、切り抜いたひとコマの人の写真だけから自由に動かせるキャラクターが作れないだろうか、というものです。ダイナミックフォト開発後、そのアイデアを持って研究開発センターに相談したことが、DPアニメーションが誕生するきっかけでした。写真は通常2Dですが、彼らはそれを3Dデータとして扱うことで動きをつけるような技術を開発してくれたんです」

変換後のデータが3D形式となるため、処理的にデジタルカメラでの展開は難しい。結果的に、インターネット上で運営されるイメージングスクエアならでは、という機能になった。サーバーを介した処理になるため、PCはもちろんスマートフォンや携帯など、端末の種類を問わずに提供できる。

「DPも過去の技術蓄積から生まれたものでしたし、私たちの技術は突然生まれてくる訳ではないんです。既存の技術を何か新しい商品に活かせるのではないかと考える中で、新たな展開が見えてくるほうが圧倒的に多いです」

DPアニメーションの一例

キャラクターが見せる、滑らかな動きの秘密

DPアニメーションのダンスパターン

実際の作品を見てみると、キャラクターは2Dだが動きは立体的で滑らかだ。不自然さも感じない。こうした動きのメニューは、現段階で2カテゴリ40種。「ダンス」であれば、ヒップホップやツイスト、ロボットダンスなど10種類が選べるが、各ダンスの特徴が細部まで表現されていることに驚かされる。この動きの再現は、どのような工程で作られていったのだろうか。

「まずはコンテンツ制作に強いハウスエージェンシーの協力を仰ぎ、2Dのキャラクターでも違和感を感じないダンスのジャンル選びを行いました。そして、テンプレートとなるダンスを実際のダンサーに演じてもらい、その動画を元に3Dクリエイターがピン打ちをし、1コマずつ動きをトレースしてモデルを作る、という流れです。現在は開発専用のツール類が整備されてきたので、多少はラクになったようですが、初期の制作は相当大変でした」

ここでいう"ピン"とは、2Dの物体を動かすために画像上に設けるマーキングポイント、いわば"関節"のようなものだ。現状、もっとも高精細な基準モデルには、28のピンが埋め込まれている。動きのデータはこのピンにすべて収められ、奥行きのある表現も可能となっている。

DPアニメーションの"ピン"(制御ポイント)設定。各ポイントの位置は自由に変更できる。各ポイントの位置関係を計算しながら、静止画から動画を作成するわけだ

「3Dデータですから、ピンを打つ時に前・中・後のパラメータも加えて、位置関係を把握させているんです。手を前後に動かすことは簡単にできますし、後ろに振った腕が身体に隠れるような表現も可能です。この場合は、胸と肘と手先にあるピンをガイドとして、手先のピンが前にある状態と後ろにある状態、2つのデータを組み合わせて再現しています」

奥行きとくれば気になるのが、前面同様の柄や色がキャラクターの背中にも反映されている点だ。写真から作られたデータであれば、当然、背中側の元情報は持っていないはずだ。

「背中は、キャラクターが回転する時にのみ、服の柄や色を演算で背中側まで延長して表現する仕組みになっています。開発中に、キャラクターを回転すると背中が真っ黒で寂しいという意見が出まして、その場で研究開発リーダーが提案したものなんです。切り抜いた画像のエッジ部分のデータを使って計算するので、縞模様や右左の色が異なるズボンなど、まだ多少不得手なものはあるのですが…」