2年ほど前、不況で落ち込みが目立つPC市場を救ったのが「ネットブック」のブームだ。だが現在、ネットブックは主役の座からは後退し、価格帯の下がってきた高機能ノートPCに取って代わられつつある。こうしたなか、ある市場調査アナリストの予想によれば、ノートPCのカテゴリにおいて今年2011年後半にかけて米Appleのシェアが急伸してくる可能性があると指摘している。

MacBook Air

こうした予想を投資家向けレポートの中で公開したのは独Deutsche BankのアナリストChris Whitmore氏。同氏のレポートの抜粋はFortuneのApple 2.0 Blogを執筆するPhilip Elmer-Dewitt氏の記事で読める。同記事ではネットブック市場におけるメーカー別シェアの四半期ごとの推移が記載されており、Acer、Apple、ASUS、Dell、HP、Samsungの6つのメーカーが並んでいる。グラフを確認する限り、Appleの2011年第2四半期時点でのシェアは5-6%程度で5位のレベルだが、これが"ある集計のトリック"を使うと20%超へと躍進して一気にトップへと躍り出るというのがWhitmore氏のレポートの趣旨だ。このトリックの正体とはなんなのか?

その秘密は「タブレット」の存在にある。グラフの第2四半期における第1の数字(左)は、いわゆる「ノートPC」を純粋に比較したシェアなのに対し、第2の数字(右)では「タブレット」を集計対象にしている。タブレット市場で圧倒的シェアを持つiPadの存在を考えれば、こうした数字の動きは別に不思議ではない。タブレットをノートPCに含むかにはさまざまな意見があるかと思うが、「ASUS Transformer」のようにタブレットとノートPCの中間に位置する製品も登場してきており、今後Windows 8の発表でその境はさらに曖昧になるだろう。いつの日かノートPCとタブレットの市場がクロスしたとき、「Appleがこの分野におけるトップベンダーに君臨していた」といった事実が明らかになるかもしれない。

Whitmore氏はタブレットとはまた別のトレンドで、Appleが今年いっぱいは有利な立場にいることを指摘する。現在、Windowsを擁立する他の競合ベンダーはソフトウェアとハードウェアの両面で革新性に欠けており、「ウルトラブック」というカテゴリでは少なくとも2012年まではAppleのMacBook Airに匹敵するような競合製品をリリースすることができないと同氏は見ている。これは、機能面でも価格面でもAppleへの対抗ができておらず、HPがリリースから1ヶ月せずにwebOSタブレットのTouchPadを急遽値下げしたことにも見受けられる。今後、年の最大の商戦期である秋の入学シーズンや年末のクリスマス商戦が間もなく到来し、ここでAppleがさらにシェアを躍進する可能性がある。