ブロガーの間で根強い人気を誇るソニーのブロギー(Bloggie)シリーズは、その名前のとおりブログに掲載する動画や静止画を撮るために生まれてきたデジタルガジェットだ。HD画質の動画を撮影し、すぐにネット上でシェアできる手軽さが受けている。このブロギーのタッチパネルモデル「MHS-TS20K」を使ってみた。

USB端子を内蔵し、ラクラクPC接続

ブロギータッチ(MHS-TS20K)は、撮像素子に有効画素数1280万画素の「Exmor」CMOSセンサーを搭載。フルHDでの動画撮影だけではなく、動きの速い被写体でもなめらかに再生する毎秒60コマのプログレッシブ撮影にも対応する。付属ソフトは本体に内蔵され、撮影した動画や静止画を簡単にネット上にアップロードできる。液晶画面はタッチパネルを採用。シングルタップだが反応はよく、軽快に操作できるのが楽しい。

本体サイズは、幅52mm×高さ107mm×厚さ15.2mm。手のひらにスッポリ収まるサイズだ。重量は約125gと大きさの割に重さを感じる。金属を多用した本体の質感もいい。手にしたとき非常にしっくりくる感じだ。ガジェット好きには分かると思うが、そのサイズと重量感は絶妙で、一度手にするとずっと持っていたくなる感覚なのだ。

インタフェースは非常にシンプル。物理的に設置されているボタンは「電源」「静止画シャッター」「録画ボタン」の3つしかない。搭載される端子は、USB端子とHDMIミニ端子。USB端子は内蔵されてポップアップするタイプなので、ケーブルを持ち歩かなくてもPCへ接続できる。PC側のUSB端子まわり状態によって直付けできない場合は、付属のUSB延長ケーブルを使用すればいい。

金属の質感とヘアライン仕上げで高級感が漂う。公式にはこれが背面となる

厚みは15.2mm。右側面には、マイク、電源ボタン、シャッターボタンを配置

左側面にはミニHDMI端子。下部にはストラップ取り付け穴がある

3.0型 288,000ドットのタッチパネル液晶モニターと、録画ボタン

マイクのように見えるが、これはスピーカー

ポップアップ式のUSB端子と、三脚取り付け穴

35mmフィルム換算で37mm F2.8のAFレンズ

主な操作はこの3つのボタンだけ。モニター横の丸いボタンが動画用。ほかはタッチパネルで行なう

USB端子を出したところ。充電もUSB端子で行なう。PCにうまく挿せない場合は延長ケーブルを使用する

ミニHDMI端子のフタを開けたところ。HDテレビなどに接続できる

動画では縦位置でも横長の映像に

ブロギータッチの基本は、被写体に向けてただボタンを押すだけ。シンプルなインタフェースと同様に、撮影も非常にシンプルだ。動画を撮りたければタッチパネル隣の録画ボタンを押す、静止画を撮りたければシャッターボタンを押す。撮影時に操作するのは、デジタル4倍ズームだけだ。

撮影前の設定もシンプルで、音や日時を設定する基本設定以外には画質とセルフタイマーを選択できるのみとなっている。撮影時の操作がやや物足りないかもしれないが、逆に何も気にしなくていいぶん撮影に専念できるのがいい。フォーカスはオートフォーカスだが、最短撮影距離10cmのオートマクロにも対応し、顔を認識してフォーカスや露出を合わせる顔検出機能もあるため、カメラまかせでも特に不便を感じない。アクティブイメージエリア方式の電子式手ブレ補正も搭載している。この手ブレ補正は強力で、歩きながらの手持ち撮影でも、ブレの少ないスムーズな映像が撮影できた。

カメラの縦位置、横位置、天地はどの角度でも自動的にカメラが判断する。極端な俯瞰(ふかん)やあおり撮影では誤認識することもあるようだ。注意したいのは、縦位置撮影では、フルHDに設定していても左右に黒帯が付いた横長の映像になる点だ。つまり画像サイズは横1920×縦1080ピクセルだが、写っている範囲は横608×縦1080ピクセルになる。これは再生する側のテレビやPCで、静止画のように簡単に動画を回転させられないためだろう。フルHDで、その解像度をフルに使いたい場合は、横位置撮影を心がけたい。といっても、縦位置撮影は新鮮で楽しかった。調子に乗って縦撮りばかりしていたら、作例動画も縦位置ばかりになってしまった。なお、静止画撮影では縦位置で撮影しても画素をフルに使って記録される。

撮影時の画面。左上は基本設定、右上は画質、左下はセルフタイマー

画質設定は、動画静止画とも各3種類の設定から選択する

セルフタイマーは、シャッター押下時のブレを軽減する2秒も設定可能

横位置での撮影画面。基本的な並びは縦位置と同様だ

動画:縦位置で撮影した動画は、左右に黒い帯が入り、映像そのものは横位置となる

動画:M@こちらは横位置。色再現やフォーカスがシビアな状況でも、カメラまかせで見た目に近い映像に仕上がるから安心

基本は単焦点ムービー。ズームは控えめで

画角を35mm換算で見てみると、16:9撮影時は37mm相当、静止画の4:3撮影時は短辺が延びる形になり32mm相当となる。狭い室内での撮影では若干引きが足りないと感じるが、スナップを目的にしていることを考えれば、このあたりの焦点距離がベストなのかもしれない。デジタルズームは4倍で、液晶画面のスライドをスクロールさせるか、「T」「W」の部分を長押しすることで徐々にズーム倍率が変化する。さすがにデジタルズームのため、アップ(望遠)にすると画質が劣化する。撮影時、本体の液晶画面ではさほど劣化を感じないが、PCやテレビで見ると分かってしまう。画質劣化をかなり抑えているものの、光学ズームと同じ感覚のズームではないということを理解しておこう。どうもビデオカメラと同じようにズームワークを使った撮影をしようとしてしまったが、画質も含めて基本的にズームは多用しないほうがよいだろう。

画角を比較してみる。これは静止画の「12Mモード(4:3)」(ズームなし)の状態

画角の比較。こちらは「8Mモード(16:9)」。上下はもちろん、左右も少し狭くなる。「2Mモード(16:9)」も画角はこれと同じ

動画撮影中の静止画撮影(左)も可能だが、動画映像のキャプチャーとなるため、純粋な静止画撮影(右)と比較してコントラストが低くなる

画質を見るため、縮小せず中央部をトリミング。これは「12Mモード(4:3)」

「8Mモード(16:9)」のデジタルズームなし

「2Mモード(16:9)」のデジタルズームなし

デジタルズームをいっぱいまで使用した状態。これは「12Mモード(4:3)」

「8Mモード(16:9)」でデジタルズーム使用

「2Mモード(16:9)」でデジタルズーム使用

左が録画開始直後の画面。「T」「W」を押してもすぐには反応しない。5秒ほどで右の画面になり、ズームが反応し始める

12Mモード(4:3)は広角32mm相当。スナップ写真としては使いやすい焦点距離だ

光量が足りなかったのでややノイジーな仕上がりだが、条件がよければ描写性能はいい

縦位置の静止画。撮影時に動画と画角の変化がないため、16:9の方が撮りやすい。人物は顔検出機能でフォーカスや露出もカメラまかせ

最短撮影距離10cmのオートマクロも搭載。花や小物など、ガンガン近寄って撮影できるのが頼もしい

デジタルズーム4倍で撮影。静止画であれば、ずいぶん補完される。WEB使用で縮小されるなら特に不満を感じない

コマ数が多いほうが解像感は高い

ブロギータッチの動画はどのモードでもすべてプログレッシブ。PC視聴やブログ掲載が前提のため、これは正しい選択だろう。また一般的なビデオカメラと異なる点でもある。フルHD(1920×1080)解像度の場合は30p、1280×720撮影時には30pと60pを選べるようになる。60pで撮れば動きが速い被写体でもスムーズでなめらかになり、さらにコマ数が倍になることで解像感も増す。1920×1080 30pで撮影するよりも1280×720 60pで撮影した方がクッキリとした印象だ。

ブロギータッチのユニークな特徴として「360度撮影」というのもある。これは付属する「360度ビデオレンズ」を装着することで、カメラの周囲360度を撮影できるというもの。このレンズは専用ケースに入っていて、携帯時も安心。外したケースを利用してカメラを立たせて固定することもできる。360度ビデオレンズはブロギータッチ本体にマグネットで付き、自動的に[360ビデオモード]に切り替わる。動画は1920×1080 30p、静止画は8Mモード(16:9)に固定され、ズームや設定変更はできない。撮影した動画や静止画は、本体内蔵ソフト「Bloggieソフトウエア」で展開できる。展開した動画など、通常撮影時と比べると解像度は低いものの、普段は撮れないようなインパクトのある映像になる。使いどころは難しいが、ハマれば面白い機能だ。

動画:フルHDテレビで視聴するなら、1920×1080 30pの動画が適している

動画:1280×720 60pは、なめらかさや解像感がひと味違う

付属する「360度ビデオレンズ」。専用ケースに入れて携帯できる

動画:M@「360度ビデオレンズ」を取り付けたところ

動画:「360度撮影」は縦位置撮影が基本。レンズを装着すると、自動的に[360ビデオモード]に切り替わる

撮影した動画や静止画は「Bloggieソフトウエア」で視聴、展開できる

動画:[360ビデオモード]で撮影した元映像

動画:展開し保存すると、全周囲パノラマ動画が完成する。ファイル形式はWMVになる

ブロギーだから広がるコミュニケーション

付属ソフト「Bloggieソフトウエア」が本体に内蔵されている意味は大きい。USBでPCにドッキングすると、ソフトが自動的に立ち上がる。これは、ネットカフェや友人宅でちょっとPCを借りるなど、どこでも使えるということ。ブロギータッチ本体であらかじめアップロード(シェア)したいファイルを決定しておけば、PCに接続してすぐにアップロードできる素早さがいい。もちろん、ソフトを自分のPCにインストールして使うこともでき、その場合はブロギーを接続しないでもソフトを立ち上げることができる。撮影画像の整理をするなら、インストールして使いたい。

ブロギータッチで撮影し、再生画面からアップロードする動画や静止画をチョイスする。家に帰って充電がてらUSB接続すると、自動的にソフトウエアが立ち上がってアップロードできる。シンプルでスピーディーなこのフローこそ、ブロギーの本質ではないかと思う。今や、スマートフォンやガラケー、コンパクトデジカメでも、動画や静止画を撮るという同様のことは可能だ。しかし、基本的に"撮りためる"ことばかりになってしまい、ブロギーのようにシェア(アップロード)を前提としたフローはない。ブロギーは単なる撮影ガジェットというだけではなく、ある意味コミュニケーションツールのひとつなのだろう。

ブロギー本体での再生画面。ダブルタップすれば拡大再生もできる

シェアしたいファイルをあらかじめ選択しておくことが可能

シェアする先はFacebookやYouTube、mixiなど。それ以外はPersonal spaceを利用する

横位置での表示。縦でも横でも一覧が崩れないサムネイル

本体に内蔵されている「Bloggieソフトウエア」。PCへのインストールもできる

画像一覧画面。ファイルを選択してドラッグすると、アップロードできる

撮影協力:中山史苑、中山澪苑